僕が死んでから

伊勢崎

プロローグ 葬式を見る

 自分の葬式を眺めていた。欠けた記憶でわかるのはそれくらいだった。

 遺族席には眉間に深くしわを刻んだ男性と、疲れ果てたような表情の女性がいる。たぶん、この二人が僕の両親なのだと思う。不安な語尾は、その二人が全く涙をこぼさないことが原因だった。

 対照的に泣いてくれている女の子もいる。僕よりも一つか二つ――たぶん二つ年下の女の子だ。直感が二つ下だと告げてくるのは、なくした記憶の残滓だろう。おそらく彼女は僕の妹である。


 ――しかしまあ。


 自分の葬式とはいえ、ひどく退屈だ。

 退屈しのぎを探そうと参列者を見る。制服を着た生徒が大勢、我慢して座っていた。

 楽しくない場所で長時間座っていなければいけないというのは、ある種の拷問のようなものかもしれない。僕はその態度を咎めるつもりはなく、むしろ仕方ないものだと受け入れていた。


 ここにいても楽しくない、だから僕は葬式を途中で抜け出すことにした。

 外に出るとまぶしい太陽が出迎えてくれる。別に、僕のことを蒸発させたり、消し去ったりはしない。


 僕はいま、自由な幽霊だった。

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