第88☆セリフマスターになろう!

 <セリフについて>

 人物同士の口を借りて事件なり、物語なり、登場人物の心理や感情を描写する手段。

 分量的にシナリオでは80%~85%を占める(例外アリ)。

 シナリオが成功するかどうかがかかっている。

 演劇では映像的手法がないため、セリフによって決定的に価値つけられます。→ その工夫(リアルなもの、韻を踏んだもの、絢爛たるセリフ、軽妙なセリフなどなど)

 舞台の様式美は七五調。

 映画やTVはリアルなものを媒体とするため、リアルなセリフからそれることはあまりない。しかしそれがそのまま映画やTVのセリフかというと違います。

 時間と空間を飛躍し、さらにフィルムという制限と強制力をもった独とくな芸術セリフ。

 一言一句おろそかにできず、吟味され組み合わされていることが必要。

 注意:日常会話のだらけた水っぽい(水で薄めたように安易で内容が薄い)会話はリアルといえどもセリフにはなりません。


 <機能としてのセリフとそれを発揮する条件>

 古典『戯曲の技術』のフライタークの論を借ります。

 セリフの機能三つ。

 1、事実を知らせる。

 2、人物の心理、感情を表す。

 3、ストーリーを進展させる。

 これらの機能を充分発揮するには四つの条件があります。

 ①、物語の進展方向に進むべきである。

 ②、人間の言葉でなければならない。

 ③、魅力のあるセリフでなければならない。

 ④、簡単明瞭であることが必要。


 ①進展させないものの二つの型。→ 堂々巡り型。どんどん過去へ話がそれていってしまう型。これらはドラマをつまらなくします。

 ②人間らしい生活のある感情のこもったセリフ。→お人形がしゃべってるような事件やストーリーを運ぶためのセリフは×。

 ③ただ事務的ではつまりません。聞いていてあきない、飛躍あり、強調があり、機智があることが好ましい。

 ④簡単でテーマが明瞭にわかるセリフを選ぶこと。→ 初心者に多いのは原稿2~3枚分にもおよぶセリフを書いて、OKとする。長台詞で悦に入るよりもテーマをはっきりさせることが重要。

 *いいセリフ(もっとも的確な)とは、その時点において一つしかないのです。


 <くそリアリズムでないセリフの作りかた>

 単に生活を模写したリアルではなく、映像芸術としての、説明らしからぬ血の通ったセリフを作り上げましょう。

 *セリフの進化の行方*

 A独白……独り言。観客に聞かせるためだけのもの。

 B聞いたか坊主(歌舞伎用語)……これから始まる話のあらましと、登場人物や情景を『噂話』として成立させてしまう。これはレギュラーキャラにやらせると面白くなる。

 C英会話セリフ……あらかじめ答えを用意しておいて、それを導き出す問いかけをさせる。

 D説明セリフ(事件会話セリフ)……プロがよく使います。描写をきつくすると卒業できます。ト書きで情景を説明すれば、フィルムではっきり映っているから必要ありません。

 E感情あるセリフ……人間的描写。登場人物の気持ちをうまく整理することが大切。

 F情緒あるセリフ……リズムとテンポにのった伸縮自在のセリフのやりとりと、美しいしぐさの動き、まるで音楽を何回も聴くように、その美しい律動感を観客が楽しむ。情緒あるドラマを感じさせるセリフ。


 <セリフの使用上の注意4つ>

 ①一本のセリフ、一個のセリフにこめるテーマ(目的)は一つだけ。

 ②セリフのテーマはセリフ尻(セリフのおしまい)にあります。

 ③いいセリフとは、そのドラマの進行の時点において最も的確なセリフ。

 ④観客を意識したセリフ。

 *初心者が陥りやすいミス二つ……登場人物に憑依して、観客の存在を忘れてひとりのみこみな(傍から聞いていてまったく事情がわからない)セリフを書いてしまう。反対に観客を意識するあまり、ぎくしゃくとした説明セリフを書いてしまう。

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