みゃーことクロと野良猫と
青田時亜
第1話
二限の終わりを告げるチャイムが、大学中に響きわたると、学生のとる行動は大体二つに分かれる。一つは、その時に居合わせた友人と共に飯を食べる。よく見る大学生の図だ。もう一つは、ボッチで昼食を食べる、いわゆる「ボッチ飯」というやつだ。こっちもよく見る大学生の図である。
食堂にいようと、コンビニで買ったものを食べようと、大学生の昼食のとり方は高校の時と何ら変わらない、集団で食事を好む者もいれば、そうでない者もいる。
このように大学生の昼食のとり方につて評価している俺はというと、残念ながらどちらにも該当しているようで該当していない。
なに?ややこしいだって?しかたないだろ、俺だって、この現状にやっと慣れ始めたのだから、そう思うのも無理はない。
そんな二つの部類に分けることのできない俺の昼食のとり方はこうだ。まず学内の購買に行く。そして適当な昼飯をチョイスする(多くはパン系)。お気に入りのコーヒー牛乳も忘れずに買う。こまでは大体のボッチ飯とおんなじだ。
ここからがらしい少し違う。
さらに俺レジの前のタイ焼きを二匹買う。他の大学には購買にタイ焼きは売っていないらしい。この大学の購買だけなのか、タイ焼き売ってるの。
そして、食堂のすぐ近くにある体育館裏まで行く。
体育館の裏に着いたら、タイ焼きを見せながらこういうのだ。
「ほらみゃーこ、昼飯だぞ。」
すると
「・・だからみゃーこじゃない、ミヤコ。何回言えばわかるの、クロ?」
とけだるげな声で、猫耳フードの女の子が大学にすみついてる野良猫を撫でながら答えるのだ。
「お前が俺をクロと呼ぶ限り、俺はみゃーこと呼び続ける。」
「はいはい。」
「あ、そういうこと言う?じゃあこのタイ焼き、全部俺が食おっと。」
「またクロがいじめてくるよ。ひどいねえ。」
猫にそう話しかけている。
これが俺の昼の日常。
猫耳フードの女と野良猫と飯をほおばりながら昼を過ごす。
な?なかなかに理解しがたいだろ?
「早く手、洗って来い。」
「はいはーい」
そう言って、みゃーこはトイレに行った。
みゃーこがトイレから帰ってきて
「「いただきます!!」」
「にゃー!」
俺が、みゃーこが、野良猫が、一緒に昼飯を食い始める。
「・・いつも思うんだけどさ。」
「なに?」
「なんでいつも眠そうなんだ?」
「寝起きだから。」
「あーなるほど・・じゃねーよ。お前今日、一限と二限、語学だっただろ?」
「何で知ってるの?ストーカー?」
「ちげーよ。学部問わず文系は水曜日の午前中は語学なんだよ。」
「へーそうなんだ。」
全く興味がないようだ。
「授業の時間全部寝てるわけじゃないわよ。解説は聞いて、練習問題を先に説いてから寝てる。やることはやってから寝てるわ。」
えっへん、っていうセリフのふきだしが付きそうなポーズをしながら言ってのけた。
「そんなんで中間テストとか大丈夫なのか?」
「うちのクラス、他のクラスと違って、中間テストの代わりに毎回小テストがあるんだけど・・」
ごそごそと自分のリュックを漁っている。探しているものを見つけたようだ。
みゃーこが俺に見せてくれたのは、右上に一と○と○が赤字で書いてある、何枚かのプリントだった。まじかよ。超頭いいじゃん。
「ね!すごいでしょ?」
「いや、ホントにすごいな!」
そう言って、みゃーこの頭を猫耳フードごしになでなでする。まさに猫を撫でるように。
少々幼稚なことをしているが、みゃーこも喜んでいるし、まあいいのだろう。
ほんと、こいつ、なんとなく猫みたいなんだよな。猫耳フードを除いても。撫でで喜んでるらへんは犬かな?
そうこうしてると、三限開始まであと十分。ここから三限に行われる専門の授業の教室は少し遠い。なので早めに行動しないといけない。
「じゃあ、俺、行くわ。」
「うん、私も行く。」
みゃーこは野良猫にばいばい、と声をかけいる。
俺は右に、みゃーこは左に、猫は屋根に、それぞれの次のいくべき場所へ移動する。
これは、俺と猫耳フードの女の子と野良猫の、何気ないお昼休みのお話し。
みゃーことクロと野良猫と 青田時亜 @aotatoa02
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