【佐竹茉璃】

放課後、友だちとカラオケを満喫して帰った茉璃を待っていたのは、真っ暗な自宅。


「ただいまー。お母さん?いないの?」


返事がない。

いつもなら、夕飯を作っているはず。不思議に思いながらも、リビングに向かう。そこには、矢張誰もいない。

父親は出張であまり帰ってこないから、二人で生活している。


メールを確認しても母からの受信はない。試しに掛けてみても、繋がらない。

急に不安になった。いつもいるはずの母がいない。それだけで、非日常に感じられた。


真っ暗なリビングにいながら、明かりをつけ忘れていることすら、忘れていた。スマホの明かりが、ぼんやりと部屋を照らしている。


ふと、その明かりで浮かぶ、テーブルの上。そこには、赤い封筒だけが置かれていた。


「なにこれ……。」


『佐竹茉璃様』


ただ一文、赤い封筒に太く黒い、デジタル文字。


「あたし宛て?」


不気味に思いながら、手に取った。今更、暗いことに気がつく。


「取り敢えず、部屋にいこう。」


自分の部屋に向かい、明かりをつけた。変わらない部屋にホッと一息つくが、手には赤い封筒。

ベッドに腰掛け、恐る恐る開けてみる。封はされていない。


中には、一枚の白い便箋が半分に折り畳まれていた。






『佐竹茉璃様


時は来ました。お迎えに上がります。』






ただそれだけ、書かれていた…………。

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