2-2
――その日の放課後。
僕たちは、東雲先生勧誘作戦をついに決行することになった。
満を持して、といっても、チャレンジ二日目だけど。
「あたしたちの目的は、ののちゃんを何としてでもラジオ部の顧問にすることだ。四人目を見つける前にやらなければならない、言わば分水嶺でもある。この機を逃すこと、それはあたしたちの廃部を意味すると思え」
「廃部っていうか、まだ同好会だから解散じゃないの?」
静巴先輩の冷静かつ的確なツッコミに、部長はすっぱそうに顔をしかめた。
本来、新たに部を設立するには、前期は五月末日までに生徒会へ届け出なければならない、という規則がある。
けれどその期日は当の昔に過ぎている。現在は六月だ。
この同好会が発足したのが一年前。僕が入部したのは今年の四月中旬。結局、四人目と顧問がいない時点で、部として成りえないんだけど。
それでも、部長は諦めが悪いというか、いい意味で言うなら負けず嫌いというか。やっぱり部として成立させたいっていう思いが、心根に強くあったんだと思う。
去年から諦めずに部員を探したり、彩華さんの弱みを握るために、賄賂を渡すみたいな真似までして延命措置をさせたり。
「まあそうだけどさ。でも、これが顧問を立てるラストチャンスかもしれない。もうひと月もしたら夏休みだし。そうなれば、後期に新たに部を作る連中だって出てくるだろうしね。しかもののちゃんだよ。生徒からも人気がある、きっと声もかかると思う」
「でも、いままで東雲先生が部活を受け持った、なんて話聞いたことないよ? 声がかかってるんなら、一度くらいはありそうな気もするし。断ってるって話も聞いたことあるよ」
「そこなんだよねー。なんでののちゃん誘いを断ってんのかなーって、あたしも気になってたんだけど。まあ、それはこれから直接対峙した時に聞けばいいのさ」
軽く言いながら、先に彩華さんを行かせた部長が、廊下の角からそっとその様子を窺う。壁を背にして目標を確認する姿は、まるで映画の女スパイみたいだ。
彩華さんはというと。東雲先生が職員室から出てきたところを、約束どおり話しかける体で足止めしていた。
なにを話しているかは声が小さいため、聞き取ることはできない。
ちなみに、彩華さんには作戦内容は話していない。話せばまた、「校則違反よ!」とかいって切符を切られかねないから。
……まあ、そんなものはないんだけど。
「しっかし、どうするかなー」
『えっ?』
部長のその一言に、僕と静巴先輩がそろって疑問を声に出す。
「なんだい君たち、その反応は?」
「それ、こっちのセリフ……」
「まさか部長、なにも考えてなかったんですか?」
「いや、足止めすることは考えたよ」
「そこだけッ!? 」
呆れて開いた口がふさがらない。
「ひめさんはしょうがない人ですね。普段は頼り甲斐のある人なんだけど……」
言いながら、よっこいしょと静巴先輩は重い腰を上げるかのようにして立ち上がった。
「先輩、どうするんですか?」
「私が先行して声かけてみるから、東雲先生の反応を見て、それからどうするか考えてね」
なるほど。本当に僕らが気づいてないと思っているのか、その確認の意味もこめて、もう一度ラジオ部のメンツで声をかけてみるのか。
それで表情から感情を読み取って、それから作戦を考え――ん?
