無限遊園地の国のアリス

━━私は絵本を見ているはずでした


開いた途端、大きなテント遊園地が膨らみます。びっくりしている間に私はその中に吸い込まれました。


◇◆◇◆◇◆


そこは無限に広がる遊園地の中でした。露店などもところ狭しと並んでいます。私は木で出来たキャンプ椅子に思わず座り込みます。


見知った顔の男性がやってきました。


帽子屋です。優しく甘い微笑みで話し掛けてきます。


そこへ赤のクイーンが現れます。


帽子屋は「ヤバいな……。」と漏らします。

赤のクイーンは余裕の笑みで、「妾はこやつとは何の関係もない、気にするな」と微笑みます。


……何だか、お腹が好いてきました。


帽子屋が色々露店で買ってきてくれたものを食べ始めました。ふと、彼の顔が近くなります。


そのまま口に回りについたものを器用に舌で絡めとり、キスをされました。私が焦るのも構わず、離してはくれません。


赤のクイーンは優しく見つめるばかり。恥ずかしさのあまり、目を閉じてしまいます。


◇◆◇◆◇◆


━気がつくと、本の前にいました。夢でも見ていたのかと思い、また開きます。


そしてまた、同じ大きなテント遊園地が現れ、膨らみます。また吸い込まれてしまいます。


◇◆◇◆◇◆


たっている場所は同じでした。鼻をくすぐる露店の美味しそうな匂いも同じ。


違うのは……、やってきたのは燕尾服の似合う時計ウサギ。


優しく穏やかな微笑みで話し掛けてきます。


そこへやってきたのは金髪でふわふわした綺麗な女の子。


時計ウサギは「ヤバいなぁ……。」と漏らします。


彼女は恋人などではないから大丈夫よと笑います。


また、お腹が鳴ります。


時計ウサギが露店を周り買ってきてくれました。


それを食べていると彼の顔が近づきます。


優しく丁寧に舌で唇についたものを絡めとり、キスをされました。


女の子がにこにこ見つめているためにまた恥ずかしくなり、目を閉じてしまいます。


◇◆◇◆◇◆


━━また、絵本の前


立ちながらまた夢を見ていたのかと戸惑います。でも、開きたい衝動に勝てずに開いてしまいます。


またも、テント遊園地が現れ、膨らみます。連れられるがまま、吸い込まれました。


◇◆◇◆◇◆


三度目も同じ場所。


今度は誰だろうとため息をついていると優しく顎を持ち上げられます。……三月ウサギが楽しそうに私を見つめていました。もう片方の手には、露店で買った食べ物たち。


またお腹が鳴ります。


そして今回の女性は……黒髪の綺麗な女性が伏し目がちに現れます。


三月ウサギは焦り顔で「やべぇ……。」と呟きます。


またも、私は彼に呼ばれた友人ですからお続けくださいねと微笑まれます。


食欲には勝てず、更にお腹が空いてしまい、食べてしまいます。一心不乱に食べている私のあごをまたも持上げ、慣れているかのように舌で絡めとり…キス をされました。


女性は微笑ましそうに見つめるばかり。


ああ、目を閉じたら、次は誰が私を惑わすのでしょうか。皆、私だけを見ていました。頭が混乱してしまいます。



◇◆◇◆◇◆



━━気がつくとまた絵本の前

開ければまた、甘いキスをされてしまうのでしょうか━━



◇◆◇◆◇◆おしまい

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