第56話 The Outsiders inside the〔backdoor〕...
扉の中で。
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扉。
扉とは。
〔表〕と【裏】を隔てる一枚の板。
……と、思われているだろうが、実際には違う。
扉とは、〔表〕と【裏】を番う《道》の出入り口に過ぎない。
表裏の行き来が板切れ一枚で叶えられていると“錯覚”させているのは、偏に「その構造を圧縮して、二枚の扉を一度に通す」ことを可能にしている《到達者》の力が大きい。
扉とは、本来「中に入る」と「外に出る」という二つの動作を個別に行う必要のあるものだ。それをただ「通り抜ける」ことは、扉と扉の境にある空間を無視して通過しているに過ぎない。
だから、気がつかないものなのだ。
その通り抜けた扉の【裏】に、
『にひ……♪』
その扉は、【
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扉の中を。
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〔光〕と【影】、という譬えは「言い得て妙」と言える。
扉とは、有体に言ってしまえば「ただ空間を隔てる一枚の板」に過ぎない。
その一方は〔光〕へと通じ、もう一方は【影】へと通じている。
その狭間や間隙――1と0の間を支配下に置くもの。
それが《扉》の本質だ。
「そして私は今、その本質に囚われている……というわけか」
物事を考えるとき、人はよく「本質を捉えろ」という言葉を口にしがちだ。
問題の解決や、蟠りの解消のためには、その本質を見抜くことが大事だと。
「では、その本質そのものが間違っていたら……――?」
本質そのものが歪んでしまっていたら――?
その《扉》が繋げているものは、本当に〔光〕と【影】なのか。
「フゥム……、おそらく、今は私がそれを決める立場なのだろうな……」
あるいは、それすらも《扉》というものの本質を現すのかもしれない。
彼らを《彼らが求める相手》ではなく、《私が望む先》に渡したのは、“私の意思”によるものか、"《扉》の機能”によるものか。
「本質に囚われている私には、本質を知覚することはできない、か……」
深淵を覗き込むとき、深淵もまたお前を見ている。
けれど深淵の中にいたら、深淵を覗き込むことも、また深淵に知覚されることもできはしないのだ。
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