35日目:その方法はアリですか?
神聖歴六一〇二年・
暑いですね……あぁ、北へ旅立ちたい。
たわいない事を考えながら、お仕事探しに向かいます。
一応、ギルドから少し離れた場所で出入り口を確認。
いませんねメイドさん……諦めましたか? いやいや、そんな筈は……。
すると突然肩をポンポンと叩かれます……嫌な予感がします。振り返ったらダメな気がします。
再びポンポン……覚悟を決めましょう。ゆっくり後ろを見ると……マリナさんでした。その場にへなへなと座り込みます……心臓に悪いです。
私の様子におろおろするマリナさん……何か用事ですか?
聞けばマルガさん達が数日後には帰還するという話です。
やった! これでこの街ともさよならです! そしてさらばメイドさん!!
――と、思った時もありましたね……嬉しい報告に油断しました。
まさかクエストボードの前で張り込んでいるなんて!!
私を見つけると微笑んで近づいて来るメイドさん……。
受付のお兄さん笑ってますけど……後で後悔しますよ?
酒場で話し合った末、どうにか領主の屋敷へ挨拶に行く事は免れました。
……私、超頑張った!!
それでお礼の件ですが、何故かこのメイドさんが暫く私に仕えるという事に……。
謝礼を受け取らないなら、せめて労働力でお礼を! という事らしいです。
……え、いらない。
真顔でそう返すと、涙ながら懇願してくるので渋々承諾しました……色々苦労してるんですね、きっと。
そういうわけでメイドさんと採取任務です。
本日の依頼は天然マンドラゴラの確保。
マンドラゴラ、言わずと知れた万能薬の材料です。
しかし、その正体は植物と動物が一体化した魔物指定の危険な生き物です。
髪の毛のような草の下に人の形をした根があり、抜く時にその根が発する叫び声を聞くと命を奪われるそうです。
なので特殊な耳栓で予防するんですけど一組しかないんですよね……どうしよう。
悩んでいると発見しました。カツラのようなものが地面から生えています。
……実物を見ると意外と気持ち悪いですね。
メイドさん用の耳栓がないのでをどうするか考えていると、その間に彼女どんどんマンドラゴラへ近づいて行きます……え?
そして、どこに隠し持っていたのか小剣を取りだすと、それをカツラっぽい草へ垂直に突き立てます……えぇえ!?
一瞬、地面が揺れた感じがすると、草を中心に土の下からジワリと赤い何かが染み出してきました……うわぁ。
暫くしてメイドさんが無造作に草を引き抜くと、その下には憐れにも脳天を串刺しにされたマンドラゴラが……。
採れました~♪ とにこやかな彼女に、私は乾いた笑いしか返せませんでした。
ギルドへ報告に戻ると案の定お兄さんも完璧な笑みを引き攣らせます。
……ですよねぇ。
報酬ですが……なんと傷物扱いで減額されました……悲しいです。
……もう宿へ帰りましょう……疲れた。
え? メイドさんも? 宿賃は? ない!? ……頭痛い。
今日の収支
銅貨:+75枚(任務報酬:減額済み)
-15枚(特殊耳栓一組)
-26枚(宿泊費×2)(寝床〇、食事〇)
――――――――
残金:銀貨3枚、銅貨57枚
(ノ_-;)ハア…このメイドさん、本当面倒です……。
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