「……いや、なんかいいアイデアかと思ったら、結局のところこっちに丸投げですよね?」
「ばれた?」
テヘッと可愛らしく舌を出す静巴先輩。こんな愛嬌のある表情も出来るのか。
いつもは髪を下ろしているのに、梅雨時期で湿気が煩わしいのか。今日はポニーテールにしていることも相まって、普段とはまた違った印象を受ける。
素直に、可愛いと思った。
「それでは行ってきます」
言うなり、静巴先輩は角を出て、悠然と彩華さんと東雲先生のもとへ。こんな時でも何事もないように落ち着いて行動できる沈着な性格。静巴先輩が先駆けでよかったと思う。
部長が屈んで下で覗いているため、僕は半身を開き気味にして上から窺った。
が――、
「ッ!? 」
歩いていく静巴先輩を素通りし、東雲先生の視線が真っ先に捉えたのは、明らかに僕だった。
げっ、と引きつったような顔をする東雲先生と目が合う。
それもそうだ。覗くのに夢中になりすぎて、体が角から大きくはみ出してしまっていたんだから。そりゃあ見つかって当たり前だ。
「あっ」
声を出した途端、東雲先生は踵を返し廊下を足早に駆けていく。
「ってくろすけ! なにしてんだよっ」
部長の怒声に突き上げられた。思わずビクついてしまう。
「すす、すみません!」
「くろすけ、ダッシュ!」
「は、はい!」
言われるがまま、僕は角から弾かれるように飛び出した。
追うために、走る。小動物を追う肉食獣がごとく。
静巴先輩と彩華さんの間をすり抜け、
「黒鳥君、廊下は走っちゃ――」
「勘弁してください!」
背中越しに弁解。
さすがに失態だ。あんな怪しげな行動を取ったら警戒されるのは当たり前だった。
失念していた。やっぱり気づいていたんだ東雲先生。
僕たちが、あの手紙の主を割り出したことに。
でもそれは、あの場から気づいてくれとでも言わんばかりにいなくなった先生の失敗で。
……気づくなと言うほうが無理な話だと思うんだけど。
前を走る東雲先生が廊下の角を曲がった。
「待ってください、東雲先生ー!」
僕も角を曲がり、その背中を追う。
「いやぁあああ、痴漢ー!」
「なっ、ちち、違います! 話を聞いてほしいだけなんです!」
「いぃやぁああああー」
あらぬ誤解を招きそうな悲鳴を上げながら、東雲先生はなおも疾走する。
視聴覚室、調理室、被服室。次々に通り過ぎていく各実習室。階段は三段を平然と飛ばして駆け上がっていく先生。僕も負けじと手すりを利用して追いかける。
百五十センチ(自称)と小柄ながら、どこにあんなスプリンターじみた脚力を保有しているのか。甚だ疑問だ。
いや、先生とそんなアスリート談義をしたいわけでなく。
しかし、距離が一向に縮まらない。廊下を歩く生徒を避けながらだと、余計にロスしている感は否めない。
「ちょい待てー、黒鳥ー」
げっ、あれは――。
前方にある存在感、威圧感。それは間違いなく、鬼だった。
廊下をとおせんぼする形で仁王立つのは、体育教師兼一年の学年主任で、水泳部の顧問でもある生徒指導の五十嵐香澄先生だ。
燃えるような長い赤髪にオオカミみたいなヘアスタイル。肉食獣のごとく目つきの鋭さを宿している。小麦色に焼けた健康的な肌。ぴっちりとした短いスパッツに、さらしの上にジャージを着崩したラフな格好で、これ見よがしに金棒ならぬ木刀を担いでいる。
鬼を前にして、走る足は次第に勢いをなくす。こうなってしまっては、僕が小動物だ。
ついにはそのまん前で、無防備にもその場駆け足するにいたった。
「なぁーに杏子の尻追いかけてるか」
「いや、これは誤解です、五十嵐先生!」
怒りを押さえ込む意味でも、僕は全力で否定する。
入学早々、一般的に不良と呼ばれるような悪童が、小一時間で態度を改めたという鬼の生徒指導だ。ちなみに彼はいま、なぜかブルマ好きをさわやかに公言するような変態になっている。
その話が広まって以降、極端にやんちゃな子はいなくなった。
さすがにその教鞭は請いたくない。
僕は、ドMじゃないから。
