日雇い使い魔の派遣日誌
歩手地大数寄
第1話 少年、家出した。
金が無かった。
厳密に言うのならば、『金が無い』。もう少しだけ更に詳しく述べるならば『ついでに住む所も無い』。これはもしかしたらヤバイのではないかと思ってしまったのは、ついさっきの出来事であり、彼が家から飛び出してコンビニで一時間、古本屋のリサイクルショップで二時間たっぷりと立ち読みし終わった合計三時間後であった。
「さぁ~って、家に帰ろうかなァ~」
そして『あっ』と思ったのである。故に、『ヤバイなぁ…』そう思ったのである。
ポートフィリア学園都市が北東に見えるデルデル山の山頂まで着て改めて彼は思った。どこまでも伸びている一本道の大きなハイウェイ空路には、時折田舎にありがちな無駄に改造している空飛ぶ車、略して空車が飛んでいるのが見える。ここは都市部から離れた郊外のベッドタウンでもあるのだ。
どうして彼が家出をやってのけたのか。これを語るのは少々野暮な事であろう。どこの家にも三つや八つぐらいの問題を抱えてるし、今時の若人である十七歳の彼にもまた、小さな多くの悩みがあって、でっかい大きなビッグな夢があったのである。家出をやってのけてしまったのも、道理に適う事であろう。彼はとてもポジティブ思考だったのである。
「さすがに今から家に帰るなんて出来ないし…。さァ、どうしようかなぁ…」
つい二時間前にコンビニで満面の堪え笑いをやっていた人物とは思えないほどの深刻な顔つきになる。あと少しでとばりが落ちる、夕暮れの山間で彼は偉大なるカゲロウを見た。
「ぅ~ん」
自分の今持っているカードを改めて確認する。カードゲーマーならば至極当然の作法を、彼は今改めてやってみる。
「ドゥームブリンガー(自転車)、693円、明日で切れちゃう電子端末機器(ケータイ)、…多分もう二度と金輪際使用しないと決めた家の鍵、ヒップホッポスターとおそろいの新品バンダナ、よれよれジーンズ、くたびれたティーシャツ、僅かな不安、ちっちゃな希望、でっかい夢…!」
何故かそこで彼は少しだけ悲しくなった。この世界中に生きているあらゆる人間の希望を一身に受けている錯覚している彼が、彼自身を悲しませたからだった。そして展望テラスの出店から漂うカレーの匂いが、彼の精神を、一瞬童心に還した。どこかで聴いたことがあるメロディーがどこかからか流れて、少しだけ泣くと、それから顔を上げて考える。
「お金、稼がないと…な」
どこまでできるか、やってみるって決めたのなら、あとは考える必要はもう無いのだ。考える事よりも実行する方が遥かに楽なのだと、彼はこの時生まれて初めて知った。その足でトレッキングコースの出口に設置されている全自動コンビニに向かう。今時のコンビニは全ての業務を機械で行われているのだ。コンビニでエロ本を買える、この事がコンビニの普及率の決定打になったのは言うに及ばずである。彼は既に端末機器の裏コードアプリを入手していた。即ち、未成年でもエロ本が買えちゃう世代であった。
「あ」
ついついいつもの癖で雑誌コーナーに向かってしまう。入り用なのは、出入り口横に設置されているフリーペーパーだったにも関わらず。人間の習慣というの空恐ろしさを感じながらも、これまたよく冷えたアイスがたんまり詰った冷凍庫をチラリと見てフリーペーパーコーナーに向かう。
「…う~ん」
フリーペーパー。週代わりの薄い本の中に急募である求人がぎっしりと詰っている本である。多くの場合が誰にでも出来る簡単なお仕事を掲載されている。バイト、アルバイトと言う臨時の人手不足のために使用される言葉が、今社会問題にもなっているらしい。彼はこの前この薄い本が邪なる堕落への誘い手なのだと批判していたニュースコメンテイターを見た。よくわからなかったが、それを言わしめる程の本なのであろう。生唾を飲んで本を手に取る。
「ぉ」
明るい。とにかく明るい。色とりどりの本のページには多くのポジティブな語彙の宝庫であった。未来というよく分からない漠然とした行き先へ対抗するための言葉の羅列。これが彼にとって、それが救いになった。なんとかなると思った。薔薇色の未来が自分に訪れるに違い無い。ページをめくる度にその確信は深まっていった。
「ン」
なんだか自分にもやれそうなぴったりの求人を彼は発見してしまった。
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「僕でもやれそう!」
画像には三人の女の子と二人の男が笑顔でダブルピースをやっている。右端に心霊写真のような顔に見える染みはきっと印刷ミスなのだろう。彼は思った。今っきゃないッ!と。
