夏の始まり。

青葉台旭

1.

今朝早く

最後の雨を降らせて

今年の梅雨が去って行った。

午前一〇時きっかりに起きた僕は

昼下がり、小さな中古の自動車くるまに乗って

住宅街を走り抜けた。

降り注ぐ太陽の熱気が

歩道の割れ目の雑草に

ますます力を与えている。

高校前のバス停では

学生たちがバスを待ちながら無駄話。

まだ日焼けをしていない少女の肌が

道路の照り返しで

透明にかがやいた。


夕方帰ってきたら

オンボロ車を車庫に置いて

そのまま町を歩いてまわる。

やわらかく傾いた日差しを浴びて

涼しい風がゆるゆると流れる町。

ここに住んで、もう長いけど

まだ知らないことが沢山たくさんあるんだ。

前を行く学校帰りの中学生を

大股おおまたの歩幅で追い越した。

短パン姿の中学生

歩きながら英語の復習。

ワット・タイム・イズ・イット・ナウ?

What time is it now?

晩飯ばんめし

どうしようか。

さっき見つけた焼鳥屋の屋外席で

日が暮れるまでビールを飲もうか。

ああ、それが良い。

今日は夏至だからね。

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夏の始まり。 青葉台旭 @aobadai_akira

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