協力
「好かれてるというよりは愛されてる?近いかな。貴方は体に悪魔の匂いがこびりついてるわ。まるで私のものよ、手出したら承知しないってね。」
好かれてる、そう聞いた時。俺はなんと言いづらい感情に囚われた。
既視感というやつなのだろう。知ってる気はするが記憶には無い。
でも一般人が悪魔と接触する機会なんて滅多に無いはず。
つまるところ、俺の勘違い
___ここまでが、仮契約だよ。次は本契約だから、また力を使う時が来たらまたここに来てね。
___悪いけどもう力を使うことなんてないと思う。仮契約で終わりだ
___力を使う時が来たら、名前を思い出してね、僕の名前は***。ちゃんと覚えておいてよ?
なんだ今の...?
俺と誰かが喋っている、けど相手の顔はボヤがかかっていて見えないし、こんな状況は記憶にもない。
「名前...」
俺がそうつぶやくと
「悪魔において、名前は命と等しいわ。悪魔は名バレすると一気に弱くなるわ。つまるところ、弱点ね。それで名前がどうしたって?」
「一瞬、自分のはずなのに自分じゃない記憶が見えた気がして」
あれは確かに自分だった、既視感があるようなないような、だけど自分のじゃない記憶。
すごく、気持ち悪い感覚に陥る。
「む、貴方面白いこと言うのね。それならシーナの出番ね、魔法関連だったら、だけど。」
と言うので、シーナさんを見ると無表情ながらにドヤ顔をして、胸を張っていた。
「ん、私の出番。ちょっと体見せてもらうね。」
俺に近づいて頭に手を置いた。
俺の身長は165cmぐらいなのに対し、シーナさんは170cm。
俺の身長が...低い
そんなのわかってるんだよぉ!
俺の身長、平均より低いって!
「ふむふむ、なるほどなるほど。さっぱりわからない」
シーナさんは澄ました顔でわからないって言った、まぁ無表情なんだけどね。だがその後こちらをみてほくそ笑む様にニヤッと笑った。
何なんだろう。凄く怖い...
「でも、記憶制限の魔法が三重ぐらい掛かってる。アキ姉なら少しは解けると思う。」
完全に専門外というシーナさんは何故かドヤ顔だった。
「アキナ...ね。記憶関連は彼女の専門ね。まぁそんな訳だから、後でアキナには話を入れとくから、それで説明した通りよ。神は悪魔を嫌っているわ、貴方は1人で戦うか、それとも私達と一緒に戦うかしか残ってないわよ?分かるわよね?どっちが貴方にとって得かを。」
この幼女魔王が言ってることは分かる。
どっちが効率も良く安全かなんて一目瞭然。
それに俺はここから逃げる方法なんて知らない
つまるところここに連れて来られた時点でこいつらの仲間になるしか道が残されていなかった。だがこの幼女魔王は俺には協力するしか道が無いと分かっているのに判断を委ねている
圧倒的に有利なこの状況でだ。その真意は?
俺が味方になった時のメリットは?
本当に未来視で一緒に戦っていたからだけ?んなわけない。こいつは武ではなく知だけで魔王になったんだとしたらもっと利己的な自分に利益が回って来る何かがあるはず。
くそ、全然わからない。
それにここでこいつらの仲間になるってことは魔族と敵対している先生達を裏切る事になるのではないか?でも洗脳されている可能性がある、でもこの幼女魔王の言っていることが本当かなんて調べる手もない、だけどここで嘘をついてまで俺を引き入れるメリットは?
