46日目:大切な仲間

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第二九日・天気:雨


 今日は残りの群生地を調査して街へ帰る予定です。


 ……昼前に調べ終えましたがキングナメークはいませんでした。

 モミジャ草への被害も無し……あ! 

 ふと閃きました。

 地図に昨日ヤツらと遭遇した地点を書き込んでみます……なるほど。


 それは森の地下採石場跡を囲むように存在していました。

 採石場は放棄後、落盤等の問題があり人は滅多に立ち寄りません。

 住処にするなら絶好の場所でしょう……要調査ですね。


 大当りでした。地下採石場跡には大量のキングナメークが!

 流石に気持ち悪いですが頑張って駆除です。

 上手く行けばこれで依頼達成かもです。


 甘かった……数が多すぎます。

 キツイ……剣の切れ味も鈍ってきました。

 加えて足元は雨水や泥、ヤツらの体液で酷い事に……絶対転びたくないです。


 そんな事を考えていると突然地面が揺れます。

 危うく転倒しそうになりながら震源へ目を向けると……言葉を失いました。

 地下採石場跡の入口に一際巨大な一匹が! あれ? でも見た目が……。

 大きさは通常の八倍程。色は……赤? 体表には無数の突起物がって……あぁあ!


 クイーンナメーク! だからキングナメークが爆発的に増えたんですね!?

 キングは単体でも増えますが、その繁殖力は微々たるものです。本来こんな短期間で爆発的に増加するはずがないんです。

 でもクイーンがいると話は別です! 条件が整えばその勢いは魔物でも上位に入ります……これは今の内に手を打たないと。


 覚悟を決めて剣を握り直すと、クイーン体表の突起物がいきなり此方に向かて伸びてきます!

 えぇ!? それ触手っぽいアレなんですか!? 嫌ぁぁ!!

 慌てて避けますが数は多いし足場も最悪です。

 生まれる一瞬の隙。巻き付かれる右足。

 気付いた時には体が宙に浮いていました。迫り来る無数の触手……万事休すです。

 

 諦めかけた瞬間、轟音と共にクイーンの巨体が炎に包まれます!

 堪らず私を空中へ投げ出すクイーン……あ、このまま地面に落ちたら流石に――。

 しかし何処からか走り込んできた人影に間一髪で受け止められます。

 見上げるとそれはノアさんでした……え? どうして?


 呆然としていると、ノアさんは私を地面に降ろしナメーク達へ向き直ります。

 その右手には身の丈ほどの杖が握られていました。

 ノアさんを警戒するクイーンとキングナメーク達。

 しかしそれは無駄でした……。

 彼女が杖を振ると、そこから生まれた炎が瞬く間に彼ら焼き尽くし、その姿を炭に変えていきます……こ、これがエルフの攻撃魔術。


 全てが終わった後、ノアさんに頭を下げられました。

 待たせてごめんなさい、と。

 そんな彼女に思わず抱きつきます……いいですよ。

 だってちゃんと助けに来てくれたじゃないですか。それだけで十分です。

 

 そうだ! 私、ノアさんに御馳走したい物があるんです!

 美味しいんですよぉ。きっと気に入ります!!


 ……色々ありましたが、こうして私達二人の初指名依頼は無事幕を閉じました。


今日の収支

特になし

――――――――

残金:銀貨6枚、銅貨51枚


(キングナメーク討伐数40/40 他多数)


(*'-'*)エヘヘ ノアさんはやっぱり大切な仲間なのです。

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