第249話
一連の妨害を受け、一時的に戦闘継続が困難になるまで指揮系統が混乱したが、6発の拳銃弾を使ってようやくアイアンデューク艦内は落ち着きを取り戻した。誰のリクエストか何の皮肉か究極自己中と誉れ高いワーグナー"ワルキューレの騎行"がオープンチャンネルで垂れ流される中、アーノルドは乱れきった陣形を急速に整えていく。
三笠を追撃していたアイアンデューク以下4隻は結局1発も当てられず、逆に2発の命中弾を受けた上、単艦性能で勝利し得ない金剛型巡洋戦艦が割り込んできた為、それを機に後退、戦闘可能状態に戻りつつある艦隊と合流した。肉体的に回復した代わり、精神的にダメージを負っていたが、やる事は別段変わらない。
敵を倒す、可能な限り短時間で倒す、それを邪魔するものはすべて敵である。この海には平和と正義が必要だ、その到来を遅れさせる事は決して許されない。
「艦隊を二手に分ける、本隊はこのまま前進、別働隊は兵員船を先導しつつ敵艦隊を迂回し大樹を強襲せよ」
通信士へ振り返った途端、足元でぱしゃりと血が跳ねる。引きずられて艦橋から退出していく死体を見ていた彼は慌てて「りょ、了解」と言い通信機へと取り付いた。
まず自軍戦力を確認する。巡洋艦以下を抜きにして、残存する戦艦は21、それとは別に巡洋戦艦が6ある。戦艦長門…は別として、1ランク下の伊勢扶桑と比較すると主砲口径、防御力、速力で上回る、のが21隻の戦艦群のうちクイーンエリザベス級の4隻、アイアンデュークを含む他戦艦は勝てる要素無し。巡洋戦艦はいずれも速力で勝利しているが、それは装甲を紙同然にした結果得られたものであり、あの僅かな時間で7隻沈める奴らと正面切って戦わせたらどうなるかは目に見えている。
次に敵軍戦力を見てみよう、戦艦14、巡洋戦艦3である。大した事はない、一部が突出しているだけで半数以上が準弩級程度、主砲口径は三笠と同じ30.5cm均一だ、三笠のみに関しては妙に凝った砲に換装されているようだが。その上、事前に彼女らから聞いた情報をあくまで信じるならば金剛型の金剛と榛名は手負いであり、前に出てくる事は無いだろう。とは言っても7隻沈められて、まだ見れる戦力差まで持っていかれたのも事実。
これより先に絶対は無い、使えるもの、持てるものすべてを用いて叩き潰さねばならない。そうして病巣を根絶やしにして歯向かう者がいなくなった時、この海には平穏が訪れる筈。
「水雷戦隊前へ、これより決戦を行う、総員奮起せよ」
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