4話 パーティーに誘うには 2
なんかあのお嬢様、私を敵視してるっぽいんですよねぇ。 まぁ弄り過ぎた私が悪いんですけど。 正直私が仲間になってとまた言っても、仲間になってくれるとはあまり思えません。
ていうか昨日だってきゅーちゃんが一緒にいてくれたらきゅーちゃんに誘ってもらうかなと思っていたんですよ! なのにきゅーちゃんったら筋肉痛で寝込んでるとか! このもやしっ子め!
………………あ、そだ。
「そういや、もう筋肉痛は大丈夫なの?」
「ふっ……案ずるな娘よ。 そのような物、昨日の夜の時点で完治したぅん!? ちょ、触んないでよ! 完治したって言ってんでしょ!」
「ふっふっふ、知ってるかなきゅーちゃん。 筋肉痛と言うものは3日くらいは続くものなんだよ。 そう1日で直ったりするわけないでしょう! ホラ、まだ直ってないと素直に言いなさい! うりゃ! うりゃ!」
「ちょ、わっ! やめ、わひっ!? ホ、ホントやめて! 避けるのだって身体痛むんだからぅ!? ちょ、わ、わかったから! 認める! 認めるからぁぅっ、認めるからやめて!」
「良い子ですねきゅーちゃん。 でも最初に嘘をついていたのでおしおきです! あと40秒耐えなさい!」
「なっ!? ちょ、あぅ!? う、う、うそつき! ツミレの方がうそつきだよ! やめひぇっ!? やめて! ホント痛いんだからやめて!」
「はっはっは! 素直に言ったらやめるなんて一言も言っていません! さぁ観念するがよい!」
「おまたせしましたー……って何いちゃついてるんですかこんなところで」
私ときゅーちゃんがじゃれあっている中、声を掛けてきたのは注文していた料理を運んできた赤い髪のウェイトレスさんでした。 もはや見慣れた顔です。 私はきゅーちゃんへのおしおきを中断して挨拶します。
「あ、おはよーございます!」
「はーいどーも。 仲睦まじいのは良いですけど、ここでいちゃつくのはNGですよ! 独り身の多い冒険者と受付の巣窟でそれは、危険なモンスターを挑発するのと変わらないんですから!」
「……別にいちゃついてなんてないし」
ウェイトレスさんの注意に頬を膨らませそっぽを向くきゅーちゃん。 もー、ホントに思春期男子なんだからー。
というか冒険者の人たちだけじゃなくって受付も入るんだ……美人な人多いのにあんまり浮いた話って無いんでしょうか? まぁ公務員は出会いが少ないと考えれば割と納得いく話なのかもしれません。
「ごめんなさい、次からは気をつけます」
「まぁ、ちょっと位なら良いんですけどね。 見てて楽しいですし」
「……こっちは迷惑してるんだけど」
きゅーちゃんはウェイトレスさんから料理を受け取りながらむすーっとそう言います。 でも本気で嫌がっている訳ではないというのがトーンでわかります。 ツンデレめ!
ウェイトレスさんは私の注文した料理を置いて、
「ところで、今日もあのお嬢様をつけるんですか?」
「周知済みなんだ……」
「えぇモチロンですよ! 今日こそ仲間にしてみせますとも!」
私が意気込むと、ウェイトレスさんはしかし、浮かない表情で「うーん」と唸りました。
? どうしたんだろ? ……あれ、なんかこれ前にもあったような……。
私が微妙なデジャヴを感じていると、ウェイトレスさんは前かがみになって(形の良いおっぱいがプルッと揺れ)私ときゅーちゃんだけに聞こえるように小声で言いました。
「あんまりこういうこと言いたくないんですけど……あのお嬢様は、やめた方が良いと思いますよ?」
「へ? なんでです?」
「なんていうか、良い噂聞かないんですよねぇ。 ホラ、あの人かなりトゲあるじゃないですか? あんな感じだから、過去にもパーティーでもめて追い出されたこととか結構あるらしいんですよ。 それも1回だけじゃなく何度も」
「えぇ!?」
これは驚きの情報が入りました。 まさかあのお嬢様がパーティーに入っていた時期があったなんて…………あれ? ということは、私より冒険者としての歴は長いってことですよね? なのになぁんでカエルに特攻しちゃうかなぁ…………。
それと、トゲがある事は百も承知でしたが、パーティーに何度も追い出されるほどの問題児だったようです。 まー、確かにチームワークとか苦手そうでしたし、これに関してはぶっちゃけ納得ですけど。
「確かにあぁいうヒーラー系の職業って希少ですけど、もうちょっと考えた方がいいんじゃないですか?」
「う、うーん……」
そう言われ、私は悩む、と言うよりは困惑に近い形で唸ります。
ウェイトレスさんは苦笑して、
「まぁ、私がどうこう言うもんでもないんですけどね。 じゃ、そろそろ仕事戻りますね。 ごゆっくり~」
「あ、はい! ありがとうございました~!」
手をひらひらと振って仕事に戻って行くウェイトレスさんにお礼を言って、中々上手く切れないでベーコンと格闘しているきゅーちゃんに向き直ります。
そしてきゅーちゃんはベーコンを切るのを諦め、フォークでぶっ刺したまま口に運び、
「あむ………………んぐ……それで、どうするの? ウェイトレスの人はあぁ言ってたけど。 お嬢様、今も誘う気あるの?」
キチンと飲み込んでからそう言います。 意地悪ではなく、確認として。
「………………」
私は、お嬢様を……
「当然! 今度こそ説得して、私たちのパーティーに入ってもらうんだから!」
もう決めていたんです! 多少の問題は目を瞑りますとも!
そして、私は気合いを入れるように、大きく切ったベーコンを頬張りました!
「……ねぇ、ベーコン上手く切れないから切ってもらっても良い?」
台無しだよ。
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