26日目:手紙とコミュニティ

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第九日・天気:曇


 視界が狭いです……寒いです……ふらふらします。

 ……私、歩けてますか?

 ……あぁ、でもようやく冒険者ギルドに辿り着きました。


 中に入ると人は多いのに妙に静かです……それに灯りも異常に暗い気がします。

 ……それよりもカールさんを探さないと……再び歩き始めると、ガリガリと剣が床を削ります。

 ……重いし、もう 離していいかな……。


 剣が床にぶつかる振動……音は……。

 ……カールさん、カールさんは何処でしょう? そう言えば私、会ったことないんですよね……。

 とりあえず酒場へ行こうとすると、誰かに抱き留められました。


 ひどく慌てて焦っているようですけど……ごめんなさい。もう殆ど目が見えないんです。

 声も……あぁ、でもなんとなく分かりました。……貴方がカールさんですね?

 私が懐から手紙を取り出すと、彼は確かに受け取ってくれました。

 あぁ、これでようやく任務完了です……マルガさん、エルさん、私やりましたよ……。


 ……そこでふっと意識が途絶えます。


 次に目が覚めた時、私はベッドの上で横になっていました。

 ……頭がぼーっとしています……生きてますか、私?

 何か、先程まで酷く恐ろしくて、辛い夢を見ていたような気がします……。

 気がつけば止めどなく涙が溢れ出ていました。

 すると突然、優しく額を撫でられます。ふぇ? 誰ですか?


 涙を拭いながら顔を向けると、修道服を着た女性がベッドの横に座っています。

 優しげな目元と微笑みが印象的な方です。うん、今まで関わった人が割とアレなのが多かったので、何か物凄く安心できます。お母さんみたいです。

 彼女の名前はマリナさん。カールさんが率いるコミュニティのヒーラーだそうです。


 コミュニティは冒険者同士で作る互助組織です。パーティよりも規模が大きく、行う事も多岐に渡ります。

 簡単に言えば、冒険者だけで運営している小さなギルドという感じでしょうか?

 加入していれば急な任務でもメンバーを集めやすい等色々メリットがあります。

 ヒーラーは回復専門の魔術師です。それ以上は知りません。


 マリナさんの話では、私から手紙を受け取ると直ぐに、マルガさん達へ応援を送ったそうです。

 あぁ、良かったです。しっかり任務を果たせたようで。

 

 安心して胸を撫で下ろしていると、マリナさんが深々と頭を下げるので、慌ててしまいます。

 なんでもコミュニティメンバーが大変な無茶をさせた事への謝罪だそうです。

 聞けばマリナさん、コミュニティの副長なのだとか……大変ですね上に立つ人って……。というかマルガさん、コミュニティに入ってたんですね……。


 とりあえず謝罪を受け入れ、けれど今日はもう帰ってもらいます。

 一人きりでゆっくり休みたいのです。あ、因みにこの部屋、ギルドの医務室だそうです。

 怪我の殆どはマリナさんの回復魔術で治ったようですが、体力ばかりは魔術ではどうにも出来ません。

 凄く眠いです……頑張り過ぎたので私は寝ます……おやすみなさい……。


今日の収支

未換金素材:(屑マナ結晶:個数不明)

――――――――

残金:銅貨49枚


 *o_ _)oバタッ 寝ます……暫く起こさないで下さい。

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