ここまでを振り返って。
青葉台旭
1.
人生初のウェブ小説をこの「小説家になろう」に公開して、5日。
ここらで、自分なりに「小説家になろう」というサイトに、小説とエッセイを投稿するというのが、どういうことなのか整理してみたいと思う。
●その1、
やっぱりポイントは欲しい。ランキングで上位に行きたい。
投稿した直後は、とにかく自分の書いたオリジナル小説が(実際に誰かが読んでくれるかどうかは別にして)少なくともシステム上は、全世界に発信された、されてしまったという事自体に、ちょっと興奮した。
でも
それは、そうだろう。マラソン大会に出場するアマチュア・ランナーだって、表向き「参加すること自体に意義があります」と言いつつ、少しでも上の順位でゴールするために(できる範囲内で)一年間トレーニングを積むわけだから。
●その2、
ブログとツイッターのアカウントを作る~公式トップページの新着情報の流量が多すぎる!
とりあえず公式マニュアルの「小説の宣伝」通りに、ブログとツイッターのアカウントを取得して、自分の作品を投稿した時には、そこで告知することにした。
ブログにも告知を書きました、ツイッターにも書きました。
さて、俺の自信作「ハーレム禁止の最強剣士! 第1話」どうなっているかな。
ほくほくしながら「小説家になろう」トップページを開く。
無い! 新着リストに、俺の小説のタイトルが見当たらない。
投稿時間を見て驚いた。1分間に3つも4つも新着投稿が流れてくるではないか。
俺の大切な投稿作品が、あっという間に、後ろのページに流されて行った……
今にして思えば、そこで、ちょっと、焦ったんだと思う。
●その3、
ネットで傾向と対策をさぐる。
俺は焦って、次回の原稿を書きつつ、ネットでどうすれば、たくさんの人に見てもらえるのかを探った。
一時は原稿を書く時間を削って「小説家になろう」攻略法を検索ばかりするという本末転倒なことになってしまった。
結果、分かったことは、2つ。
(1)ポイントを貯めてランキング上位に居座ることができれば、読者の目に止まる機会が増えて、みんなに読んでもらえる。
(2)「小説家になろう」読者の好む傾向の作品を書けば、たくさんポイントがもらえて上位に行ける。(かも知れない)
●その4、どうすればポイントが稼げるか
(1)には、じつは同義反復めいたものが含まれている。
つまり、ポイントを稼ぐためには出来るだけ多くの人に自作を読んでもらわなければいけないけれど、多くの人の目に止まるには、ポイントを稼いでランキング上位に食い込まなければいけない。タマゴが先かニワトリが先か。
ここで問題なのは「小説家になろう」に投稿したばかりの、まったく無名の俺が、ランキング下位に居る現状で、どうやってポイントを稼げば良いかということだ。
ここで一首。
異世界行かなくても経験できる
ランキング最下位からの成り上がり
待ってろ、
ただし、チートはありません
地道にコツコツやるだけです
字余り。
まず、試したのは「最低、これだけでもやっておけ」と書かれていた「小説家になろう 勝手にランキング 」と「アルファポリス」のバナー貼り付けだ。
現在は、あと二つばかり、いわゆる「宣伝掲示板」に書き込んでいる。
ツィッターのBOT登録は、どういう訳か上手くいかなかった。
2ちゃんねる掲示板に載せると一気にPVが増えるとも聞いたが、さすがにそれは奥の手にとっておきたい。
それと、なるべく更新頻度を増やすこと。
1万文字の話を1回で投稿するくらいなら、5千文字ずつ前編、後編に分けた方が新着リストに載せる回数が増えるので、読者の目に止まる機会が増える。数撃ちゃ当たるというわけだ。
投稿するタイミングに対してのHOWTOもあった。
夜8時~深夜0時までは閲覧者の数が増えるが、投稿者の数も増えて競争率も高くなるので、自作を読んでもらえる機会が増えるかどうかは意見が分かれていて、どちらとも言えないようだった。これに関しては、今は、俺なりの持論というか仮説がある。後で述べる。
以上、必死こいて検索して、俺なりに情報収集した「小説家になろう」の傾向と対策だ。
●その5、読者が好むストーリー
「小説家になろう」の読者は〈異世界転生〉〈チート〉〈ハーレム〉にしか興味が無いから、そういう話を書かないと上位に行けない……と(大抵は皮肉交じりに)言われている。
確かに、トップページの左にある(殿堂入り?)ランキング十作品のうち、2015年5月29日現在、異世界転生ものでないのは「異世界食堂」だけだ。
ある人は、こうも言う。
「『小説家になろう』に来ている読者は、
ひょっとしたら、そうかも知れない。でも、それは「小説家になろう」に限ったことではないとも思うし、ひとつのジャンルが急速に立ち上がる時には、とくにその傾向が強くなるのだと思う。
20世紀前半のアメリカで隆盛を極めたパルプ・マガジンも、当時の良識ある人たちには「
実際、当時のパルプ・マガジンの表紙の多くは、金髪の美女がモンスターに服をビリビリ破かれてブラジャーとパンティー姿で「きゃーっ」って言っている絵だって言うんだから、アメリカ人は、日本の萌え萌えなラノベの表紙にとやかく言う権利はないと思う。
ただ、そのパルプ・マガジンが、現在まで連綿と続くアメリカ・エンターテイメント小説……良質なSF小説やハードボイルド小説やホラー小説を育てる揺りかごの役割を果たし訳だし、それが、ひいてはハリウッド映画に大量の原作を提供して、いまの隆盛を陰で支えているのもまた本当のところだと思う。
俺は、先に挙げたランキング上位作品をほとんど読んでいないから、確かなことは言えないけど、大量の「異世界転生」ものが日々投稿されている中で、それでも上位に君臨しているということは、これらの作品には、単に「ありがちな設定」というだけでは無い、なにか人々を引きつける素晴らしい魅力あるのではないでしょうか? 皆さん、どうでしょう?
