第282話

「あいつの名前募集!」


「レウス!」


「メタボ!」


「ヱクセリオン!」


「ルミナス!」


「ルミナスが一番かわいい!」


予想以上にデカかった、尻尾を含めた全長は50mを大きく超えている。胴体に比べて首が細いので明らかにメタボ体型なのだが、曲線が綺麗なので最終的には違和感が無い。群青色の装甲はゴツゴツしておらず、ただしこたま撃ち込まれた徹甲弾や焼夷弾によって焦げていたりめり込んでいたりする。そして装甲に紛れて全身に点在する目玉のようなものがレーザー発射口だ、発射2秒前に光り始めるのが確認されている。弾体速度は目測マッハ5程度、一応並べておくと正真正銘のレーザーはだいたいマッハ880000くらいだ。移動速度は遅い、ここまで間近で見てものろったさを感じるくらい、頑張って走れば徒歩でも引き離せる。

目線を変えて味方の数を数えてみよう、真っ先に攻撃を開始したのは地上にいるロシア軍自走対空砲だったが、彼にコレを撃墜する能力があったらとうの昔にコレは墜ちている。なので追加戦力、F-2Aなるものが急行しているとのこと。

そして見た目こそ派手ながらまったく効いていないのがニニギの遠隔操作による皇天大樹備砲一斉砲撃である、20mmから150mmまでのあらゆる砲が無人で旋回、装填され次々撃ち上がる様はちょっと感動したが、今のところ花火と大して変わらない。


「すぐ下にあるクソデカいのはどうなんだ無責任男!」


「無責任男は初めて言われたぞぉ!?」


適度に散開しつつ枝先へ急ぐ一行の頭上を大型ドラゴンがすれ違っていく。真上に達したあたりで発光を始め、映画みたいな効果音と共に発射されたレーザーの雨が降り注ぐが、着弾前に1本残らず進路を歪められ近くの家屋を燃やすに留まった。レーザーを曲げているというよりは空間を曲げているという感じで、勾玉の出力を得たニニギによるものである、もっと早く与えておけばよかった。

下にあるクソデカいの、とは現在主幹に埋め込まれたレールの上を移動する試製四十一糎榴弾砲の事で、あれを対空用途に使おうとしているなどと設計者が聞いたら笑いすぎて窒息死するくらい対空能力が欠如しているが、奴の装甲をぶち抜ける可能性がかなり高いため準備を進めているのである。最大仰角75度は十分な数字だが、そこまで持ち上げるのに数分、再装填にも同じくらいかかるので、実質的に撃てるのはたったのいっぱ


「あ゛っ」


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


つだけ、と言いたかったが、41cm砲弾が薬室へ投入される前に無数のレーザーが砲身を穴だらけにしてしまった。瞬く間に爆薬炸薬へ引火し爆発、振動と衝撃波により全員が少なからず足を止める。


「もういい防御に徹してろ玉無し野郎!!」


「玉無し野郎!!!!??!?」


榴弾砲を破壊し終えた仮称ルミナス(スズ案)は翼を一打ちし離脱、といってもレーザーは連射し続けているのであまり関係は無い。「レーザー発射口を10個は潰してる!」「たった10個だるぉぉ!?」などとニニギとシオンの叫び合いを聞きつつ、なおも断続的に撃ち上がる砲弾群を眺めつつとにかく走る、目的地まで残り1km。


「どうにかできないのカノン!?」


「いくつか…プランはあるけど剣(アレ)をさっさと取り返してぇ…!一撃かました方が圧倒的に早い!」


つまり黙って走れという事か。


「ああまずい…発射間隔が狭まり出した!鏡も欲しい!」


いきなり喧嘩を切り上げたニニギが言う、八咫鏡を取り出してフリスビーよろしくスローする。受け取ったかどうかというタイミングで防御を突破したレーザーが突き刺さり、一行のうちメルがライフルぶん投げ→ベッドダイブ→連続倒立前転→ライフルキャッチという何の意味も無いけど超すげえ回避を見せた。最初見た時は12秒間隔だったそれは再接触の時点で8秒、走っている間に5秒となって、そして今3秒となった。防御を受け持つニニギの保有出力が倍になった事で一時は安全となったが、すぐにルミナスのレーザー発射が1秒の暇も無い感じになるやまったく安全ではなくなってしまう。


「こっち!」


仕方なし、走るのを中断して枝端の砲台へ走る。上を向いている大砲もあるが、高度5000mにある都合上、大半は枝の下側に設置されている。「落ちる!!落ちるてやだぁぁああぁぁぁぁ!!」なんてスズみたいな拒否を見せるヒナを引っ張って鉄製の階段を駆け降りれば空中通路、枝の下側へ潜り込めた。


「よーし各員プランBを提出してください!まずカノン!」


「あの…そんな非効率な…よりさぁ…!それ私に…ひぃ…!」


「オマエはもっと根性付けろ!!」


奴が降下してくる間だけだが落ち着いて話せるようになったので、少なくとも数プラン持ってるらしいカノンにシオンは聞くも、さっそく息絶え絶えになってしまっているので昭和の教師みたいな事言い出した。カノンは口が回らないながらもよろよろとニニギへ接近、彼の持つ、というか左右に浮いている鏡と勾玉を取り上げ、収納、次いで大剣を両手で握り。


「ちょっと来たわよ急いで!」


メルにしがみついてるヒナが言った直後、それを無造作に一閃すればルミナスはビクリと震えて。

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