謎々ミステリー

姫宮未調

片道切符

あなたは、息抜きに立ち寄った図書館で、この本をふと手に取ります

何気無く開いた本、そこには………


◇◆◇◆◇◆◇


「お母さんに会いに行こう」


妹がいいました


「どこにいるの?どうやって会いに行くの?」


兄がいいました


「汽車に乗ってアルトフェルンにいくの」


妹がいいました


「アルトフェルンって?」


兄がいいました


「あの汽車のなのよ」


妹がいいました


「最終駅って遠くない?」


兄がいいました


「それでも、わたしは会いに行きたい!」

「……うん、そうだね!」


妹の剣幕と、会いたい気持ちに負けた兄は、一緒にいくことを決めました


◇◆◇◆◇◆


双子の少年少女はお父さんと三人で暮らしています

数年前、突然お母さんがいなくなりました

四方八方探しましたが、見つけることはできませんでした


◇◆◇◆◇◆


翌朝二人は、お父さんが寝ている隙に家を出ました

近くの小さな駅の停留所まで、手を繋ぎながら歩きます

古い木で出来た停留所

兄は首をひねりました

停留駅表に、『アルトフェルン』の文字はありません

気に求めず、妹は券売機で切符を買い、兄に渡します


━━ファ……ン


遠くから、汽車の音がしました


「行きましょう、汽車が来るわ」


笑う妹に手を引かれ、ホームに立ちます

一抹の不安を抱えながらも、やってくる汽車を眺めました

いつも乗っている汽車と何ら変わりません

乗り込んでも、変わらない風景や空気

疎らに人が乗っています


揺られながら、いつしか不安もわすれていました

流れる景色、聞きなれた電子音混じりの放送

大好きな景色を見ながら変わらない会話を続けます


「失礼、切符を拝見」


優しそうな車掌さんが、切符鋏をパチパチ言わせながらやってきました

二人は切符を取りだし、車掌さんに渡します


まずは兄のをパチン


「……はい、君たちには長旅だから、頑張ってね」

「はい!」


次は妹のを……


「……これは……、そうか」


二人を交互に見つめ、静かにパチン

また不安が過ります

……同じ切符のはず


「はい、よい旅を」

「ありがとう!」


妹は笑顔でした

お母さんに会うことしか頭にないのでしょうか

いい淀み、複雑な顔をしながら、お辞儀をして立ち去る車掌さんに気がつきません


◇◆◇◆◇◆◇


ゆっくり、ゆっくりと進む車窓を眺めます

妹はリラックスしたように眠り始めました

心地好い揺れに、兄もうつらうつらし始めます


◇◆◇◆◇◆◇


━━……フェルン、次は


聞き慣れた電子音放送が目的地を告げ、二人を覚醒させました


「お兄ちゃん!ついにつくわよ!」

「うん、そうだね」


ワクワクしながら外を眺めます

柔らかい緑が視界いっぱいに、車窓に広がっていました

いつの間にか、座席には人がいっぱいいました

アルトフェルンの駅が見えてくる頃には、皆がソワソワし始めます

駅に近づくにつれ、駅の方も人で犇めいているのがわかります

自分たちの街にもこんなに人がいただろうかと思いながら、好奇心が不安に勝ります


「お兄ちゃん!いたよ!お母さぁん!!」


ぶんぶんと手を振りだします

そちらに向くと、懐かしいお母さんが優しく手を振り返していました


静かに汽車が停車すると、我先にと皆が入り口に向かいます


「お兄ちゃん!早く行こうよ!」


待ちきれないと言わんばかりに、兄の服を引っ張ります


「うん、ごめん、行こう」


汽車を降りると、優しい笑顔でお母さんが出迎えてくれました

妹はお母さんに抱きつき、嬉しそうです


◇◆◇◆◇◆◇


幸せな時間はあっという間です

汽車の発車前ベルが鳴り響きます

もう帰らねばなりません


「お母さん、また会いに来るね」


離れたがらない妹を諫めながら、手を引こうとします

しかし、お母さんにその手を優しくほどかれました


「……早く乗るんだ」


兄は後ろから車掌さんに腕を引かれ、汽車に後ろ向きに入ってしまいます


「まだ妹が……!」

「……お兄ちゃん、バイバイ」


お母さんに抱き締められたままの妹が、手を振っています


━━ジリリリリリリリ


発車合図が鳴り響き、無慈悲にもドアがしまってしまいました

すぐに発車します

兄は車掌さん以外、自分しかいない汽車の中を逆に走り出します

信じたくなかったのです

妹の切符が『片道切符』だっただなんて

最後尾の扉を乱暴に開け、手摺にすがり付き、見えなくなるまで、手を振るお母さんと妹を見つめ続けました

涙で霞む瞳を何度も何度も拭いながら……


◇◆◇◆◇◆◇


静かになった車内で、兄は1人佇みます

なんでこんなことになったのか

なぜ、1人になってしまったのか

答えのない自問自答

信じたくない気持ちに苛まれます


◇◆◇◆◇◆◇


虚ろになりながら、無意識に帰宅しました

お父さんは何も言わず、迎え入れてくれました

お父さんを見た瞬間、兄は泣き始めます

哀しみを伝えようとしても、何をいっているかわからないまま、兄は泣き続けました

お父さんは何も言わず抱き締めてくれました


◇◆◇◆◇◆◇


━━数年後


「……お母さんと妹に会いに行ってくるね」


お父さんはこちらを見ようとはしませんでした



それを告げた兄は…………帰ってくることはなかったのです


◇◆◇◆◇◆◇


そのあとには何も書かれてはおらず、白紙のページが数ページあるだけでした

……いえ、最後のページに封筒が一通

中には、地図が一枚と便箋が入っています


◇◆◇◆◇◆◇


この話しは、実際にあった出来事です

兄と表記した少年は私の友人です

これは彼が話してくれた話をまとめたものです


どうか、真相をあなたで導きだしてください

『アルトフェルン』とはどこなのか、存在するのか

事の発端は、この家族から始まりました

父親だけが取り残されました

そして、今も行方不明者は増え続けています


どれだけの可能性があるのかを知りたい

解決に至るかはわからないけれど、私はただ、あり得るすべての見解を知りたいのです


◇◆◇◆◇◆◇


地図は書いた本人や、作中の家族が住んでいる街のようです

あなたはその地図を頼りにその街へと向かうのでした


◇◆◇◆◇◆◇


(数少ない文中情報から、あなたの推理力や想像力を駆使してお答えください

あくまで頭の体操ですので、愉しく解明していってください

ストーリーの続きとして描かれても面白いかもしれません

あなたの知識をフル稼働して、遊んでみてください)


◇◆◇◆◇◆◇


あなたはその街のあの駅で『アルトフェルン行きの片道切符』を手に入れることが出来ます

あなたが無事に帰還されることを祈ります


◇◆◇◆◇◆◇


(この作品をあなたの今後に役立てて頂ければ、幸いです)


(次回作は未定です)

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