111日目:お薬の正体は……。
神聖歴六一〇二年・
さて、朝になったのでニコさんの様子を見に行かないと。
きっと食事とか忘れて本当に徹夜してるはずですからね……心配です。
という訳で、宿でお弁当を作ってもらい錬金術師ギルドへ。
昨日借りた部屋に向かい、一応ドアをノック。しかし反応がありません。
これは想定内。ニコさんはなにか始めると周りが見えませんから。
なので、そっとドアを開けてみると――!
うっ、なんですこの臭い……酷い腐敗臭です!
ノアさんなんか鼻と口を手で押さえて涙目になってます。
中の様子を確認したいのに……これは無理です。
そうだ! ドアと廊下の窓を開け放って臭いを散らしましょう!
窓を開けてしばらく待つと、ようやく臭いが薄れてきました。
うん、これなら部屋に入れそうです。
おそるおそる中へ足を踏み入れると……ニコさんが倒れてる!
さっきの臭気にやられたんですか!? 大丈夫!? 生きてます!?
慌てて駆け寄り抱き起こすと、静かに息をするニコさん。
あ、あれ? 寝てるだけ? な、なんだ驚かせないでください。
けど、あの状況の中よく寝ていられますね……凄いです。
少し待っていると、大きな欠伸をしながら目を覚ます、ニコさん。
彼女は私たちの姿を見つけると、目をパチパチさせて首を傾げます。
まだ寝ぼけてますね? おはようございます、もう朝ですよ?
挨拶をすると、ニコさんは焦点の合わない目でぼーっとしたまま頷き返します。
そうして眼鏡もかけずに立ち上がるとふらふら歩き、手に取るのは実験台の上の小さな小瓶。
中に入っているのは黄緑色の液体……って待ちなさい! それ見覚えがあります!
しかし、止める間もなく一気に中身を飲み干すニコさん。
の、飲んじゃいました……アレってたしか不眠不休で働けるとかいうお薬ですよ。
以前聞いたお薬の効果を思い出しているとニコさんが私たちに向き直ります。
その顔から眠気は消え失せ、シャキッとした表情で挨拶をしてくるニコさん。
そして、普段より明るい感じで調合し終わったお薬の説明をしてくれます。
うん、やっぱりあのお薬はダメな気がしますね……早く没収しないと。
あ、ニコさんが作っていたお薬の正体は消臭剤でした。
使えば、例のダンジョンで遭遇したオークの鼻も誤魔化せるとか。
消臭剤を作ってたのに、あの凄まじい臭気ですか……謎ですね錬金術。
でも、これは需要がありそうです!
ダンジョン内でのオーク対策としては必需品ですからね。
さて、あとはどうやって売るかですか。
悩んでいると、錬金術師ギルドが買い取ってくれるというニコさん。
なんでも作り手が少なくて数が不足気味なんだとか。
だから普通よりかなり価格は高いらしいです。
あの臭いですからね、皆さん敬遠するんでしょう。
よし、それならギルドへ売りましょう。
断って印象が悪くなるよりいいですし。
ニコさん、本当にお疲れ様でした!
今日の収支
銅貨:-2枚(ニコさんお弁当)
銀貨: -2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)
+40枚(消臭剤売却×20本)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨61枚、銅貨49枚
猫銀銭190枚
ヽ(*^^*)ノ ニコさん、いい仕事してますねぇ。
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