129日目:ウジャウジャ……ワシャワシャ。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第二〇日・天気:―


 昨日から海岸洞窟ダンジョン第一階層を探索中です。

 今回は第五階層辺りまで進む予定にしています。

 このパーティならその辺まで潜っても大丈夫だと思うんですよね。

 大蟹でも三匹までなら危なげなく同時に相手をできていますし。


 これまでこのパーティにいなかった壁役。

 そこにミアさんが加わったことで、戦闘時の安定性がぐっと増したんです。

 やはりパーティバランスというのは大事ですね。

 ミアさん……一時的といわずこのまま冒険者にならないでしょうか?


 なんて考えながら本日四度目の戦闘が終了しました。

 これで昨日から倒した大蟹の数は合計で十二匹になります。

 それにしてもミアさん、装備を整えたことで能力が格段に上がりましたね。

 今の戦闘中も単独で大蟹二匹を足止めできていましたし。

 元々、防御力は高かったですけど鎧のお陰でさらに強化されたみたいです。


 というか、あの紅い水着型鎧、見た目はアレでも性能は一級品なんですよ。

 各種保護魔術に身体強化魔術まで付与されていたみたいですし……。

 格好さえ気にしなければ、その防御性能は重鎧を軽く超えます。

 ……ほとんど水着なのに……魔術ってこれだから理不尽です!

 まぁ、でも値段以上の価値が合って良かったです、本当。


 その後、数度の戦闘を終え、ようやく第二階層の入口に辿り着きました。

 環境的に過ごしやすいダンジョンなので体力的にはまだまだ大丈夫。

 ただ今更ですが予想以上に各階層が広大なのが不安要素ですね。

 地図上だともう少し狭く感じたんですけど……。

 このまま予定通り第五階層まで進むか判断の難しいところです。


 立ち止まり悩んでいると、先行くにゃー、と勝手に歩き出すミアさん。

 はぁ……とりあえず行けるところまで進んでみましょう。

 余程のことがない限りたぶん大丈夫です。


 というわけで第二階層へ。

 構造的には第一階層と変わらず、印象は洞窟そのもの。

 気温が少し下がったみたいですけど、暑いよりはいいです。

 体力もそれほど消耗しませんしね。


 暫く歩いていると、カサカサとなにかの足音が……。

 この無数の足音……なぜか物凄く嫌な予感がします。

 思わず息を飲み慎重に進むと、目の前に現れたのは壁に蠢く無数の黒い塊。

 

 ウジャウジャ……カサカサ……。


 それを見た瞬間全身に鳥肌が。ミアさんなんて尻尾の毛が逆立ってます。

 アレは、アレですよ! 港によくいるやたら動きの素早い虫!

 その超巨大版です! ……えっと皆、静かに引き返しましょう。

 気付かれたらダメです。気持ち悪いのもありますけど数が絶望的です。


 ゆっくり慌てず、焦らないように……。

 しかし、カンッと洞窟内に響く金属音。

 誰ですか!? 音を立てたの!?

 驚き振り返ったのと、虫たちがワシャワシャと一斉に動きだしたのは同時。


 ――ンッ! 声にならない悲鳴を上げて私たちは一目散に駆け出しました。

 最悪! 最悪なのです! 全員退避~!


 虫の大群に追われながらダンジョン探索はまだまだ続きます。


 今日の収支

 大蟹×12

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨47枚、銅貨91枚

    猫銀銭190枚


 。。゛(ノ><)ゝ ヒィィィ あの手の虫は嫌いです~!

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