109日目:海を舐めたらダメなんです。

 神聖歴六一〇二年・七夜馬ななようまの月第三一日・天気:晴


 朝、寝ていると何かに髪を引っ張られて目が覚めました。

 痛い……痛いです! 何なんです……ってソシオ!?

 髪! 髪を食べないで! うぅ……髪が涎でベトベトします。

 ……気持ち良く眠ってたのに最悪です。

 とりあえずお風呂に入りましょう……もうソシオはベッドに寝させません!


 そんな感じで朝から一騒動あったので、ギルド船に着いたのはお昼少し前。

 さて、今日のお仕事は……あ、コレとかいいかもです。

 目に付いたのはホグフィッシュの捕獲または討伐依頼。


 ホグフィッシュは上半身が豚、下半身が魚の姿をした魔物です。

 その肉は主に食用にされ、味は最高級の豚肉に匹敵するとか……。

 依頼自体は簡単そうなんですが……。

 問題はコレがかなりの巨体で、重量も普通の豚と同程度かそれ以上ある事です。

 私達だけで水中から引き上げる事が出来るかどうか……。


 少し悩みましたが受注する事に。

 受付の筋肉お兄さんから凄く心配されましたけど……大丈夫ですよ。

 危なくなったら全力で逃げますから!


 という訳で、ギルド船を降りてすぐの港へ。

 ここで船を借りて海に出ます……どんなのを借りましょう?

 迷っていると、お困り事かな? と声を掛けられました。

 振り返ると、葉巻を優雅に吸うギルドマスター・エド船長の姿が!

 うん、折角なので相談してみますか……暇そうですし。


 話を聞いたエド船長が勧めてくれたのは一隻の小型帆船でした。

 二本のマストに張られた縦帆帆装じゅうはんはんそうが特徴的な白い船です。

 えっと、こんな本格的な船はちょっと……私達だけでは動かせませんし。

 もっとボートとか簡単なやつでいいんですけど。


 そう言うとやれやれと溜め息を吐かれ、次の瞬間には怒鳴られてしまいました。

 お前らは海を舐めているのかと。ホグフィッシュ相手だとボートはすぐ沈むと。

 その声に思わず身を竦めると、依頼の受注は無効だと告げられます。

 えぇ!? そうなると違約金が! 罰金は嫌ですよ!

 すると今回だけは特別に見逃してくれるそうです。

 危険性も教えずに受理した受付が悪いと……筋肉お兄さん、ごめんなさい。


 その後、仕方がないのでまた磯でレモラ討伐を行いました。

 ……それにしてもソシオにはよく引っ付きますね、レモラ。

 ケルピーに何かそんな特性があるんでしょうか……まるでレモラほいほいです。


 夕方、ギルド船へ戻ると筋肉お兄さんに物凄く謝られました。

 いえいえ、気にしないで下さい。私達も考えが甘かったんです。

 レモラ討伐の報酬を受け取ると、見覚えのある紙を四枚渡されます。

 ……国民税ですか。あれ? ニコさんDランクなのに何で私並の金額なんです!?

 はい? 錬金術師ギルドの会費? そういう事なら、まぁ。

 あ……ソシオの登録料も毎月いるんですね……世知辛いです。


 はぁ、沢山お金が消えていきます。


  今日の収支

  銀貨:+30枚(レモラ討伐報酬×10)

     -10枚(国民税)

     -15枚(国民税:ノアさん)

     -10枚(国民税:ニコさん)

     - 3枚(ソシオ:継続登録費)

     - 2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

  ――――――――

  残金:金貨1枚、銀貨30枚、銅貨1枚

     猫銀銭190枚


 (ノ_-;)ハア 出費が……出費が。

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