「杏子が痴漢って言いながら逃げてたろう。お前もハァハァしながら興奮してるじゃないか」
「違うんです、興奮してるんじゃなくて疲れてるだけです! 僕は東雲先生に悩みを聞いてほしくて――」
「そういうことなら私に任せとけ。思春期特有の悩みだろう? 私は体育教師だし、保健体育ならまさにお誂え向きだろう。非ヌキだが、簡単なコスプレぐらいならしてやってもいいぞ」
「ちょいちょいちょいー」
聖職者が目を輝かせてなにを言っているのか。それじゃただの性職者だ。学校は風俗じゃない。
聞く耳を持たないとはまさにこの事か。馬の耳ならぬ鬼の耳にも念仏だ。いや、鬼なら念仏くらい利きそうな気もするけど、この鬼はダメだ。異次元過ぎて桃太郎でも呼んでこないと話にならない。
五十嵐先生の後方をちらと覗き見る。
やっぱりもう東雲先生の後姿は見えなかった。
「ああ、部長になんて言おう……」
つい口から不平が漏れた。
それを思うと、今から憂鬱だ。
「それなら安心しろ。私があとでちゃんと説明してやるから――」
三十分。
五十嵐先生に弁明しつつ誘いを断るのに、僕が有した時間だ。
貴重な高校生活の半時を、こんなことで無駄にしていていいのだろうか。これからはこういった地雷をなるべく踏まないよう、今度マインスイーパーの練習をしよう、そうしよう。
開放された時には、もう空が黄昏ていた。
島流しにされるとかいう噂もある五十嵐先生の生徒指導。
途中、『そんなに尻を追いかけて興奮したいなら、私の尻を追いかければいい。スパッツに包まれた尻はいいもんだろう? エロさが増すと思うんだ。私は尻にも自信がある。なんなら競泳水着を着てもいいぞ。お前も興奮するだろう? そうすれば心臓だって鍛えられるし持久力だって身につくぞ。一石二鳥じゃないか、どうだ?』なんてあざとくもおかしな提案をされたけど、丁重にお断りした。
確かにエロいとは思う。鍛えられて引き締まった身体をしているけど、女性らしい丸みもしっかり備えている五十嵐先生。スパッツ姿に興奮する男子生徒は幾人もいる。さらしの下は凄いともっぱらの噂だ。プール開きにでもなったら授業どころではないかもしれない。ルックスだけならかなりいい線いっているだろう。
けど、素直に喜べない。自分の寿命を縮めてまで生徒指導は受けたくはない。いや、方面の申し出としては嬉しかったりするんだけど……。
そうしてその危機をなんとか潜り抜け、僕は東雲先生をいまだに探す静巴先輩と合流した。
「ひめさんも、どこに行ったんだろうね?」
「はぐれちゃったんですか?」
「くろすけ君が東雲先生を追いかけに行ってから、すぐだね」
「手分けして探します?」
「そうだね」そう返事した静巴先輩と、二手に分かれようとした時だった。
『ののちゃん、見っつけたー!』
外から声がした。快活な部長の声だ。
窓を開けて外を覗く。まず鼻腔をついたのは雨の匂いだ。梅雨時期独特の湿気に満ちた空気が肺へと流れ込んでくる。そして耳朶を打ったのは生徒の声。体育会系の部活動で忙しい音が、グラウンドや体育館から響いてくる。
階下を見ると、目と鼻の先。職員玄関のすぐ向こうにある教師専用の駐車場に、目的である部長と東雲先生の姿があった。
間一髪といったところだろうか。東雲先生の赤いスポーツカーの運転席側に部長が立ち、逃げられないようにしていた。
「ののちゃん、ついに追い詰めたよ」
「うっ……な、なにか用でもあるです?」
明らかに動揺している。
肉食獣に狙われた気の弱い小動物が狼狽たえる様子を見るようで、とても忍びない。
「チェックメイトだね」
静巴先輩が隣で呟いた。
その顔は、まさに王手をかけた余裕の笑みを湛えていた。
というか、静巴先輩ってチェスやるのかな。将棋のイメージなら沸くんだけど。そんなこと言ったら怒られるかな。
さて、二階という低い俯瞰からで申し訳ないけれど、事の行方を見守るとしようかな。
部長がどうやって東雲先生を説得するのかを見てみたい。