妥協しよう、ここは仲間になっとおくしかない状況、んでもって鍛えてもらえるっていうなら鍛えてもらって逃げる、それで行こう。
もし、幼女魔王の言っていることが本当なら俺がこのまま逃げ帰ったとしても、殺されてしまうかもしれない。それに俺の知らない記憶もここでなら戻るかもしれない。
まぁそれはついでなんだけど。
「じゃあ、食客なんて形でもいいですか?部下になりたい訳では無いと言いますか...なんと言うか。」
「ええ、結構よ。さっきは部下になりなさいなんて言ったけど結局は貴方が勢力的にこっちに付くことが意味あるから。」
と意味深なこと言う。
そんな訳で、俺と魔王一派の協力関係が結ばれた
んで、俺は食客という名の居候になった訳で自分の部屋を与えられ、そこでアキ姉とやらを待つ。
かれこれ2時間待っているのだが、現れる気配が感じられない。
何かあったのかとか気になってくるので、幼女魔王の所の行き方は覚えたので、そこに行って誰かを道案内につけてもらって、アキ姉とやらの所に連れてってもらう方が早いな
と思いドアを開けると
「うわっ!」
ドアを開けるとそこにはびっくりして尻餅をついている茶髪ロングのひょっとこがいた。
「え?大丈夫ですか?!」
俺は戸惑いつつもその人?に手を差しのべると手をつかわずに立ち上がり
「あ、あの... アキナと申しましゅ..。魔王様に言われて来ました。」
声は女性特有の耳触りのいい音
だが噛んだからだろうか、徐々に声が小さくなっていく。
それにひょっとこを着けていて表情は伺えないが耳が真っ赤になっているのが伺える。
相当噛んだことが恥ずかしいと見える。
これが多分シーナさんクラスになるとドヤ顔で返してくる。
「記憶制限の魔法が掛かっているから解いて欲しいと聞きまして...来たんですけど...でもシーナでも難しいってなったら私なんかで大丈夫かな...。」
ネガティブな発言はなんとなくスルーをする
だって、初対面の人に励まされても俺だったら嫌だし、なんだこいつってなる
取り敢えず部屋に入ってもらう。
「それで、俺は何をすればいいですか?」
「あ、そうですね。ベッドに腰をかけてもらえればそれで大丈夫だと...思います」
俺が借りている部屋の話をするとしたらめちゃくちゃ広い部屋にベッドがポツンと置かれている部屋だ。
寂しくなる、協会にいた頃は皆で固まって寝ていたし。協会から出て部屋を借りた時もかなりちっちゃい部屋だったから若干な安心があった。でもこの部屋はなんだろう、そわそわが止まらない。
広いうえにこの物の無さが原因なのだろうけど
「それじゃあ、頭...失礼します」
と言い、頭に手を置いた。
多分これが体を見る魔法に必要な動作なのだろう。俺よりちょっと低いくらいの身長のアキナさんが俺の頭に手を乗っけるにはこの位の高さが丁度いいのかもしれない、まぁ手の置く高さが魔法の発動に関係があるのかはわからない
もしかすると俺が立ったままだと手を挙げるのが疲れるとかそんな理由かもしれない。
「この魔法は、結構集中しなきゃ駄目だから...楽出来る位の高さにしないと術者に負担が掛かっちゃうんです...」
心外ですみたいな、声でそういうアキナさん。
ん?待てよ。俺
俺の口はそんなにだらし無い訳では無い。
もしかすると...この魔法...!
アキナさんは頭から手を離して
「そのまさかです、考えてる事が全てわかります。はい、一応終わりました。三重で記憶を制限する魔法が掛かっていますね...1個目と2個目は強引にこじ開けられそうですが、3個目は貴方が定められているキーワードを思い出さないと解けない様になっています」
前半がどうしてもインパクトが強すぎて、後半がろくすっぽ頭に入ってこなかった
じゃああの時、シーナさんにこの魔法をかけられていた時の身長云々はシーナさんに筒抜けだった訳
だから、あのほくそ笑む様な笑み...!
「...取り敢えず、1個目の魔法をちょっと強引にですけど、こじ開けますね。」
その後、小声でアキナさんが魔法を、唱えると俺の意識が落ちる
そして俺は、失われた記憶のほんの一部覗くことになる
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