落第候補生の英雄伝説

坂田 透斗

候補生の日常

ハーレムとはなんて事をぼんやりと考えていた俺だが、そんなわかりきったことをと言うぐらいには答えは昔から出ている。

ではハーレムとは?

お答えしよう。ハーレムとは回りに女の子がいっぱいいることである!

ふふん。決まった!


そう何を隠そう俺は『ハーレム』というものが大が10個つくぐらいのハーレム好きだ。

あ、その前に超が10個くらいか。

だけどその上を行く奴もいるんだぜ?

とにかく俺が超超超超以下略のハーレム大好き野郎ってのはわかってもらえただろうか。

オーケイオーケイ。女1人じゃ足りねえ!みたいなことを言い出すような明らかに危ない人間でないことを理解してもらえて何よりだ。

そんな俺だが現在絶賛驚愕中だ。いやホント驚きしかない。

なぜだって?剣に魔法だぞ?それに結構きわどい服装の女ばかりだ。あ、やっべ斧持った全体的にかなり太め大きめのもいる。モンスター・・・じゃないよな?そう願いたい。

そして同じようなのが相対するように反対側にもいる。人数は両方合わせて二十人くらい。

二つとも後方に結構太った男がいる。あ、杖持った女の子怒られた。かわいそう。ふむ、ではあの男たちは指揮官みたいなものか。

すごい臨場感。(笑)でもつきそう。

全員が言われた通りの位置についたんだろう。二人の肥満男は腕を双方に向けて怒鳴った。その瞬間に斧を持った女戦士は互いに自分の得物をぶつけた。一拍遅れて女剣士は走り、魔女や魔法少女は呪文を唱え炎やら氷のつぶてやらを放つ。

ははは、笑いしかでてこない。人間本当にわからないことがあるとまず出てくるのは乾いた笑いらしい。

まとめるとこうだ。

指揮官の男が両チーム一人ずつで女達を合わせると一つのチームに約十名。

そんな二つのチームが戦闘を繰り広げており剣戟やら詠唱中の呪文やらが飛び交い肥えた指揮官は罵詈雑言を浴びせている。決して相手の男にではなく戦う女達にだ。それに女達は極力自分の攻撃を当てないようにしている。それがまたしゃくにさわるのか相対する指揮官はやはり女達を怒鳴っている。

「これは、ダメだろ・・・」

自然と口から言葉が出る。それは仕方ない。多分というか絶対に現実だ。じゃなきゃあんなに痛がるわけがない。そんな光景をみて心配の言葉をかけずにニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている指揮官二人にも腹が立つ。

「ははっ。本当にこんなことがあるのかよ」

こんなものを見なくてはいけなくなったのはとある神様のせいだ。

ここで現実逃避も兼ねた回想をば。


俺は自分で言うのもなんだが普通の高校生だ。ちょっと思考回路がハーレムよりのエッチくなってるだけの、勉強は可もなく不可もなくってところでスポーツは嫌いじゃない。部活も剣道部に入ってる。真面目に取り組むやつもいれば、俺みたいにモテると思って入ったけどそんな事はなく、でも辞めずに所属していて厨二病よろしく自己流剣術とか言って変な型で練習する人間がいるくらいには緩い部活動だった。それでも楽しかったと言えるぐらいには気に入っていた。面白いやつもいるしな。逆に口うるさいやつも居たけど。そしてそんな日常が嫌いではなかった。と言えば主人公らしいか。


俺は群場ムレバ 央輝オウキ

あだ名はオーキって呼ばれてる。青春真っ盛りの高校二年生だ。のはずなのだが

「オーキ氏。ついに、ついに念願の

『にゅう・発掘物語!』を入手したぞ!

