夏生とあの場所で

ピノ

プール

一緒に行く予約


「小学校最後の夏休みは楽しかった?」

僕はお母さんに聞いた。

「そんなん覚えてへんわぁ」「おつかれさん」



少し落胆した顔で僕はとてつもなく重いランリュックを下ろす僕。

僕の地区はランドセルというものがなく学校指定の黄色いリュックを背負って登下校していた。関西限定のものらしい。


一学期が終わり学校に置いてある物をすべて持ち帰らなくてはいけないため下校がとても憂鬱だった。

さすがに植木鉢やピアニカなどは小6となれば持って帰らない。






りんごジュースを一杯飲んでから自分の部屋に向かって夏休みの計画に目を通した。



予定は未定だらけで確定しているイベントは地区の清掃と親戚同士のBBQのみ。ナガシマスパーランドさえも日時は未定。


そして土日の欄は急いだ字でサッカー、サッカーサッカー...。

僕はサッカーを習っていて土日が潰れることもあらかじめ把握してた。正直行きたくなかったのは本音・・・。




でもその分楽しまなくちゃ!夏休みは作り上げるもんだ!そう思いながら心を弾ませ、夏休み約40日間のハッピーシナリオを妄想していた。




僕はひと休憩してからおじいちゃんの車で近所のファミレスに向ったのだが。帰り道車内で盛大に吐いたのは秘密。


小学生最後の夏休みが始まる。





7月21日

午前10時くらいに電話がかかってきた。


電話の相手は僕の幼なじみで美人の夏生(ナツキ)


・・・・・では無く

その夏生のお母さんだった。


夏祭りの出し物が決まったので連絡網で回してくれとのこと。




体は少しふわっとしていて背は164cmくらいの安産体型。とてもエネルギッシュな人でよく喋る。


幼稚園の送り迎えもうちのお母さんと交互に担当し、よく車内で夏生とおしゃべりした思い出がある。後部シートで吐いたこともある。(ベンツa180)


「しょうちゃんどうしたん?」「夏生今ピアノ行ってるわ~ごめんなぁまた来たってなぁ」自転車をキコキコ漕ぎながら夏生の家遊びに行くといつもこんなかんじの口調で出迎えてくれる。



夏祭りの出し物の件と少し学校の話や料理の話などをした。料理の話はほぼ一方的な喋りかけで自分は聞いてるだけだった。




夏生の両親は小さな不動産屋をやっていてお父さんもよく喋る。

まるでサ●エさんの花澤さんみたいな家族である。

ただ僕はカ●ヲくんと違ってごく普通の平凡家庭だし一人っ子だしお父さんも禿げてない。




そんなことを考えてるうちに再度電話がかかってきた。びっくりしたけど電話の相手はさっきと同じ声がした。


「言い忘れたんやけど、明日の地区プール夏生と一緒に行ったってくれへん?」



地区プールと言うのは夏休み中に学校のプールを自由に利用できるシステムで

大体夏休み中に4回程度有る。

ただし全校生徒が一斉に学校のプールに入るのは到底無理なので地区ごとに分割した割り当てがある。夏生とは同地区だし6年間同じ日にプールに入ってた。


ただあいつはいつも女子同士と一緒に集まって学校に行ってたのに・・・。いきなりどうしたんだろう。


とりあえず電話で返事をして少し疑問符を残しながら電話を切った。さすがに3度目はかかって来なかった。



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