case1 公園の少年(case1-1)




鹿神:さぁ着いたよ、


竹田君!





竹田と鹿神は依頼人と


待ち合わせているという団地に来ていた




竹田:あの・・・鹿神さん、


ここで何を?





鹿神:まぁ仕事を見れば


すぐにわかるよ!





竹田:(いや・・・、今教えろよ・・・)




2人は団地の中に入り少し歩いていくとベンチが見え、


そこに誰かが座っていた







鹿神:お待たせしました!


はじめまして、



私イレンシ相談事務所の


鹿神と申します!





鹿神は何の確認もせずその男性に話しかけ


名刺を渡していた





男性:・・・あっ!


こちらこそはじめまして


私この団地で管理人をしている


田山(たやま)と申します





竹田はお互いが名刺を交換している所を見て


その人が依頼人だと改めて理解した







鹿神:ところで・・・


"出る"のは?




竹田:(・・・出る?)





田山:あぁ・・・、


こちらです





そう言うと田山はすぐ近くの


公園の側まで2人を案内した




鹿神:ここにいるんですね?





田山:えぇ、


ここです






竹田:(何が出るんだ?


タヌキか何かか?)





すると鹿神は







鹿神:とにかく中へ


入ってみましょう





鹿神はその公園の入り口がある方に


向かって行った





竹田も慌ててついて行った





鹿神:ほぅ、


これはまた・・・





鹿神は何かを発見したらしく、



竹田もその場所の異様な姿に目を疑った







そこには確かに公園の


入り口があるのだが、


入口は白いテープの様なもので


無数に縛られていて


中に入ることができなくなっていた





竹田:・・・何ですかこれ?





鹿神:・・・「封紙」





竹田:ふ・・・ふうしぃ?







鹿神:ここに


"ある"ものを閉じこめておく、


いわゆる檻みたいな物だよ





竹田:(・・・タヌキの為にこんな物を?)





鹿神:まぁこれは近くで術者が力を


送り込まない限り効力を発揮しないけどね






そう言って鹿神は


封紙に少し触れた





竹田:・・・術者?


何ですかそれ?







鹿神:それは本人に


聞いてみないといけないね


・・・ねぇお婆ちゃん?





鹿神は後ろを振り向きながら言った





その先にはベンチに座り


新聞を広げて読んでいる


和服姿の人物がいた





老婆:・・・誰じゃ?


わしをババア呼ばわりするのは?





すると突然しわがれた声が返ってきた







鹿神:突然申し訳ありません



私イレンシ相談所の


鹿神と申します




鹿神は足早に婆に


駆け寄り、


名刺を刺し出した





老婆:鹿神・・・?


変わった名前じゃな?


それにこの名刺・・・





鹿神:あっ、


わかっちゃいましたか、


流石ですね!





老婆:わしをなめすぎじゃ小僧!







鹿神:あの~、


何とかアレを


解いてくれませんかね?





老婆:・・・解いても良いが、


1つだけ条件がある





鹿神:条件?


何です?




老婆:あの結界、


お主が解いてみぃ!





鹿神:・・・へ?







老婆:あれはわしが"力"を


送らなければただの紙、


簡単に切れる



しかし力送っている間は


ある場所を除いて


まるで鉄板の様に堅くなる






鹿神:ある場所とは?





老婆:それをお主が探し出して


このハサミで切るんじゃよ!





鹿神:・・・わかりました!


それを切ることが出来れば


ここから退いて頂けるんですね?





老婆:それとついでに良いことを


教えてやるわい!





鹿神:それは楽しみですね!





鹿神は老婆から


ハサミを受け取り


"封紙"が張られている


公園の入り口まで戻ってきた





竹田:鹿神さん、


何を話してたんですか?





鹿神:まぁ、


世間話みたいなものかな





そう言うと鹿神は縦横無尽に


巻き付けられた封紙に手をかざした





竹田:???





鹿神の手は紙の周りを


行ったり来たり、


何かを探るかの様に動いていたが


その手が突然止まった





鹿神:ここだな・・・





何かを感じ取ったのか、


鹿神は手が止まった場所に


ハサミを差し込む





鹿神:・・・・・・・・・





神経を集中しているのか


鹿神は急に黙り込んだ





そして





ジョキッ!!






鹿神が持っていたハサミが


封紙を切る音がした





すると途端に封紙は


ただの紙の様にヘナヘナと


地面に崩れ落ちた





竹田:・・・あれ?


鹿神さん何をしたんですか?





鹿神:・・・ふぅ・・・、


お婆ちゃん出来ましたよ!





その様子を見ていた


老婆は特に驚く訳でも無く、


少し微笑んでいた





老婆:ふふっ・・・、


まぁこれくらい簡単に


やってもらわないとのぅ





老婆はゆっくりと立ち上がり、


鹿神に近づいてきた





老婆:・・・ほれっ



これがきっと役立つじゃろう





老婆は新聞の切り抜きの様な物を


2枚鹿神に渡してきた





鹿神:これは・・・?





老婆:それをよく調べてみてみぃ


何かがわかるかもしれんぞ





老婆はそう言うと、


切れて地面に落ちていた


封紙の所まで近づきしゃがんだ





そして老婆は和服の袖をまくり、


手のひらを封紙に近づけた瞬間





シュルルルルルーーー!!





竹田:な・・・何の音?





竹田の耳には突然何かが巻き取られる様な


音が聞こえてきた





それは老婆の腕に封紙が


巻きつく音だった





老婆:よっこらせ!





封紙が巻きついた腕の袖を


元に戻すと田山の方へ向いて





老婆:わしゃあこれで帰るが、


今日までの分は


ちゃんと貰うからのぉ!





田山:わ・・・わかりました


ちゃんと振り込んでおきます





老婆はその言葉を聞くと


再び鹿神の方に近づき





老婆:まぁ今回は


お前さんに任せても


大丈夫だと思うがのぅ・・・



一応これも渡しておくぞ





そう言ってもう一枚紙を


鹿神に渡した





鹿神:恩に着ます、


お婆ちゃん





老婆は少しまた笑い


そしてどこかへと去って行った





鹿神:さてと・・・、


田山さん!


これでやっと仕事に移れます!





田山:じ・・・じゃあ


お願いします!





鹿神:竹田君、


ちゃんと仕事見てよ?





竹田:は、はいっ!




鹿神はそそくさと公園に


入って行った




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