「…ケータイも多分明日止まる。今からかけよう…!」
希望しかないこの広告は自分のために掲載されているのだと信じて疑わなかった。世界は自分を中心に回っているし、この世界は自分を祝福してくれるものだと理解していた。
「ケータイが止まってる…」
それでも。湧き上がる希望は止まらない。それでも、未来を信じていた。信じる事が、彼には出来た。ドゥームブリンガーに駆け乗って、山道を一気に駆け下りる。記載されていた住所の距離まで、およそ三時間。ノリだけで十分に行ける距離だ。辺りはもう暗くなり始め、直にぽつりぽつりと電灯石の光でぴかぴかと道を照らしはじめる。この一本道の空路には帰宅時間も終り、たまに風を切る音だけが耳に届く。どこかで美味しそうな食べた事の無い匂いがした。完全に日が落ちると、わけもなく体の芯が、心が、冷たくなってくる気がした。自分がどこまでこの世界の実情に足を突っ込んでるのか分からなかったが、後から振り返る過去なんて大して価値は無いのだと彼は思う。今生きてるって思えるこの瞬間、ペダルを踏み込む足が軽く、滑るように進んでいける。一瞬今自分は有るべき現状、現実から今まさに全速力で逃げ出しているのだとも思った。次の瞬間には忘れて、未来の希望にすがり付くようにペダルを踏み込む。
「こんなとこ、あまり来てないけど、綺麗だな」
星空が怖いぐらいに綺麗だった。彼は思う。この恐ろしいほどに天上いっぱいに溢れかえっている星のように、人間は確かに存在する。きらきらと瞬くだけなのは誰かが見ている間で、もしかしたら誰か見てないところで、争ってたりはしていないのだろうかと。
頭の中で過ぎ去った過去が行ったり来たりと、せわしく動く。じっとりと汗で背中が濡れてきた時に彼は思った。着替えが必要なのだったと。勢いだけ、自分の世界の中をひた走る。自分の世界はきっと誰かの世界と繋がり、間違いなく真実は一つで、この世界は彼のてのひらにあるものだと信じて疑わなかった。
彼は、少年だったのだ。
第一話 少年、家出した。 次話 少年、ネカフェデビューする。
夜の頃合、画面メモをしたケータイの地図で四苦八苦しながらも辿り着いたのは人気の無い倉庫街の一角、一軒家?雑居ビル?『有限会社ピッチブラック』と書かれているその店構えは彼が想像していた以上に清潔感の有る店構えだった。だったがその上にはマンションだろうか、薄暗いオーラを漂わせている。霧が出ているせいなのであろう、人っ子一人居ない大型コンテナを収容できる倉庫が立ち並ぶこの場所は異世界、といった趣が感じられた。どこかのだれかが遠くで作業する音は聞こえている。リフトを動かす音、空車が風を切る音、貨物コンテナが地面に置かれる轟音。少なくとも彼にとってのこの世界は始めてのものだった。テレビでこういう場所があるとは多少なりとも聞き及んではいたが、自分がこんなにも矮小なちっぽけな存在に感じられるほどの場所に来たのは初めてだったのだ。この場所には、自分以外の人間は全て行き倒れて地に伏してしまったのではないだろうかとそんな不安な妄想をしてしまう。
「…行くよ」
それでも、彼の情熱の火は消えない。彼は既に決断していたからだ。息を大きく吸って、吐きながら入り口のドアに立つ。
「…」
十秒ほど入り口のドアに立って気付いた。自動じゃないのか。ちょっと恥ずかしく感じながらもドアに手を置き、建物の中に入っていく。
「いらっしゃいー」
視覚より先に耳からくすぐったい声で聴覚を刺激された。会社の事務所。確か以前見た不動産会社の事務所なんかと同じ作りだった。入り口から入ったところには受付が有り、入り口の横にはソファが有る。奥にはどこにでもあるデスク群が並んでいる。
「どんなご用件でしょーかー」
可愛らしい女性が受付に立つ。おでこが広い可愛らしい声とは違って背の高い女性だった。そういえばと思い出す。声優をやっていた事務員さんが居るらしいとは彼女の事ではないだろうか。腑に落ちる。なるほど。確かにアニメでよく聞く加工された声なのだと。…駄目だ。にやついてしまう。堪えろ僕。少年は腹に力を込めて笑いを殺しながら挨拶する。
「こんばんは!あの~雇ってくださいっ!よろしくお願いしますッッ!」
「はいー、ではこちらにー」
手馴れているのだろうか、女性は受付の横にあるデスクへと促す。促されるまま椅子に座って一枚の紙と羽ペンを出される。
「分からないところがあったら言ってくださいねー。あちらに居ますので記入を終えたらベル鳴らしてくださいー」
「はい!」