●その6、……で、お前はどうするの?
これが、悩ましい問題だ。
社会人になれば、好きなことばかりやっても居られない、多数派に合わせなければいけないこともあるというのは、いやというほど実感させられる。
いやいや、だからこそ趣味でやってるウェブ小説くらい好きにやれば良いじゃん、ということではあるのだが、そう単純でもない。
ちなみに、書くのも無料、読むのも無料、と言っても、そこにマーケティングが全く必要でないかと言うと、そうでもない。
数年前ラノベ・デビューを果たした経営の神様ドラッカーさんも言っている。
「ボランティアにもマーケティングは必要だ」
実際、世界最大のボランティア団体を率いているのは、かつてマイクロソフトの凄腕営業マンだった男で、数値目標を達成できなかったボランティア団員は、会議の席上で、みんなの前で糞みそに罵倒されるらしい。
怖いですねぇー。ブラックですねぇー。ボランティアなのに。
まあ、それはそれとして、話を元に戻すと、そもそも俺がウェブ小説を投稿しようと思ったのは「物語が書きたい、頭の中にあるモヤモヤした物語の原形みたいなものを文章として外に吐き出したい」という内なる衝動があったからだけど、単にそれだけなら、大学ノートにでもシコシコ書いときゃ良いじゃんって話で、それをわざわざウェブに載せたというのは、やっぱり出来るだけ多くの人に見てもらいたいという名声欲みたいなものも、無意識とはいえ確実にあったんだと、今になって思う。
書きたいという内なる欲求と、多くの人に見てもらいたいという欲望、どちらが欠けても嫌なんです。
いろいろ書いたが結論は、こうだ。
やっぱり俺は自分が書きたいものを書きたいし、少なくとも今は、書きたいのは〈異世界転生〉〈チート〉〈ハーレム〉三点セットじゃない。
ただし、多くの人に自分の書いたものを面白いと言って貰えるように、表現方法は
キレイ事っぽいけど、現在主流の要素を必ずしも取り入れなくても、真面目に良い物を書いていれば、いつかは人々の目に止まる、そう思っているからだ。
●その7、上手い鉄砲を数撃って当てる
今まで、俺は、3つの作品を投稿してきた。
それで分かったのは、とりあえず投稿してトップページの新着リストに載れば、たとえ数分でトップページから流れ去ってしまっても、最低でも一日50PVは頂けるということだった。
数分の間に、偶然、俺の小説のタイトルを目にして、読んでみようかと思ってくれる人が全国に50人は居る。
ここで大事なのは、最初のこの出会いは、ほとんどランダムな偶然の出会いだったと言うことだ。
それで、いいのだ。
ただの気まぐれでも、マウスをクリックする手がすべったでも、何でも良いのだ。突き詰めれば、この世のありとあらゆる出会いは、全部偶然なんだから。
ただし、偶然であればこそ、神ならぬ身で確率をいじれないのなら母集団を増やしておく努力はしておいたほうが良い。
それが「勝手にランキング」や「アルファポリス」のバナー貼りであり、ツイッターやブログへの「最新作、投稿しました」だ。
例えて言えば、出会いを求めて、いろんなパーティーに顔を出すべきなのだ。
ここで、読者は「この小説、もう読むの止めた」という人と「まあまあ面白かったから、次の話が投稿されたら、また読んでみるか」と、とりあず興味を持ってくれる人の二手に分かれる。それも仕方がない。
心意気としては、全世界七十億人に発信しているつもりだが、実際問題、俺の小説がどうしても合わないという人がいてしまうのは、これも確率……運命なんだと思って受け入れるしかない。
ともあれ、そこで、第2話を投稿する。
2話目も面白ければ、読者は「今回も、まあまあ面白かったから、第3話も投稿されたら読んでみるか」と思ってもらえる。
同時に、第2話の投稿は、別の50人との、偶然の出会いを持ってきてくれる。
その中に、また、俺の小説に興味を持ってくれる人と、残念ながら去っていく人がいる。
この連続で、読者の数を増やしていく……突き詰めれば、そういうことだと、今の俺は思っている。
偶然の出会いと、俺の小説を気に入ったから次回も読んでみようかという因果関係。
この繰り返しが読者を増やして行くのではないか?
