PostGoth~鳥籠姫の謌
相良あざみ
Prologue
――――――
首無し天使の閉ざす門は音もなく君を迎え入れ、そして
赤い
君は聞く、妖しく美しき声を
無垢な籠に囚われし、羽根を無くした哀れなる
彼女の名は
彼女の前では皆須く口を噤む
真白きシルクの下
嗚呼
鳴けよ鳥籠姫
しめやかに
さあ
高らかに――――――
新月の夜、鳥籠館の地下ホールにはとある紳士淑女達が訪れる。
ドレスコードはホワイトタイにイヴニングドレス、一様に胸元へ飾られるのは銀の薔薇――それが館への招待状だ。
彼らの目的はただひとつ、鳥籠姫の謌を聴くこと。
シルクのリボンで目隠しをされた両腕のない彼女が鳥籠の中、足首を鎖に繋がれて、シェーズ・ロングに身を預け高らかに謌い上げるそれを、聴くことだ。
鳥籠館には幾つかのルールがある。
――鳥籠のぐるりを囲むロープへ近付かないこと。
――鳥籠姫が歌い始めたらば、決して席から離れないこと。
――ホールへ入って再び外へ出るまでは、口を開かないこと。
そして何よりも――鳥籠姫の虜になってしまわないこと。
彼女の声を讃えても、彼女の世界に浸っても、決して彼女の謌の虜になってはいけない。
――もし、虜になってしまったら?
そんなに気になるのなら、ルールを破ったら宜しいでしょう。
但し、何が起きても当方では責任は負いかねますけれど。
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