第10話 かみさまの告白
「ほぅー」
「主、何をお考えか」
「んぬぅ」
「…………」
ボンはほとほと困り果てていた。
この社の主である宇雅に、いつも通り仕事をさせていたところであったが、時折こうして遠くを眺めながら、言葉にならない声を発している。
「一体どうしたというのですか、何か変わったことでも?」
ボンの言葉が聞こえているのかいないのか、宇雅はただ「んぬぅ…」と呟くだけだった。
埒が明かない、とボンは人の娘に姿を変えると宇雅の前に座った。
いつもの彼なら、その姿を見るなりニヤニヤ顔で近づいてくるのだが、今日は違うようだ。
「……ボン、その姿ではもう僕は興奮しないよ」
未だ遠くを見つめながら宇雅は切なげに言う。
「主、ではこのような姿では?」
ボンはミニスカ、ニーハイの今時風の娘に姿を変えると、宇雅の目つきが変わった。
「ちがう! スカートは膝丈! 靴下じゃなく生足! だがボブはいい! 非常にいい!」
途端にはきはきとしだした主の姿に半ば呆れつつ、ボンならぬボブっ娘は隣に腰かけた。
「ボン、しばらくその姿でいてくれ。そのまま…」
どうしてそこまでボブにこだわるのかわからなかったが、仕事をしてくれるならとそのままの姿でいることにしたボンであった。
「気になる娘ができた。ボン」
ポツリ呟いたその声にボンは驚きのあまり姿を保てずに、もとの白狐に戻った。
「主、今何と?」
どうか聞き間違いであるようにと祈ったボンの願いは、はかなくも散った。
「僕は、人の娘に恋をした」
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