戦慄の国のアリス
━ボクは特殊能力を多分に持って産まれた。
腹違いの兄や姉、弟や妹がたくさんいる。父が特殊能力の子どもがほしいと言うだけで、部隊が作れるほどに。
今日も数名の兄と執事、ボディーガードの女性と廃墟で戦っていた。皆、眉目秀麗。自分はわからない。俊敏に廃墟を駆け巡り、敵を殲滅していく。
指揮をするのはボク。兄たちは指示など要らない。
執事が無駄にでかい声を張り上げ、
『お嬢様!大丈夫ですか?!自分、いつでも盾になります!』
うるさいが、嬉しくもあった。
ボディーガードの女性がぼそりという。
『……彼に心配されていいなぁ。譲ってくれないかしら。』
かっこいい彼女の可愛い発言に口を
ボクが男なら、抱き締めたいところだ。
◇◆◇◆◇◆
今回の戦いも終盤に近づいた。……ボクは判断を見誤った。まさか、彼女がターゲットにされるとは。
銃を持った奴らに気を取られ、剣を持った刺客がいることに気がつかなかった。
彼女は斜めに真っ二つにされてしまった。兄二人が何とか出血を押さえ、支えていた。ボクは必死で奴らの司令塔の少年と対峙していた。早く倒さなければ間に合わない。
改造に改造を重ねた金髪の少年。どこが急所なのか、必死で探す。体はいくら叩いてもビクともしない。首は?首はどこ?
そして、一瞬目に入った驚愕のもの。細い管で繋がっている頭と胴体。細ければ当たらないとでも思っているのか、強気だ。
ボクは目に意識を集中させ、その細い管を焼ききる。
彼は絶命した。
と、同時に彼女の元へといく。まだ息はある。必死で治癒能力をフル回転させて塞いでいく。支えていた兄たちはボクを信じて直ぐ様、司令塔を失った敵の殲滅に向かった。
彼女は死を覚悟していた。それも仕方ない。ここは戦場。人が死ぬのは常だった。でもボクの部隊にいる限り、絶対に死なせない。
司令塔失った敵は憐れだった。けれど、同情などはしない。それが、戦いと言うものだから。
◇◆◇◆◇◆
帰るなり全員、体調のチェックが行われる。特殊能力を持ってはいても、人間である。メンタルの弱い兄たちは次々に熱を出し、寝込んでいった。
戦場では兄弟でなければ、惚れてしまうほど華麗に戦う兄たち。しかし、終わればこうだ。
『アリス、お疲れさま。』
美人の姉が出迎えてくれる。ボクは比較的安定していた。そして、そんなボクに駆け寄る弟。
『姉さん!大丈夫?』
彼もまた戦場に出てはいたが、安定していた。
『ランドは安定していて優秀ね。』
姉が微笑む。ボクもつられて微笑む。顔を背けて照れる姿も可愛らしい。
椅子に座り、ボクに目線を合わせて不安そうにする。
『お姉ちゃんが傍にいてあげるから、大丈夫。』
彼の綺麗な黒髪に触れ、微笑むと安心しきった顔になる。綺麗な顔一杯に綻ばせる。可愛くて仕方ない。
全てを掛けてでも兄弟姉妹を守り抜かなければ。 そう思った━━おしまい
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