さっと紙に目を通す。一瞬くらりと眩暈がした。文字が多い。多すぎる。多くは事務的な雇用面に関する事だったりするようだ。要約すると死んでもこちらの保障は負いかねますと書かれている記述を見つけて胃の中のクリームパンとアンパンとコーラと大盛り肉まんとチョコチップメロンバニラパンが混ざった胃液が口の中まで競りあがってきた。ぐっと堪えて黙って飲み干す。ちょっとだけ涙目になりながらも更に目を通す。
「はいーフルムです。えーっと。えー。はい。うんうん。はい。うん。うんうんー。うん。うん。はい。はいわかりました。では代わりのものを遣しますね」
そんな声が受付から聞こえた。ケータイで何か応答しているようだった。
「すみませんー。えっと。あの、ちょっと良いですか?」
顔を上げると困ったような顔をしているアニメ声の女性が言った。
「はい」
ペンを止めて返事をする。
「ご相談なのですがー。これからお仕事に行ってもらう事って可能ですかー?」
更に女性は付け足す。
「今からおよそ二時間のお仕事ですねー。ですけど日給分を全額保障しますよー。更にちょっと今回は特別ですので日給の三倍のお値段を出しますー」
「はい!行きます!」
三倍。三倍。三倍だ。しかも二時間ちょっちで日給分。日給分とはつまり、フリーペーパーに載っていた最低賃金の分であろうと思われる。
「ありがとーございますー。えーっと。もう事務所閉まっちゃいますので、えーーっと、こういう事ってあんまりしないんですけど、先にお支払いしておきますねー」
そう言って封筒を渡される。
「中身を確認してくださいー」
「はい」
中には一万円札が三枚入ってた。ぱんなこった。じゃなくてなんてこった。
「それではこれからお仕事に行っちゃいましょー。紙への記載は明日以降で結構ですー。時間が無いので私の車で参りますねー。ついてきてくださいー」
早速一緒に歩き始める。事務所を出てすぐ右手に車があった。小型の赤いスポーツカータイプだ。こんなのさっきは無かったと記憶してる。うん。無かったと思うがそんな疑問は次の瞬間には消え去り、車に乗り込み目的地へと向かう。車の中には不思議な香水の匂いがほのかに香った。リラックス作用があるのだろう、少しだけ張り詰めたものがほぐれた気がしてきた。
「ところでこういう経験はあるのかな?」
「無いです、えっと、アルバイトも初めてで…」
車が、急発進した。運転が荒いタイプなのだろう、加速度的なスピードで空斜め四十五度で疾走する。一気に街の風景が空からの眺めとなる。気持ち悪くなる。指先から汗が噴出した。
「そうなんだー。まぁ大丈夫ですよーお勤めはーまぁ簡単に言っちゃうとウエイターさんみたいな感じですねー。家族におじーちゃんおばーちゃん居ますかー?」
「居ます」
「おじーちゃんおばーちゃんの相手するのは上手ですかー?」
「うーん、あまり話したりできなかったですね…」
あまり話しにくい話題だ。家族のことは。もう家を出たのだ。彼は思う。それでも無関係を貫けるのだろうかとふと考えてしまう。
「そーですかー。まー。今回のお仕事はグリゼル卿のパーティのウエイターですねー。ウエイターとかやったことないみたいですけど大丈夫ですよー」
「そうなんですか」
「はいー。ただ、今回のお給料の事を考慮してお仕事してくださいねー。きっちりと。そこは徹底してやってくださいー」
「分かりました!」
「あのー。ここからは仕事抜きの話題になりますんですけどー。もしかしてワケ有りですかー?」
ギクリとする。心臓が一瞬止まった気分になる。これはきっと罪悪感のせいなのだと考えてしまう。
「ですね。家出しちゃいました」
「そーですかー。大丈夫ですよー。今日はお仕事が終ったらネットカフェにでも止まってくださいー。明日また改めて寮へ案内しますねー」
アッサリと。バッサリと。簡単に問題の片がついてしまったことに驚く。もしかしたら、同じようなワケ有りの人間も少なくないのかもしれない。慣れた対応でありがたい。
「あとー。今日は特別ですよー。今日の事は人に言わないでくださいねー。先に支払う事なんてあまりしないのでー」
「わかりました」
車はびゅんびゅんと速度を上げて走ってゆく、目的地目掛けて水平を保つ、突進するサイのようだった。明らかに順法速度オーバーだった。
「…」
繁華街の煌びやかな街が見えた。宝石のように見える摩天楼そびえる人々の生きる街。ここに全てがあるのだと彼は思う。ここに詰っているのだと。それを思うと高揚感が沸いてくる。頭の芯が熱くなる。
「極力クライアントの期待には応えて下さいねー。無理なものはムリって言ってくださいー。これ、私のケータイの番号ですー。問題が発生しちゃったらこちらからお願いしますねー」
「あっはい…!」
「パーティはそろそろ終っちゃいますけど後片付けもですねーお願いしますー。ちょっと未成年には働けない時間帯になっちゃいますけど、それも込みこみでお願いしますねー」
「大丈夫です」
三万円は大金だと思う。フリーペーパーの平均時給が900円。八時間の労働で7200円。単純計算で三万円を手にするには丸五日働かなければいけない計算だ。毎日の食事を考慮すると一週間は必要なぐらいだ。ラッキーだ。幸運だ。やっぱり僕は祝福されているのだと彼は考える。
「そろそろ着きますからー。時間無いから後ろの席にある服に着替えちゃってくださいねー」
「はい」
後部座席においてあるスーツというのだろうか。ウエイター風の服装に着替える。ネクタイは結べないので手伝って貰う。車の自動走行補正がかかって強めのブレーキが発生する。大分オーバーしていたのだろうと思う。
「よしよし、見たところ良い感じ。さぁ頑張ってくださいねー」
背の高いビルの屋上発着場に綺麗に収まった。急降下の時には少しというか大分催すものがあったがこれもまた我慢する。我慢しようとするの中だけれども、彼はやっぱり乗り物酔いで口の中まで酸っぱいものが染み渡ってくる。
「着きましたー。頑張ってくださいねー」
「アっ、ハイっ」
「大丈夫ですかー声裏返ってますよー」
「え。えーっと、大丈夫です」
車から出るとクラクラはやはり収まらず更に輪をかけてクラクラしてきた。高い。高過ぎる。ある種の無礼という言葉が相応しいほどの高さの建築物。人間はこれほどの構造物を寸分違わず作成可能なのだと自己の価値の成果だと言わしめんばかりの高さ。ここまで高い上空に生息可能な生物はここらへんでは見ないだろう。絶対生存境界を突破しても尚も人間は生きる事が出来る。彼は自分の価値観がもしかして古臭いものなのかもしれないと感じた。何故なら、この建物よりも尚も高い建物は周囲を見回しただけで七つ。星ぼしは息を潜め、淀んだ人工ガスが雲に似て反射する太陽の光を遮っている。
「中に入っちゃえばどうとでもないから大丈夫ですよー、ここは少し酸素が薄いですからねー」
「はい…」
駐車場の出口らしい場所から一人のお姉さんがやってきたのが見える。手を振っているようだ。
「早く早く!今忙しいんだから!着替えは良いわね。オーケー、こちらは大丈夫、後は任せて」
「はーいー宜しくお願いしますねー、ちなみに彼は初めてのお仕事ですので簡単な説明もお願いしますー」
そして車は去ってゆく。彼はどうやら上司になるらしい女性の顔を見た。凛々しい顔立ちだ。ウエイトレスさんなのだろう、バリバリ仕事をこなせそうな感じだ。
「ハイ!君!飲み物持つ、飲み物運ぶ、飲み物渡す、飲み物持つ、繰り返す!以上!たまに変なお客さんいるけど適当にあしらったりする!分かった?大丈夫?」
「はい、大丈夫です…、やったこと無いけど頑張ります!」
「よしよし、大丈夫、ガッツだぞ!がんばれ」
駐車場から建物の中に入る。駐車場に停まっている車から判断するに見当はついていたが、やはりというかなんというか、大分高級な、いわゆる上流階級層にあたるだろう。貴族市民だ。第七猫目石と大理石で組み立て上げられたモザイク柄が内部の壁に編みこまれている。外と中を繋ぐ扉の下にはエレベーターまでスカーレットカーペットが敷かれている。彼はドキドキする。さっきまでの乗り物酔いはもう忘れていた。紅の絨毯が敷かれたエレベーターの裏手に回って貨物運搬用のエレベーターに乗り込む。
「一応、確認。お客様に失礼のないように。そこはお願いね。身だしなみには気をつけて。いいわね?」
エレベーターの中の鏡で身だしなみを最終チェックする。
「はい!大丈夫です!」
「よしよし。一応ルール言っておくか。エレベーターはお客さんのを使わないようにしてね。こっちのを使うように。貨物用エレベーターを使う。移動の際の注意事項ね」
「はい!」
「まー君はこっちのが良さげよね。裏声も直ってきてるし大丈夫。ちなみにあっちのエレベーターはこっちみたいに鏡の代わりに全面ガラス細工で出来てるから。迫力有って吐いちゃうかもね~」
「うッ…」
「ごめんごめん。ってか君さー。まぁいいや。はいお仕事がんばりましょー」
エレベーターが開くとそこは、忙しく回っているように彼らと似た服装をしている従業員でごった返していた。腕と手のひらで器用に五枚、もう片手合わせて十枚も料理を運ぶ人に、重そうなビールがぎっしりと入った箱をのっしりと運んでいる人、優雅におぼんにワイングラスを載せて早歩きをしている人、様々な人たちが居た。
「はい君こっち!」
「はい!」
そんな湯だった忙しい人たちを掻き分け、進んでいく。進んだ先にはワインが注いであるグラスが山のように置かれている部屋へと着いた。
「はい君これ持って、これ持ってゴー!えーっとあそこ、あそこのお客さんね」
「えーっとハイ!!」
ワイングラスが置かれた場所の横には監視カメラがついていた。画面は分割されており、死角がないように映されていた。分割された画面の下には小さく番号が割り振られていた。
「Aの4の2ね。はい、一緒に行きましょー!ゴーゴー!」
「はいー」
言われるまま彼はワインを載せたおぼんを持って進んでゆく。自分の足じゃないように、まるで自分の目じゃないように、自分の意識がまるでテレビを見ているように進んでいた。目まぐるしい展開に、意識と理解が追いついていなかった。
「聞いてる?」
ハっとなった。
「え。えっと。聞いてます!」
「えっとね、あそこ。あそこに見える人居るでしょ」
何時の間にか、ここはどこだろうと考える。気付いたら室内が暗く優雅なクラシック長の音楽で奏でられる大きな部屋に来ていた。外国製のリッチな香が薄い緑のスモッグに乗っている。天涯魔境に来てしまったような感じを彼は受けた。
「あそこ。あの初老のお客さんに失礼の無いように渡してきてね。普通のウエイターな感じでいいから。ガンバレー」
「はい!」
生唾を飲んで向かう。少し手が震える。緊張している。
「しっ失礼します」
ワイングラスをテーブルに置く。にっかり笑う。退散する。
「君。ちょっといいかな」
「はっハイぃっ!」
退散できなかった。
「ふむ。君は初日だな。未成年か。…今日決心した。…何を?」
「は。…はぁ…?え、えっとぅ」
「家出か。ふむ。…ほぉ。これはこれは。ふむふむ。なるほど。ふむふむ…」
彼は一人で勝手に納得して頷いている白髪混じりの初老の紳士を見た。読心術だと彼は気付いた。思わずどきりとする。年季が違うと感じてしまう。
「君、良かったら771号室のアニータに料理を運んでくれないか?料理は…ふむ。君。右手を出しなさい」
言われるまま右手を出す。
「?君、電子端末が故障しているぞ。注文が出来ないな…まぁいい。君、記憶力は?」
「あ、えっと、悪い方であります!」
思わずそんな言葉遣いをしてしまう。多分アニメのせいだと彼は思った。思ったがこの時このミスを気付かないままだった。後々思い出す事になる。
「そうか。それなら、コース料理を頼むとするか。エスエスをビターを頼むよ。君はこれから裏手に回ってエスエスのビターをコックに注文してくれ。そうだな。キャビアとマイマイと納豆は抜いてもらってくれ。いいかな?キャビアとマイマイと納豆抜きだ。それを771号室に頼む。…不安だな」
そう言うと初老の男はテーブルに備え付けられているナプキンを取ると高そうな羽ペンで綺麗な流れ文字を書き留めた。
「これだ。頼むよ。あと、そうだな。娘の頼みは聞いてやってくれ」
そしてポケットから一枚のカードを取り出して僕に渡す。
「頼んだよ。以上だ」
「は、はいっ、ありがとうございます!」
後ずさり、後ずさり、一礼、退散、退散、退却が完了し裏手に回ってナプキンを確認する。
「綺麗に書かれてるなぁ。あの人を見つけないと…。う」
裏手に回ると知らない人たちばかりだった。当然だが見つけられそうになかった。ナプキンをよくよく見てみると指示が書いてあった。厨房へ行ってと書かれている。そしてコックにコース料理と料理に入れない食材を伝えるのだとも書かれていた。
「う。なんて親切なんだ…えーっと、とりあえず階下に行って…う。どこだろ…あ!すみません!料理注文受けて厨房へ行きたいんですけど、どこへ行けばいいでしょうか?」
手近なお兄さんに聞いてみる。スキンヘッドだ。なんだか怖そうだ。眉毛が無かったら絶対に物をたずねたりはしなかったろうと彼は思う。思うが親切そうな顔を持っているとも思った。
「えーっと。そうだね。そこの通路を右に曲がってそのまま直進、左手に運搬用のエレベーターがあるからそこを使ってね。地下二階だから。料理の注文なら料理の受付に言えばいいよ」
「ありがとうございます!」
教えてくれた通りにエレベーターに乗り込み階下に赴く。深い溜息が出たのは人生で初めて動かした神経と脳の副作用だろう。戦々恐々は未だに続いていた。それでも気を引き締め、エレベーターから出ていく。出て行った先はホテルのような清潔感のある通路だった。でもなんだか様々な食材、酒の匂いが濃厚に交じり合っている匂いがする。明かりを辿って適当な見当をつけて進むと大きな厨房に出た。
「すいません、料理のオーダーってここで大丈夫ですか?」
「あーはいはい、大丈夫だよ。何かな」
和服姿の似合う年季の入った女将さんのような人が居た。思い切ってたずねてみて正解だった。
「えーっとエスエスのビターでキャビアとマイマイと納豆抜きでお願いします」
ナプキンに記載されているオーダーを読み上げる。
「あーはいはい。出来てますよ」
そこでニヤリと意味深な笑みを浮かべているのが見えてしまった。出来上がっているならラッキーだ。もしかしたら常連さんかもしれない。料理を冷やすのはもってのほかだ。受け取った料理がすぐに出てくる。…ドリアと刺身と…牛丼?どの料理も一品料理にしては小さめの器に入っている。
「ここのお客さんは何時も同じの頼むからねぇ…」
「そうなんですか」
受け渡しながら言ってくれる。
「それと、ここの届け先はスイートだろう?貨物用のエレベーターじゃ停まらんからあっちの」
そう言って指を指し示してくれる。
「お客様用のエレベーターを使っておくれ。771号室は100階の右手。頼んだよ」
「はい!」
ルームサービスでよく見かける台車に料理を載せる。取っ手を持って押す。軽い!凄く軽い。すいすいと進み業務用のバックヤードの通路を抜けると、そこは豪華ホテルの通路だった。先ず第一印象が明るい。そして鼻がひくひくする程の微かな、ほんの微かなゴールドシナリアの香り。ありったけの清潔感の有る通路には印象派の絵画で統一され飾られていた。ぐんぐんと進むとやがてエレベーターを発見し中に入る。
「こんばんわ」
「こ、こんばんはっ!」
一見するとエレベーターの中は空に見えて実は台車の影に女の子が居た。驚く。危ない。危なかった。
「すいません!」
「どうぞおかまいなく」
肩にかかってる金髪のウェーブが見えた。イントネーションが僅かに異なってる。外国人なのだろうと思う。それにしても外国人なのに国語を勉強しているなぁと思わず感心する。ボタンを見ると行き先の数字が既に記載されている。101と表示されているので、100と番号を打ち込む。
「…」
エレベーターの中、なんだか緊張する。やっと気が抜けれるのだと思った矢先にお客様と同乗。複雑な気分に思うがこの勉強なのだと言い聞かせる。
「…」
『認証中……確認しました。いってらっしゃいませ』
そして扉が開く。『ども~っ!』と頭を下げて進んでゆく。…暗い。通路が先ず暗い。
「なんだかちょっと怖いなぁ。おっかないなぁ」
そんな独り言を言ってしまう。事実このフロアは先のフロアよりも大分冷えていたのだ。むしろ冷たいと言い換えれる事もできるほどである。
「…なんか不気味」
壁に掛かっている絵画が先の光を多く取り込む印象派の画家から暗い湿っぽい、時折奇妙な絵画がかけられている。いや奇妙というよりも、終末的な、或いは退廃的な…。
「ベクシンスキーのタッチに似ているけど……まさかね」
進んでゆく。丁度突き当たりの部屋だった。
「771号室っと。ここだ。ぴんぽんぴんぽんっ…」
チャイムを押して少しするとロックが外れる音がする。そしてか細い声で『どうぞ』と聞こえた。
「失礼します!お食事を…うッぉ。おお持ち致しました…!」
妙な部屋だった。暗いというよりも冥(くら)い。おそらくスイートだ。御馴染の豪華スイートだ。誰にでも一見してそれと解るだろう。しかしこれは、ここは、ナニカが違った。ここだけ異世界と繋がった通路のような、奇妙な感じがした。
「どうぞ。こちらへ持ってきて」
か細い声女の人の声を聞き、そのまま台車を押す。今解った。まるで血の匂いのような変な匂いだ。近づきたくないような。本能が警鐘を鳴らすような。根源的に近づいていけない。これは…まるで。
「はい、失礼致します」
やせ細った女性がベッドで横になっていた。ハードカバーの本を持つ手が極端に痩せていた。少しだけちらりと興味本位で見る。彼はひょっとしたら自分と同じような年頃なのだと思った。美しい。あまり美的感覚が反応しないセンサーを持つ彼が、ここに来て反応した。まるで病的な美しさだった。あまり見てはいけない類の美しさだ。
「今時間は良いかな」
おそらく、今現在時間を取れるのかという言い回しなのだろうと思った。
「大丈夫ですよ~」
「そ。手間を取らせるけど食べさせてくれないかしら?」
「え。え~っと」
彼は、思ったことを言った。
「それって『食べさせてくれないかしら』って主語抜けちゃってますよぉ~!まるで僕自身を食べていいかって聞いてるみたいじゃないですか~」
そして彼は、自分の脳みそがこの上無く恐慌(パニック)に陥っている事を言った後に自覚した。
「す、すみません、冗談です!えっと、アルバイト初日なもんでちょっと緊張しちゃってて…あはは……すいません…」
そして彼女は少し笑った。
「まさか。そもそも食べるつもりならわざわざ食べさせてくれないかしらって言わないでしょう?重大な犯罪行為に犠牲者に同意を求めるなんて。あなた、オカルト好きでしょう?」
思わぬ話題に思わず食いついてしまう。
「ですです!幽霊とか宇宙人とか怪獣とか吸血鬼とか、それになんといっても怖い話が好きなんですよ!ジュン爺なんて大ファンですね!」
それを聞いてややドン引きのような顔をされる。
「す、すみません…」
「いやいいのよ。でも、どうして好きなの?」
これは語らなければいけないだろう。
「浪漫があるじゃないですか!だって考えてみてくださいよ?この世界ってデッカイじゃないですか。僕自身の想像するよりも遥かに。人の数だけ夢があって人生があって、とてつもないナニカ。目に見えないナニカ。胸がドキドキしてしまうような冒険に、誰だって好きにならずにはいられませんよ!」
「あなた、声が少し大きい」
「すみません…」
「まぁいいっか。なるほど。でも、そんなものが世界に存在するって本当に思ってるの?一緒の、この世界に?」
「そう信じたいですね…」
「じゃあ、例えば私がもし、人を食べる化け物なら。あなた。死ぬわよ?そんな世界を望んでるのかしら」
「え。いや。そういうのはちょっと…もうちょっとポジティブな感じでいきましょうよ…それは暗すぎます…」
「へぇ。じゃあどんなのがいいの?」
「そうですね。小さい頃によく思ってた事なんですけど」
「はい」
「突然、超能力が使えるようになるんです。アメコミの世界みたいな感じです。そして世界を救ってモテモテになって幸せに暮らすんです」
彼は自分で思考ができない事に気付いてなかった。
「へぇ。でも。それじゃあ。アメコミみたいに悪役に蹂躙される人々が居る世界を望むわけ?」
「う、うーん。そういう事を言われると見も蓋も無い話になっちゃいますけどね。そうだ!冒険ものですよ。世界には誰も見たことも無い風景の場所があって、誰も触ったことの無い芸術品があって、誰も食べたことが無い美味しい料理があるんです。そういう前人未到を求めての大冒険とか!」
「ふ~ん。お金は?」
「ぅ。夢の話じゃないですか!」
「でも、お金が無いと実現できない。具体的で明確な手段が無いと、目的は達成されないわよ」
「はぁ」
彼は落胆した。
「ちょっと!なにその態度?」
彼女は怒ったように口調を荒げた。
「いや。分からないなら分からないで結構です。でも。分かって欲しい」
「私にはまるで、あなたがある種の高い位置に居て、そこからまるで見下すように私を見るのが気に食わないわね」
「それは事実です」
ここではっとなって気付いた。口が動きすぎていることに。気付いても口の動きは止まらなかった。
「例えば高等数学を理解している大学の教授が、理解できない学生に対して溜息をつくような感じですね。サブカルチャーに対する理解を示していないあなたは、ハッキリ言って人生損してます。クラシックしか聴かない人間が『音楽は最高だっ!』とか言っちゃうぐらい片腹が痛いですね。いいじゃないですか。ロックもアニソンもテクノもクラシックもワールドミュージックでノーボーダーやって初めて『音楽は素晴らしいっ!』ってなるわけですよ。言葉の幅が違うんですね。音楽の意味そのものが。別にクラシックはクラシックでかまわないですよ。でも、同じ曲の同じ作者のばっかり繰り返し何度も聴いてももったいないって話ですよ。ちょっとだけ目線を変えると、大きな違いを発見しちゃうんです。そういうのですね。常に音楽という文化に対して貪欲に取り組んでいる人間に対して、一つの側面からだけの言葉だなんて。とっても軽々しいと思うのです。でも最近思うんですよ。アニソンの良さっていうのは、例えばアニメのオープニングを見てから素晴らしい!ってなるじゃないですか。で、その時ってオープニングであるアニメも流れるわけじゃないですか。やたらかっこいい映像が流れちゃうわけです。で、ですよ。その音楽が素敵だ!かっこいい!ってなるのは当然で、曲が流れてる間は当然ながらアニメ映像が頭の中で流れるわけなのです。つまり!!アニメ補正ってのもあったんですよ!そうです。その音楽には音楽だけじゃない映像もまた脳内の刷り込みによって再生されるんです!分かるでしょう?つまり、他人に、このアニソン良いよね~とか言って、普段アニメを観ない人は勿論、そのオープニングを見てない人にはそのアニソンの本質が理解出来ないのもまた当然至極なのです!分かりますか?分かってくれますか?」
