第18話 生と死を入れ替える悪魔 その4



ディアン「ああおしい、もう一歩のところで邪魔が入ってしまいました。おそらくあの様子だと私たちのことがバレてしまったとみて間違いない。」

シスターさん「・・・・・・・」

ディアン「・・・しかし、あなたは、あの白い剣の所有者の信頼を得ている。あなたが、直接『その白い剣を渡してほしい』こう言えばきっと彼は従うでしょう。」

シスターさん「・・・・・」

ディアン「白い剣を奪いましょう!そうすればこの村を脅かす脅威はなくなります。」

シスターさん「・・・・駄目・・・」

ディアン「はぁ」

シスターさん「・・・・わたしは彼に会うことができない、彼と向き合うことができない。」

シスターはその場に座り込んだ。




シスターは恐怖した。自分が多くの人の命と引き換えに村の人々を生き返らせている罪にその罪をキロに責められることに・・

ディアン「どうして人間は・・・いえ、あなたは私の能力で生き返ったものに対して罪悪感を抱くのか。私には理解できません。あなたは村の人々が生き返ることを祈ってそれが叶って幸せではないのですか。それがどんな犠牲を払っていても小さなことではないのですか。」

シスターは黙り込んで答えなかった。





・・・・




わたしは村祭りの準備で地下の倉庫の整理をしていた。

たまたま転がっていたものをふんで頭を打って気絶していた。

村ではグラナ火山が噴火して全員・・・


私が気が付いた時には、もう村は変わり果てた姿だった。

わたしは必死でみんなを探した。

焼け跡を掘り返して手が火傷してもずっと掘り返した。

何人もの亡骸を集め終わったとき空から声がした。




ディアン「お困りですか?お客様」




・・・・




ディアン「わかりました。面倒事は私が片づけてきましょう。少々ここでお待ちください。お客様につらい選択を迫ってしまった私をお許しください。」

シスターは何も答えなかった。

それはキロを追放するか、殺してもかまわないと暗に言っていることになるとわかっていた。しかし、村のひとがまたいなくなってしまうことが彼女にとって絶対に起こってはいけないことだった。




ディアン「ごきげんよう」

生と死を入れ替える悪魔がキロの前に現れた。




キロ「・・・・」



ディアン「はっきり言いましょう。シスター様は私のお客様です。彼女から伝言を預かってきました。えーおほん『その白い剣をこちらに渡してほしい』と」



キロ「・・・お前の言うことなんか信じない。」



ディアン「ああ、困ります。お客様は今大変に取り乱されておりまして、今、会われると困るのです。」

キロはかまわず歩き出そうとした。





ディアン「ここを通すことはできません。」

キロは白い剣をディアンに突き付けた。



ディアン「私を斬りますか?もし私が魔力を失えばどうなるかお教えしましょう・・・」



「今この村の住人は周辺の村から集めてきた命で生き返らせています。私が魔力を失えば周辺の村の住人は生き返ります。しかし、この火山の村の住人は元の灰に戻ってしまうでしょう。どうです?それでも私に牙をむきますか?」



白い剣を渡してしまう・・・

そうすればこの村の住人は死なない。俺はこの村にずっと滞在して良くしてもらえるかもしれない。自分の利益のために行動するならばその選択が正しいのかもしれない。




キロ「シスターさんはいい人だ。俺の心配だってしてくれた。そんな人が人殺しを容認するわけがない。俺はお前を信じない。」





ディアンは交渉をあきらめこの男を一刻も早く排除してしまうことに決めた。





ディアン「まったくもって不愉快だ。あなたのその空気の読めない馬鹿さ加減でお客様を傷つけるなんて度し難い。もう一度丁寧に言いましょう。『白い剣を置いて尻尾を巻いて逃げるのなら命だけは助けてやるぞ?』」




キロの斬撃を避けディアンは後ろに飛びのいた。

キロは体に強烈な脱力感を覚える。

(コウモリ?)

キロの背中にコウモリがかみついていた。キロは急いで手で引きはがして白い剣で突き刺す。



(魂を抜くことはできるだろうが、白い剣の影響で眷属のコウモリでは時間がかかりすぎる・・・)



ディアンは長い槍を何もないところから取り出した。



「あなたには串刺しがお似合いだ。」



槍と剣で打ち合う。キロは槍を手でつかんで自分の方に引き寄せディアンの腕を切り落とした。

(この小僧・・・なかなかに腕がいい。ならば・・・)



ディアンはうろたえるように斬られた腕をかばいながらゆっくりキロから距離をとる。

「とどめだ。」

キロは一気に距離をつめて腕を振り上げた。


キロの死角から一匹のコウモリが近づく。

(私の本体はこの小さいコウモリ・・・本体ならば一瞬で奴の魂を抜ききれる・・・)



キロは振り返って、死角からのコウモリを串刺しにした。

コウモリから魔力である黒い煙が一気に漏れ出してキロの白い剣に吸収されていく。

ディアン「・・・・どうして・・・わかった?」



キロ「あんたは嘘まみれの卑怯者だからな・・・もう一度その手を使ってくると思ってたよ。」

ディアン「くくく・・・私もまだまだですね・・・こんな人間に読みあいで負けるなんて・・・」



ディアン「・・・お客様申し訳ありません。私のサービスはここまでのようです・・・お客様の幸せを私は祈っております。」

生と死を入れ替える悪魔の魔力を吸い取りつくした。

残りカスのコウモリが散り散りに逃げていった。



あたりが青く光りだした。青色の炎がいくつも村の家々から輝いている。

村人が燃えていた。

青い炎に焼き尽くされて村人は元の焦げた肉片に戻っていく。

青い炎の塊がそれぞれ元の持ち主に帰っていくようだった。

おばあさんもきっと生き返ったことだろう。




そして、村には誰もいなくなった。ただ一人をのぞいては・・・




教会に戻った時シスターは座り込んでうつむいていた。

キロ(こんなことがしたかったわけじゃない・・村のひとを殺した、俺が全員、・・シスターを苦しめたかったわけじゃない)

キロがシスターに近寄ろうとした瞬間






「来ないで!!!」






シスターの声は泣き疲れてしわがれた声で痛々しかった。

キロはぺこりとお辞儀をして村を後にした。






キロは頭のどこかで悪魔を倒せば、この村の人々がもとに戻ると信じていた。

そして、シスターさんが悪魔に加担していたなんて信じたくなかった。

そんな甘い考えで行動した結果、この村にはシスターさん以外誰もいなくなってしまった。


涙は枯れた、冷や汗が止まらない、何度も嘔吐した。

そして、なんとかこの場所から離れようと必死に足を動かした。




俺は・・・こんなことがしたかったわけじゃない・・・・





道すがら使い魔がひょこりとあらわれた。

使い魔「いやあ、4,5日結界に幽閉されていまして、キロさんが悪魔を倒していただけたので助かりました。」


キロの体調はますます悪くなる一方だった。心臓に黒い塊があり、さらに大きくなった気がした。

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