ここで、注意しなければいけないのは、作者が作用を与えられるのは「面白かったから次も読む」という因果関係の方であって、神ならぬ人間の身で「偶然の出会い」の方に気を取られすぎるのは良くないということだ。
長々と書いたが、要するに「小説家になろう」なんだから、面白い小説を書くことに注力しましょうという話でした。
●その7、3つの投稿、それぞれのPVの動き
今まで投稿したのは以下の3つ。
1、ハーレム禁止の最強剣士!(ファンタジー)
2、ファンタジーものの表現について(エッセイ)
3、異惑星に転送したら、うっかりチート超能力発現してエイリアン娘にモテモテな件w
その日別、時間別のPVの動きを見ていたら、3つの投稿が、全く違った動きをしたので、ここに記しておく。
1、「ハーレム禁止の最強剣士!」は、一番最初が50PVを少し切るぐらいで、それから2話、3話と、会を重ねるごとに、少しずつ着実にPVが増えていった。そして、3日ほど更新していない現在は、訪れる人も次第に減っている。これが通常のPVの増え方だと思う。
2、「ファンタジーものの表現について」は、ブログに書いた3つの記事を「小説家になろう」に転載した関係上「最初から3話で完結した連載エッセイ」という変則的な形で投稿した。
ここで、発見した法則は「完結済みの長編小説」は「連載中の長編小説」や「短編小説」に比べて、一日に流れ込んでくる新規登録の数が少なく、トップページに滞留する時間を稼げるということだった。これは、ちょっとした発見だった。じっさい、このエッセイは、その日完結した長編が少なかったからなのか、投稿から半日以上もトップ画面に残り続けた。
当然PVは、いきなり最初から「ハーレム禁止の最強剣士!」の何倍もの数値を記録した。
ただ、さらに俺を驚かせたのは、トップページからこのエッセイが流れ去った後のことだ。
なんと、時間別PVの数値が、相変わらず(ルーキーの俺にしては)高い数値を維持し続けたということだ。
……そこで、はたと気がついた。
「小説家になろう」には、ポイントを稼いでランキング上位に残り続けるというルートとは別の、俺の知らないPV拡散ルートが
それは、例えばサークルメンバーや同級生同士の「この小説読んでみなよ」みたいな口コミかも知れないし、スコッパーと呼ばれる下位ランキングから自分の好みの小説を探している人たちの存在かも知れない。
考えてみれば「小説家になろう」は、閲覧だけならアカウント登録無しで読み放題の、セミ・オープンなSNSだ。どこで誰が見ていてもおかしくない。ポイントと上位ランキングという目に見える指標と同時に、メールのやり取りや、リアルでの口コミの力も、単に拡散ルートを把握できていないというだけで、実は大きな拡散力があるのではないか。
つまり
「会員ユーザーに読んでもらう」→「ポイントをもらう」→「ランキング上位になる」→「閲覧専門の非会員読者の目に止まる」
という流れのほかに、これとは逆に、
「偶然、非会員読者の目に止まる」→「これ、面白いから読んでみなよ、と口コミで広まる」→「それがいつか会員ユーザーの耳にも入る」→「ポイントをもらう」→「ランキング上位になる」
パターンも存在するのではないかと、思う。
今の俺は、地道に良い小説を書いていれば、いつか人々の目に止まり、徐々にでも拡散していく、そう楽観している。
ところで余談だけど「完結済みの長編」はトップページに長く滞留しやすいという特性を、何でみんな活用しないんですかね。
「小説家になろう」における短編・長編の定義は、あくまでこのサイトのシステム上の定義であって、世の中の短編・長編の定義とは違う。
現実世界の常識で長編といえば、単体で一冊の本が出来る最低ライン……12万文字以上のものを言うし、6万~12万文字くらいを中篇、それ以下を短編と言う。
「小説家になろう」においては、どんなに長くても1回で投稿してしまえば、それは「短編」だし、6万文字以下の短編でも分けて投稿すれば(普通はそうすると思う)それは長編扱いだ。
現実世界でのラノベのような出版物では、長いシリーズ物は当然、文庫本一冊を区切りとして第1巻、第2巻……と分けて出版さえれる。当たり前だけど。
ならば、例えば120万文字、120話の小説を、12話ずつ区切って一旦完結させ「○○第1巻」「○○第2巻」……とすれば、その都度トップページの完結済み長編のリストに載って、トップページから流れ去るまでの時間を稼げると思うんだけど。どうだろう?
