第6話 騎士道悪魔 その1
医師は大きな屋敷の門をたたく。女性が医師を屋敷の中へ通す。
医師「遅れて申し訳ありません。オリビア夫人」
女性「いいえ、お待ちしておりました。」
医師「何分、多忙でして・・・最近、東の樹海で行方不明になっていた人々が多数発見されました。かなり衰弱している方も多く対応に追われておりまして」
女性「お忙しい中、来てくださりありがとうございます。」
女性「あの・・・主人の容態のことですが・・・できれば内密にしていただきたく・・・」
医師「わかりました。」
女性「これなんですが・・・」
医者が案内された先には、男性の石造が横たわっていた。
医師「ずいぶん、立派な石像ですね、さぞかし名の売れた彫刻家の作品なのでは?」
女性「いえ、それが・・」
その街には自治組織があり、街の有力者30人で執り行われるため30人議会と呼ばれていた。現在、議会は議員多数欠席のため、議会自体が成り立たない状態が続いている。関係者は体調不良と説明している。
町では議員が次々襲われ、石に変えられているなどというおとぎ話のような噂がまことしやかにささやかれている。欠席している議員の住まいには、雄々しき黒い馬と黒い甲冑の騎士がなんども目撃されてたらしい。
キロと使い魔はその街の通りを歩いていた。
キロ「はーなんかさびれた町だな。」
全員が疲れた顔をしているが、
なぜか、はしゃぐ若者の姿がちらほらと
若者「やっぱり、ハンバーグ将軍の英霊のおかげだよ。」
若者「次々と議員失脚させてるんだ。」
若者「因果応報だな、金と権力に溺れた罰だ。」
似たようなことを話していた。
使い魔「あ、キロさん本に反応が・・・」
【騎士道悪魔】
正義と制裁の悪魔
悪だと判断した人を石像に変える
黒い大きな馬と黒色の甲冑を身に纏う姿
キロ「ここで、なんとか職を見つけるんだ・・・」
使い魔「悪魔退治はどうするんですか」
キロ「悪魔退治なんてしても給料出ないじゃん、やる意味ないよ。」
使い魔「全く自分の欲ばかりにまみれて、自分が良ければそれでいいんですか。」
キロ「・・・なんだろう、助けてほしいのはむしろ俺なんだけど」
この世に自分の利益以外で動く人間なんていない・・・
それはキロが育った孤児院の教えだった。
寄付だけに頼ってきた従来の慣習からの脱却を意味するもので崩壊寸前だった孤児院を立て直した現在の院長の第一方針だった。
自分の利益のために行動する・・・それが結果的に全体の幸福につながる。
そして、全体の幸福だけを願って個人を犠牲にするような言葉を発する人間を信用してはならない。それは、人を虐げるための方便であるとキロは教え込まれていた。
使い魔「主人との契約上、キロさんに12匹の悪魔をすべて倒していただかないと自由になれないのです。私の自由のために一刻も早く、悪魔を退治すべきです。」
キロ「お前も自分のためじゃん。」
回想
それは、カルデラ城の北の神殿での出来事
神殿は12匹の悪魔が封印から解放され何もなくなっていた。たまたま物見遊山に来ていた力の弱い下級悪魔がふらふら歩いていた。
突然、銀色の長い髪、美しい容姿の少女がふわりと舞い降りた。目が合った瞬間、本能が「逃げろ」と告げ、一目散に振り返って走り出したが・・・
天使はこそこそ逃げようとする下級悪魔を踏んづけた。
使い魔「ぎゃあ」
天使「ちょっとそこの下級悪魔・・・まあ、いいわ。滅されたくなければ、協力なさい・・・」
使い魔「いやぁ・・これでも私は、忙しいというか、スケジュール詰まっているんですよね・・はは」
天使「12匹すべて退治できたら開放してあげましょう。」
使い魔「そういって、無理やり契約を・・・」
キロ「へーお前も大変なんだな・・・」
キロは顔が青ざめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます