有限無限のキーホルダー

紅乃紅太

プロローグ

エネルギー問題を抱えた世界。核エネルギーの運用面や安全面が問題視され新たなエネルギー開発の研究が盛んになっていた時代、とある学者は言った。


『世界は様々なエネルギーに満ち溢れている。我々はただそれらを取り出す術を持っていないだけなのだ』


学者がそう発表すると机上の空論だ、妄想癖か何かか? と人々は嘲笑った。

それでも学者は議論の場を設け、時には野次を飛ばされたり、時にはインクやペンなどを飛ばされたりもした。

 あるとき、パタリと学者の姿が見られなくなった。人々は口々に言う。やはり夢お伽話であったのだ。と、学者は妄想のしすぎで現実に戻れなくなったのだ。と、好き勝手に言っていた。だが学者は戻ってきた。


『私は見付けた。可能性の【鍵】を!!』


 再び壇上に現れた学者は古いアンティークのような鍵を皆に見せつけた。

 何も変哲のない鍵を見せつけられた人達は学者のことをとうとう狂ってしまったのだと残念そうな目で見ていた。

 だが、学者が鍵穴を開けるように捻ると、そこから無数の電撃が生まれた。

 それを見た者たちは驚き慌て中には椅子から転げ落ちるものや叫び始める人達もいた。

 これが【鍵】時代の始まりであった。

【鍵】の存在が認められると、急速に普及するように【鍵】が視えると言う人達が増え始めた。だが、それは人類からしてみれば極一部の人でしかなかった。そういう【鍵】が視え尚且つ扱える存在を『鍵保持者キーホルダー』と呼んだ。

 鍵保持者達のおかげで【鍵】の研究は進み、社会的に認められ一般家庭でも使えるような『簡易式一般鍵インスタントキー』といった電気や火、水回りなど生活には無くてはならない【鍵】も開発された。

 その一方で、鍵保持者キーホルダー達を誘拐し【鍵】から得られるエネルギーを我が物にしようとする犯罪組織や、逆に鍵保持者達からなる犯罪組織や鍵保持者を捕らえ差別的な扱いをする人達なども居た。

 そういった人達から守るために鍵保持者の保護活動をする人達や、鍵保持者自身が身を守る方法を学べる場所、社会的に貢献できる場所なども提供されるようになり辛うじて世界は平和を保っていた。

 だが、学者は考えた。

 【鍵】というものがあるのならば、全てを開けることの出来る『マスターキー』なるものがあるのではないのだろうか? もしあるとするなら、世界はどうなってしまうのだろうか? 人々はどうなってしまうのだろうか? 


願うなら、その【鍵】を持った持ち主が正しく判断出来ることを。 

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