第248話

『続いて欧州在住の匿名希望さんからのおたよりだぁ!なんとご丁寧に動画まで付けてくれたぞ!』


1隻ずつ確実に、安全な遠距離から仕留めていく事にした。幸いにも、一般に失敗作扱いされる扶桑山城でも相対している連中とならほとんどの性能で勝利している。


『その動画は私の前に置かれたモニターで今まさに再生されている、ちょっと詳細な説明は避けさせて頂くがどこかの樹の枝に砲弾をぶち込んだ直後のようだ。いやその程度がどうしたって話ではあるよね私もやらせた事ある、ただ通常と違うのは死体が2種類あるってとこかな』


盛った下剤の効果がまだ残っているらしい、明らかにギクシャクした動きで逃げ惑う敵艦隊に付かず離れずまとわりつく戦艦5隻、無線交信で連携しつつ5隻一斉に1隻の敵艦を狙う。


『かたや素人が中古の銃握っただけのテロリスト、かたや最新式の武器で完全武装した正規兵。撃ち合いの末に共倒れって雰囲気じゃあない、海上からの砲撃で敵味方問わず諸共吹っ飛ばされたように見える。同封されてる手紙によるとこの時展開していた艦隊は西洋軍最大勢力、王立海軍(ロイヤルネイビー)と呼ばれる勢力らしい。実行したのはHMSレパルス、指示したのはアーノルド・スカーフェル。またコイツだ!』


ここまで戦艦6隻、撃沈ないし戦闘不能に追い込んだ。もうすぐ7隻になるだろう、長門が発砲すると単縦陣を組む他4戦艦も続いた。


『この政治家が思い付きで起こしたような反乱は確かに1時間足らずで鎮圧された、スカーフェル大将は勲章を授与されている。わかったかなみんな、この男はどうも自分の大雑把な仕事を隠すのが得意のようだ』


41cm砲8門、35.6cm砲実に48門、計56発の砲弾が1隻の戦艦に殺到する。自分が撃った弾の弾着観測が極めて困難になる一斉攻撃ではあったがそこは対策済み、立ち上がる水柱には色がついていた。


『さあ次に行こう!今度はステイツ産の報告文書が秘書ちゃんから私に手渡されたぞ!えー……これも反乱分子の鎮圧作戦、相手は某赤軍士官で、みんなで頑張って平等に生きて行こう思想、いわゆる共産主義者のパーティーに突入した王立海軍海兵隊は会場にいた従業員含む約500名の人間全員を殺が全員!!?やぁぁっっっべぇぇぇぇなこの男!私もそこまではしたことないわ!いや証拠隠滅の観点から言えば皆殺しは基本中の基本だけどね!』


青、黄、赤の染料、それと無色で色分けされた水柱だ。日向、扶桑、山城の3隻は自分の色だけを追えば良く、無色を使う伊勢だけは長門とかぶっているが、そこは上空に居座る飛行船が口径差を元に細かく分析し発光信号で遠近を伝えてくれる。

ちなみにその飛行船、さっきまで新聞っぽくあつらえた紙束をしこたま投下していた、今頃みんな読み切った頃だろう。


『おっと…?ここで速報が入ってきたようだ。なになに?毒ガス?そうか毒ガスか!おーい聞いてるかい現場でドンパチやってるみんなー!?君らの大将は何の躊躇いもなく毒ガス弾を使ったらしいぞ!報告は末端までなされたのか!?そもそも毒ガス弾の搭載を知らされていたのはどれほど居るんだぁーい!?聞こえてるだろ大将ォ!』


それぞれ自弾の修正を行った2斉射目、ごく短い間に5発が命中した敵戦艦は大爆発を起こした。船体中央でぽっきり折れたそれは急速に海中へ消えていく。


『といったところで小休止の時間だ、私はちょっとtea timeしてくるよ緑茶と羊羹で。その間に曲を流そう!まずは鳳天大樹在住のHNひよひよさんから……』


『亜月、間も無く時間切れです、後退し体勢を整えてください』


「なんでDJ調で喋ってるの秋菜(あいつ)は!?」


『さあ?憧れがあったのでは?』


7隻沈めて、残存するのは戦艦21と巡洋戦艦6となった。分母が大きいせいで減ってるんだかどうかわからないが十分すぎる戦果である。アリシアからの報告と同時に飛行船、及びちらほら飛んでいた雷撃機は一斉に同じ方向を向き、次いで3水戦より撤退支援のため水雷戦を仕掛けるとの通信が入る。


『正面からぶつかる事になります、今の間に行えるすべてを実施してください。乗組員に糧食を配り、各種機器の調整を』


「それは避けたいけど……」


『ご安心ください、万全の状態でなど戦わせません』


5隻が一斉回頭する、皇天大樹へ艦首を向ける。

まだ27隻いる、対してこちらの頭数は17であるが、真っ向勝負を挑めるのは6隻でしかない。搦め手に搦め手を重ねた戦い方をしたいのだが、あまり後ろに下がりたくないのも事実。

と、亜月は考えていたものの、アリシアからの返答は非常に頼もしいもので。


『焼き払って差し上げます』

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