先に述べた「1話1万字を、一気に投稿するくらいなら、五千字ずつ2回に分けて投稿しましょう」というテクニックの応用として、誰でも考え付きそうだけど、そういうのは余り見たことがない気がする。
それはそれとして、三つ目の「異惑星に転送したら、うっかりチート超能力発現してエイリアン娘にモテモテな件w」について。
俺の中に二つの欲求があって、音楽に例えて言えば「構成を考えて膨大な楽譜を書いて、オーケストラを編成して、半年後に壮大な交響曲を演奏したい」という欲求のほかに「本能に身を任せて、たった今、浮かんできた音を、アドリブで切れ間なく鳴らしたい」という欲求があって、その受け皿として、3番目の投稿をしたんだけど、ふと魔が差して、ネットでよく言われる「流行のキーワードを並べて長いタイトルを付けると、それだけでPVが増える」という説を試してみたくなって、こんなタイトルにしてみた。
つまり「看板に偽りあり」なんです。ゴメン。
結果、どうだったかといえば、やっぱり通説は正しかった。
初日から、いきなり大量のPVがドドーンと来た。
でも、2日目にはPVはガクッと落ちた。
逆説的だけど、これはこれで「小説家になろうのトップページ・ランキングとは別のところに、例えば口コミのような拡散ルートが存在するのではないか」という俺の仮説が補強されたのではないか。
どこかの高校や大学で「その小説、タイトルと違ってお前の好みの話じゃないから、読まなくても良いよ」みたいな会話が交わされているのではないかと妄想している。
「変な小説投稿して、トップページの新着リスト汚すなよ、チラシの裏でやっとけ」という御意見もあろうかと思いますが、それは、それ。
「小説家になろう」の良い所は「小説自体の質の良し悪しで運営者側が恣意的なフィルタリングを掛ける事はしません。誰でも何でもウェルカム」というスタンスなのだから。ある意味「このサイトそのものが、全世界に向けて開かれた壮大な『チラシの裏』なんだ」とも言える訳だし。
●その8、時間帯
読者も多いが投稿も多くて、すぐに流れ去ってしまう時間帯に投稿すべきか、読者は少ないが投稿者も少ない時間帯に投稿すべきか。
個人的には、投稿時間はやっぱり閲覧者数の多い時間帯、例えば夜8時~深夜10時くらいまでに投稿したほうが良いかなと思います。たぶんこの時間帯は、読者・投稿者の相対的な比率としては、投稿者に有利になっているんじゃないかと。つまり、投稿者も多いけど、それ以上に読者も多いと思う。
あくまで仮の話ですが、例えば、ゴールデンタイムの投稿者数が、深夜の投稿者数の2倍だとして、従って、ゴールデンタイムにおいては深夜の半分の時間で新規投稿がトップページから流れ去って行くとします。
おそらく、その数分間に偶然、俺の投稿を目にする読者の数は2倍以上なんじゃないかと思う。つまりトップページ滞在時間は短くても、その短い間に出会える読者の数は、それを補って余りあるんじゃないかと。これは、あくまで俺の
ただし、これもよく言われることだけど、9時00分とか、10時00分とか「00分」近辺は止めたほうが良い。タイマー予約している人が大量に投稿しだすので、さすがに分が悪い。20分くらいですかねぇ。ねらい目は。
●その9、結論
とにかく一番の最優先事項は、自分が書きたいものを書く。
そして、その構成や表現における「エンターテイメントとしてのクオリティ」を出来るだけ上げる。
長編小説なら1話の長さは4千~6千文字くらい、即興小説なら1話2千文字くらいがベストか。エッセイに関しては、長さはあまりこだわらなくて、良い。
長編小説は、なるべく短い間隔で定期的に更新していくこと。読者をじらし過ぎるのは良くない。
出会いとは、結局は確率。神さまの領分。人間である自分が関与できる範囲はそれほど多くない。いつまでも「検索エンジン最適化」に
そうは言っても最低限の出会いを増やす努力はする。自分のブログおよびツイッターでの告知と「勝手にランキング」「アルファポリス」のバナー貼りは、必ずやっておく。
良いものを書き続ていれば、いつか色々な人の目に止まって、拡散していくのではないか。
これは心構えとかの話ではない。数学の確率論の話として、そう思う。
ここまでを振り返って。 青葉台旭 @aobadai_akira
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