学校の怪談パロディ
トイレの花尾くん……?
━━とある小学校にまつわる不思議な怪談
『トイレの花子さん』はとても有名だが、この小学校には『トイレの花尾くん』がいるらしい。
二階にある男子トイレの一番奥の個室に現れるそうだ。しかしその個室は立て付けが悪いのか、開かずの個室となっている。
放課後そこに男子が行き、五回ノックをして「花尾くん~!遊ぼう!」と言う。
すると、空かないはずの扉がギイーっと開いて「待ってたよ、遊ぼう」と便器に座った頭の大きな少年が現れるらしい。
そして、そのままその男子は消えてしまう。
◆◇◆◇◆◇◆
そんな噂を検証しようと、ある男女グループが面白半分で、放課後に件の男子トイレ前に集まった。まぁ、誰が行くかまでは決めていない。
「だったら、自分がいくよ。」
名乗りをあげたのは、小学生にしては身長の高い、ハスキーヴォイスの女子。傍目には、発育途上で女子に見られない。所謂、イケメン女子だ。
残りの皆は、少し離れた角まで後退して、様子を伺う。「気を付けてね?」小柄な女子が心配そうに見ている。「大丈夫大丈夫!」後ろ手に手を振った。平気そうだが、ちょっと怖いらしく、男子トイレの中にはいると「は、花尾くん?遊ぼう?」心なしか声が掠れる。
━━ギイー……
『待ってたよ、遊ぼう』
呼び掛けるのは、トイレの中ならいいらしい。恐る恐る、一番奥までいく。そこにいたのは……。
体の大きさに反して少し頭の大きい、ギョロ目の男子が便器に座っていた。便器から降りて、じわりじわりとこちらに近寄ってくる。そして、手を伸ばしてきた。
……身長差があるため、その手が辿り着いたのは胸板。
『……!おまえ、女子じゃねえか!帰れ!バカ!』
ないに等しい胸で性別を判断した怪異。一目散に中に駆け込んだ。
━━バタン!
……何が起きたのだろうか。訳がわからず、固まってしまう。だが、その意味を数秒後に理解する。「ちょおっ!待てや!自分はそこんじょそこいらの男子より自信あんだよ!」プライドが傷ついたらしい。
『うるさい!』
頭上から声がした。反射的に見上げると……。
天井にへばりついたさっきの男子が、不自然にこちらを向いて睨み付けていた。ギョロ目をさらにギョロギョロさせ、こちらを見ている。
『さっさと帰れ!バカ女子!二度と来るんじゃねぇ!』
あまりの不気味なバランスに、悲鳴が声にならず、トイレから崩れるように飛び出した。「大丈夫?!」「どうした?!」友人たちが駆け寄る。
……振り向くと、最初からいなかったかのような静寂がトイレを包んでいた。
◆◇◆◇◆◇◆
消えた男子というと、その日中に騒ぎになり警察にも通報される。家族は眠れず、不安な一夜を明かす。
だが次の日、消えた男子はいつも通り起きてくる。自宅で。
不思議なのは、行方不明になったことも、『トイレの花尾くん』のことも全く覚えていないのだ。
……一番の謎、それは『トイレの花尾くん』は何をして遊ぶのか。未だに不明である。
更に、男子のみを求め、女子には見向きもしない。そう『トイレの花尾くん』は……。
Fin
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