思うや否や、部長は肩掛けのボストンバッグに手を突っ込んだ。そして内容物を乱暴に引き出して、それを前方へと突き出す。A4サイズくらいの紙の束だ。
「ののちゃん、これがなにか分かるかな?」
「そ、それは、プリント用紙で、……ッ!? 」
「そう。これはただのプリント用紙じゃない。これはののちゃんの恥ずかしいお便り。ラジオ部宛てに投函された、あの、例のっ! メールなんだよねー。昨日帰りに、コンビニで二百枚刷ってきたんだ」
にやりと、部長は口の端を歪める。
昨日の帰り際にコンビニに寄るって言ってたけど、賄賂用のお菓子を買いに行ったんじゃなかったのか。あんな小細工を用意していたとは、末恐ろしい先輩だ。
「そ、そんな証拠がどこにあるって言うです? 私が書いたものじゃないかもしれないじゃないですかぁ」
「なら、なんでそんなに落ち着きがないのかな~?」
さっきから東雲先生はきまりが悪そうに身をよじったり、明後日の方向を見やったりと、どこか挙動不審だ。あんなの自分がやったって言ってるようなものなのに。
ほんと、正直な先生だと思う。
「それに顔も赤いしねー。ののちゃん、自分に都合が悪くなるとすぐキョドるって、生徒の間で有名だよ?」
「ち、違うです。そんなはずないじゃないですかぁ」
言葉とは裏腹に、東雲先生はあわあわと狼狽している。
「ののちゃん、あたしだって鬼じゃない。なんてったってあたしは部長だからッ! 心の広さは山より低く、海より浅い」
ダメじゃないの、それ。
言葉選び間違ってますよ、部長。
「だから――」と、部長は飛び上がり、そして……「顧問になってください!」と流れるような動作で土下座した。
「ってええっ!? 」
これか、これが俗に言うジャンピング土下座! 初めて見た、というより、実際やる人いるんだな。
というか、脅すとか言ってたのに、結局頼み込むのか。
膝小僧を擦り剥かないように、さりげなくプリントを下敷きにしている所がちゃっかりしている。
迫られると思っていたのか、東雲先生は怯え顔で後ずさり。
ほんと、トラに襲われそうな野うさぎみたいだ。
「……えっ」
ようやく目の前の光景が理解出来たのだろう。
東雲先生は唖然として目を瞠る。
「ののちゃんだけが頼りなんだよ、この通り」
額が擦れるんじゃないかというくらいに、深々と頭を下げる部長。
傍目に見ても、誠意だけは伝わってくる絵面だ。
「でも、そのプリント……」
「ああこれ? これはののちゃんが応じなかった場合に、ビラ配ろうかと思ってたんだけど。ののちゃんさえOKしてくれれば万事解決だから!」
やっぱ脅すんだ。
「いやですっ! そんな脅迫みたいな真似して」
「頑なだなー。そもそも、なんでののちゃんは顧問の誘いを全部蹴ってるわけ? 納得いく理由があるんなら話してみてよ。それで判断してみるからさ」
「そ、それは……あの、ね、ねむ――」
「んんっ?」
「あっ、こほん。忙しいからですぅ!」
失言を取り繕うようにムキになって言う。
「忙しいって、美術部顧問でもないし、担任も受け持ってない完全フリーじゃん。この前校舎裏の非常階段下で、こっそり隠れてノンアルコールカクテル飲んでたくらいフリーじゃん。なーにがそんなに忙しいわけ?」
「なんでバレてるですかッ!? 」
ノンアルのカクテルを隠れて? カクテルってことでやましかったんだろうか……。
「そりゃあ顧問にしたいナンバーワン教師だし、あたしが目をつけてないと思ってる? 部長としての職務だよ」
ストーキングみたいな真似をしてそんなにドヤらないでほしい。
けど、
「東雲先生ー、上から失礼します。東雲先生は、ラジオ部の最初のファンだって先輩たちに聞いたんですけど。ラジオ部の顧問になりたいとは思わなかったんですか?」
それが気になっていた。
なんで応援してくれているのに顧問になりたがらないのか。そりゃあまだメンバーが足りていないからってのも大きいだろうけど。ほかに重要かつ断らなければ命に係わるような、重大な悩みを抱えているとか?
