カイリ
tkma
第1話
ある日、1人の男が死んだ。
男は金持ちだった。
家族と一生遊んで暮らして、まだ有り余るほどの金を稼いだ。
彼は世界中に別荘を持っていた。
故に、しかしながら彼に付いた二つ名は「夜の明けない男」だった。
「日の沈まない男」ではなく、「夜の明けない男」。
彼は死を何よりも、誰よりも恐れていた。
金を失うことより、愛する人を失うことより、家を失うことよりも、ずっとずっと死が怖かった。
そんな彼が42歳という若さで死んだのは、皮肉と言えよう。
その死因は、誰も知らない。
警察が死因をあえて明かさないのか、鑑定をもってしても分からないのか、死因は「変死」とだけ伝えられた。
彼には噂があった。
良い話とはとても言い難い噂である。
ー死ぬことを恐れた彼は、不老不死の薬を研究していたのではないかー
何よりも死を恐れる男だ、そんな噂が立っても不思議はない。
何より、男はとある製薬会社の社長だったことが、噂をより広める原因となった。
しかしながら不老不死の薬というのは、決まってろくでもない薬だというのはもはやお約束とも言えよう。
そして、この噂は真実だった。
彼は開発していたのだ。誰もが夢に見る、奇跡の万能薬を。
が、万能薬を夢見て、それが完成することはなかった。
これは、彼が死後に遺した、ある悲劇の話。
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