世界の中心で、賽を投げる

大葉感(オバカン)

第1話と私と僕と

隣で眠っているこの人と、生涯を共にしたい。子供を産み育てて、孫を抱く。どちらかが先に死ぬだろうけど、残されるものに見送られて、そっと目を閉じる。残されたものは、二人の記憶を思い返しながら生きて、やっぱり死んでいく。そんな当たり前の人生を、この人と過ごしたいと思う。



隆がオールドファッションのドーナツを頬張りながらベッドに乗ってきた。キスの前に脂っこいものを食べられるのは嫌だ。隆はこのごろ太ってきているから、糖質の塊を、古く、酸化した油で揚げたにきまっているコンビニのドーナツなど、食べて欲しくない。セックスの前に清子はだいたい何らかの不満を抱えている。というか、清子が不満げな顔をしていると隆がセックスに誘うのだ。部屋ではいつもスウェット姿の清子に対して、隆はいつもお気に入りのパターンで、「はいはい、じゃ、ばんざーい」といって手を上げさせて、じょうずに服を脱がせる。下着になるだけで少し機嫌が直っている。服を脱がされるだけで、大切に扱われていることを実感する。今日もやはりそんな流れがあったあとに、隆は冷蔵庫で冷やしていたドーナツを取りに行き、キスとクンニリングスの前だというのに、構うことなしに、おいしそうに食べている。


清子の寝室は八畳ほどで、隆の部屋よりも広い。クローゼットに異常なほどぎちぎちに詰まったワードローブが入っている以外は、インテリアに気を配った小洒落た部屋のつくりになっている。スノードームが好きで本棚に飾ってある。ときどきひっくり返して楽しんでいる。スノードーム博物館で自作した、映画に出てくる生物のミニチュアを中心に据えたスノードームは、作りは安っぽいが自慢の作品だ。


隆の部屋の説明は止そう。たまに清子の介入が入るからまだいいのもの、目につくものを挙げるだけでも、この小説の著者が考える「みっともないもの」の集合体だ。つまり隆についてはまだあまりキャラクターを具体的に考えていないのだ。


この小説は、自分の部屋にお互いを招待してセックスするという習慣を持ったカップルが、どちらかからプロポーズし、それが成功して婚約となり結婚に向かうところまでを、ピロートークを基本として進めていきたいと思う。作者にピロートークの経験が少ないあたりは、村上春樹の小説の会話でも思い浮かべながら書いていきたい。もしよければ僕の暇つぶしに付き合ってください。

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世界の中心で、賽を投げる 大葉感(オバカン) @obacan

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