そこで早速観てみたのだが噂に違わぬいい物だったぞ!ぜひ拝んでみるといい」

ここ透谷すきや高校。俺の所属するクラスの俺の座る机の前で友人の野田ノダスグルはでかでかと、共学の学校では見せることのできないエッチなDVDパッケージを俺に突きつけてくる。しかも昼休みときた。そんな俺たちをみて「ちょっとやだ。またやってる」「不潔」「やめて欲しい」こんな非難の声がヒソヒソと囁かれる。

「おい、野田!流石に隠せって!」

俺はそう言うものの野田はメガネをくいっと押し上げ無駄にシリアスな間を開けてからこう言い放つ。

「・・・ハンッ、無駄肉の言葉など捨て置け。この世はちっパイこそ正義ぃぃぃ!!」

と声を張り上げ、ヒソヒソしていた女子がビクリと肩をびくつかせる。

そう何を隠そうコイツは貧乳好きで膨らみのある胸をもつ女子を無駄肉とバッサリ一刀両断するやつだ。

だがそんな野田にも弱点はある。あ、きた。

トテトテとこちらに近づいてくるのは「形部っちぃ」「だ、ダメ!ことちゃん!」「ま、またことみが生け贄に・・・!」

他の女子から苦悩の声があがり、それでもなおこちらに向かう形部カタベ 琴実コトミ

「あ、うあ、あ」

近づいてくる形部に野田は狼狽の声をあげオロオロと両手を動かして意味のない行動をとり、形部はというと。

「スグ君、また騒いでるでしょ。ダメだよ?」

野田と形部は幼馴染みだ。

「コトミ。別に騒いでるわけじゃ」

そう言って顔を赤くする。貧乳だからいい、というわけでもなさそうだ。そんな形部は合法ロリと囁かれるぐらいに身長、体重、おっぱ、おっと。とにかく高校生には見えないぐらいの小ささ。しかし明るく愛らしい容姿をしているのでマスコット化としている。

二人を眺めていると野田はわざとらしくコホンと咳払いをしてみせ言い訳を引っ張り出す。

「コトミ。これは紳士の集いだ。であるからして・・・」「変態紳士の、だろ」ボソッとツッコミを入れる俺。

「オーキ!裏切り者め!」

涙を流し抗議する野田だが俺はそっぽを向いて知らぬ存ぜぬ。

「また二人ともエッチなお話?」

首を傾げてかわいい仕種をとるが野田はただ慌てるばかり。そんな姿を見て呆れたのか

清麗キヨリちゃーん!またスグ君とオーキ君がエッチな話してたんだってー!」

あ、おい!ダメだろ形部!心の中で抗議するがキヨリは俺の心中など察することなど出来ず、すたすたとこちらへやってくる。

「二人ともまた?」

形部の隣に陣取ったキヨリはアンタ達何やってんの?と聞いてくる。

「「うん。また」」

エロ二人組は感情を込めず声を揃えてただ事実のみ述べる。

「えっちな話もいいけど。野田君、ちゃんとコトミと遊園地に行ってね。私が行くはずだったけど部活で行けなくなったから」

キヨリは俺と同じ剣道部でかなりの強さを誇る。昔から剣道少女で、小さい頃は俺も真面目にやってたな。勝てなくて何回も竹刀を振って翌日リベンジするも筋肉痛で呆気なくやられていた。

「有象無象に指一本触れさせたら駄目よ?」

「わ、わかった。まかされた」

キヨリの妙な迫力に押され情けない返事を返す野田。そして満足顔の形部。その二人をみて納得したのか、矛先は俺に向かった。

「今日はどうするの?」

部活に行くのかと言われ、俺は黙る。

うーん。どうしようか。振るだけ振るか。

「素振りぐらいはやっておくよ」

「わかった。そのあと打ち合いましょう」

あ、あれ?素振りだけのはずがキヨリは打ち込みもメニューに入れてしまった。

「・・・まじ?」

「まじ」

ダメかー。少しだけ食い下がってみるも、表情一つ変えずに返される。

「わかったわかった。行くよ」

「うん」

それだけ言うとキヨリは鼻歌を口ずさみながら自分の席に戻っていった。

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