「よく言った、くろすけ。そうだよ、ののちゃんいっつもあたしたちのラジオ楽しみにしてくれてんじゃん。なのにどうして?」
「それはだからぁ……」
もじもじしながら口ごもる東雲先生に、部長は意地悪そうな笑みをこぼした。
「――眠いから?」
「そう、そうです――って、ハッ!? 」
しまった、と驚愕の表情を色濃くした時にはすでに遅し。
部長は嬉々として、下敷きにしていたプリントを持って立ち上がる。
「あっははははっ! ののちゃんダメじゃん、こんな子供だましに引っかかってちゃー」
プリントごと腹を抱えて笑う部長に、顔を赤くしながらむくれる東雲先生。
これじゃあどっちが大人か分からない。
「……むーっ、子供って言わないで! 身長が少し足りてないくらいで、あなたたちよりお姉さんなんですからぁ!」
なぜか涙目で抗議している。
気にしてるのか、やっぱり。
「ところでののちゃん、何時に寝てるの?」
「えっとね、夜八時半にはお布団入って、九時にはおねむータイムなのね」
「って子供かっ!」
「……だから子供じゃないって言ってるじゃなーい!」
いやだから涙目……。
「でも私、恥ずかしいからラジオとかちょっと困るですし、うまく喋れるかどうか分からないって言うか」
内心、出たかったのかな。
照れながら話す様子を見る限りじゃ、そんな思いがにじみ出てる気がするんだけど。
「だからお願いだよ! このままじゃラジオ部は本当に部として成り立たないんだ! だからとりあえずののちゃんを立てて、部としてハリボテでもいいから体裁を繕いたいっていうか、ね?」
「って部長! それは内に秘めて表には出しちゃいけない話なんじゃ」
「バッカーやろう!」
いまのはいったい誰のモノマネなんだろう。すごく濃ゆい顔して言われたけど。
「ののちゃんはただそこにいるだけで華があるんだ! 言ってみれば道路のひび割れから顔を出す小花なんだよ! そこに在るだけでほっこり癒される存在なんだ。お飾りだっていいんだよっ。だからののちゃん、お願いします!」
意味不明な説明を羅列して、勢いで土俵の外に押し切る。
頭を下げて手を差し伸べる部長を、圧倒されたようにただ呆然と見つめ、
「あ、まあ、はい、分かった、です?」
東雲先生は逡巡したのち、小首を傾げながらも部長の手をとった。
頭は下げたままでこちらを見上げ、空いている左手でグッとガッツポーズをしてみせる部長。
ものすごくあくどい顔をしていた。
小花だの華があるだなどと囃され、まんまと騙された子供を見るようで良心が痛むけれど……。
暫定的だけど、これで第一目標はクリアになったのかな?
「ああちなみに。これ、静巴が記録してるから。もう逃げらんないよ、ののちゃん」
僕は殴られたような素早さで隣を見やる。
いない! 静巴先輩はどこへ――。
その時、ガサッと植木が揺れた音がした。
「証拠はこの通り」
ハイビジョンビデオカメラを手にし、静巴先輩が何事もないように涼しい顔をして、アジサイの間から姿を現す。
……いつの間に。ぜんぜん気づかなかった。
和傘でも差していたなら、すごく絵になっていただろうに。残念なことに、手に持つのはカメラだ、しかもムービーだ。東雲先生が納得したように部長と握手を交わす、証拠物件。
東雲先生はなにがあったのか分からないといった風に、直立不動で茫然自失している。どうやら畳み掛けに弱いみたいだ。放心して帰りに事故らないといいんだけど……。
そうして、なし崩し的だけど、東雲先生がラジオ部の顧問になってくれました。
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