HappyBullet(ハッピーバレット)
最堂四期
Ⅰ死体集め
ⅰ グレゴリールームにふたり
no.01 アリシア『安息の地』
安息の地は近い。アリシアはもつれる足に鞭を打ち、醜く走りつづける。息は絶えだえ、肺は破れてしまいそう。とにかく痛い、足も胸も腕も喉もなにもかも!
荷物はすべて落としてしまった。靴さえ脱ぎすてた。あれはお気に入りだったのに。
でも今はとにかく走らなければ、逃げなければ。後ろから"黒髪の女"が追ってくる!
嗚呼、家に帰れば、家に帰ればお母さんがアリシアを守ってくれるはずだ。くだらぬことでケンカして、家出同然で飛び出して数週間。こんな醜い再会になるとは思いもしなかった。
嗚呼、お母さん、ごめんなさい! 私が間違っていたから、どうか助けて、この"襲撃"から!
的確に距離を詰める影はアリシアを執拗に追う黒髪の女。
彼女の手には血が染み込んだブロック片。女の息は乱れない。走りも安定している。アリシアとは大違い!
とうとうアリシアは四足歩行と化す。ふたりの間の距離が縮まっていく。安息の地は、ほど近い。アリシアは、ようやく家にたどりつき!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
アリシアの頭部はひしゃげたが損傷はしていない。黒髪の女は重い肉塊を引きずり歩く。血肉の臭いを嗅ぎとった野犬が彼女に向かって吠えた。黒髪の女は舌打ちだけ返すと血まみれの手でグレゴリールームに繋がる扉を開く。白い床に赤いラインが染み付いた。
今回はちゃんと7発、手元に残るだろう。
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