「…」
「…」
「つまり、言いたい事は。思い出の補正によって、聴力のみで感じる音以上に刺激を受けてしまう。クリスマスに思い出の有る者はクリスマスソングに特別な思いを寄せるように、ということかしら」
「そうです!その通りなんです!!ちなみに話を戻しますけど、そういう夢とかさっき言ったアレとかは大体漫画とかアニメとかの影響ですね。ナイスな相棒が居て、かわいいヒロインが居て、理想的な上司が居る、いわゆるお約束ですね。だから、そうですね。つまり端的に言えば、そういう超常現象的なものが好きなんじゃなくって、過程が好きってことなんでしょうかね?ラブストーリーが過程を描いてるように。お化けや宇宙人や吸血鬼や地底人が好きなんじゃなくって、過程の物語が好きってこと…ですかね。納得して頂けたら幸いです」
「成る程。…なるほどね。あなたおもしろいね」
「あ、ありがとうございます…あっ。えっと。すいません!お食事冷めてしまいますね…」
「いや。もういいわ。お腹いっぱいなの。実は…だから、もう食器を下げて頂戴」
「え?あ。そうなんですか…分かりました」
そして自分がもうここに用も無いのに居る事に気付いた。
「それでは…」
「ねぇ」
「はぃ?」
「あなたおもしろいわ。本当に。実に。良かったら今度ゆっくりしたいわ。ケータイの番号を教えてもらっていいかしら」
「すいません。今ケータイ止まってて…」
「その嘘本当?」
「実は今日、家出して…止められちゃったみたいなんですよね……」
そして少し笑われた。ちょっとむっとしてしまう。あまり笑って欲しくないデリケートな問題だからだ。多分この世界で上から七番目ぐらいのデリケートな問題なのだと思う。
「何が原因なの?」
「…イロイロですね。お父さんは家業を継げって言うし、お母さんはヒステリーが激しくなってきてるし、妹は僕へのディスが止まらなくなってきたり…」
「最悪ね」
「ええ。ほんと最悪です…」
そして更に笑われる。お客の前だというのに溜息すらついてしまった。というよりもお客様という事や立場の違い、むしろ仕事中なのだと忘れていた。
「久々に笑った…。もういいわ。あなた、行きなさい。ありがとう。チップは出口の棚に置いてあるから」
「はい、こちらこそありがとうございました。なんか、久しぶりに熱く語れたらスッキリしました。なんか長々と語っちゃってすみません…」
「いいの。それでは」
「はい、失礼致します!」
気持ち良く部屋を出た。出た後に気付いた。チップが置いてある事を忘れていた。思わずドアノブに手をかけた。しかしドアノブはピクリとも動かなかった。
「ま。いっか。なんか、溜め込んでたことやちょっとヲタな事を喋っちゃって気分良いなぁ」
そしてルンルン気分で薄暗い通路を進んでエレベーターに乗り込み、そのまま大きな厨房へと台車と料理を返しに行く。厨房に着いて女将さんに渡すと驚かれる。
「料理、なんか全然食べてないみたいで勿体無いですよねぇ~」
「ぇぇ、ぇぇ。そうですねぇ。美味しいのに…」
時計を見ると、約束だった二時間は既に過ぎていた。
「あ」
「あ!居た居た!生きてるならケータイぐらい出てよね~全く」
お姉さんが居た。
「すみません…ケータイ止められたみたいで…」
「まぁいいわ。どの道ワケ有りだもんね。はいっ!お仕事終了!帰ってヨシっ!そーいや君、君の洋服は?」
「あ。ああああ…車の中に忘れてた…」
「まぁいいわ。明日、事務所に取りに行けば。お金はもう貰ってるんだったよね?」
「え。はぃ…」
「じゃー、ヨシ!残業代がちょっと出ちゃう時間帯になっちゃったけど、ほら。うちってブラックだから」
そういってワハハハと豪快に笑い飛ばされる。貰えるものなら貰っておきたいが、いや。もう既に貰っているのだ。彼の財布の中には、一万円札が三枚も入っているのだ。そして着替えを終えて番号を貰った元声優の事務員さんにケータイで連絡してもらう。やはり明日の事務所で、ということになった。この格好も全然おかしい服装ではないからと彼も全く気にしなかった。『お疲れ様』というとホテルを後にして、別々の道へと帰路に帰る。近場のネカフェも教えてらった。
「はぁ…人生なんとかなるもんだな。さーってっと。ネットカフェー。の前に、ナニカ飲み物…結構歩くって言ってたし勿体無くなんか決して無い!コーラ!やっぱりコーラだね!」
そして自販機に立ち止まり、財布を開く。
「フフ。一万円札。一万円札が。ふふっ。…あれ?」
一万円札が、一枚増えてた。
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