夢の奴隷

四季 巡

夢の奴隷


僕らは失ったものばかりを数え、欲望に空いた心を埋めることを幸せと例えた。

今あるものを全て忘れて。

生きるために生きる僕らは夢の奴隷で、決まった航路を辿る舟人。

咲く桜も、散る青葉も、引力に惹きつけられた奴隷で、染める紅葉も、実る蕾も、決まった運命を辿る舟人。

騙し、欺き、得たものは虚しいだけの理想でしかなく、冷たい雨に散らされる桜のようで、見上げる空には若葉が咲いて、今あるものを数えたら、僕には僕しかいなくてさ。

今日も悲しい雨が降る。


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