創作のためのおぼえがき

第74☆シナリオ入門＜本文＞

　シナリオの本文は、柱、ト書き、セリフ、記号で成り立ちます。

　その形式は短歌や俳句と同じく、厳密に決められています。特にはっきりしているのは、ト書きは全部、現在形で書く、ということです。

　まず、柱。

　柱は、場所と時間を書きますが、時間は昼以外のときに＜朝＞＜夕＞＜夜＞と書きます。これは映像にするとき、照明を変えて朝なり、夕なり、夜なりと表現するためで、昼は書かなくていい。

〇片岡家の茶の間＜朝＞

と言うように書きます。文学的表現を避けてください。シナリオには一切の抽象表現を避ける、という決まり事があります。

　〇というのは、決定稿が出来上がったときにシーン番号を入れていきます。□でもいいです。

　次にト書き。

　ト書きはご存知の方もござりましょうが、歌舞伎関係の言葉です。

「ト由良之助、急いで舞台に出る」「ト立ち上がって」と頭に必ずトをつけたのでト書きと言います。主に柱の捕捉やセリフの合間にはさまれます。照明、音楽、効果など、演出を指示するものでもあります。

　どうしても読者にわかってほしい事だけを書きます。人物の動作、舞台に（シーン現場に）入ったり出たり、座ったり、腰かけたり、手紙を読んだり。

　あとは舞台装置のこと。

〇バー「黒猫」

と書いた場合、どの程度のバーなのか？　銀座にあるような？　場末のような？　知る人ぞ知る隠れ家のような？　具体的に書きます。

ト書き→「場末のケバケバしく、妙に安っぽい飾りつけである」

　くれぐれも文学的表現を避けてください。

　原稿用紙にト書きを書くときは、上から三マス空けます。何行にもわたるときはやはり、上から三マス空けた状態で、頭をそろえます。

　そしてセリフ。

　誰のセリフかわかるように書かねばなりません。なので、ト書きにて作品中初出の人物はフルネーム(年齢）を書き、セリフの頭に名前を書きます。

　これにはルールがあって、男性は姓、女性は名で書くとよい、とあります。男性は、名前の方がわかりやすければ、それでいいです。

　学生もので、女子たちが話しているとき、全員姓だと、男？　女？　と読み手がはっきりわかりません。女言葉の男なのかな？　と思う人もいます。

例：間とお宮、より貫一とお宮の方が通りがいいですね。主人公としてはっきりしているときは名前でいいです。

　シナリオは形式に厳しいですから、例文をご覧になったほうがはやいでしょう。

〇JR上野駅改札口（夜）＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＊＊＊伊藤雅子(28）が足早に歩いてくる。＊＊

＊＊＊上島徹(30）が嬉しそうに雅子に手をふる

雅子「ごめんなさい。待たせて」＊＊＊＊＊

上島「僕も今きたところさ。用事の方は、片

＊付いたの」＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＊＊＊雅子、うなづきながら、上島のそばへ

＊＊＊よろうとすると＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

田中「おい上島じゃないか」＊＊＊＊＊＊＊

＊＊＊田中が雅子に気づかず寄ってくる。＊

　セリフが二行以上にわたる場合は、二行目からは頭ヒトマス空けて、そろえて並べます。

　上の例文は人物の動作をト書きで書いてますが、情景描写すると、以下になります。

〇飛田家の茶の間＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＊＊＊畳はボロボロで、襖は破れている。＊

＊＊＊飛田が、寝そべっている。そのまわり

＊＊＊にはハヅレ馬券が散らかっている。＊

飛田「おーい、水もって来い！」＊＊＊＊＊

＊＊＊と奥から、とん子がバケツに水を入れ

＊＊＊てもってくる。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

とん子「さあ、たくさんおあがりなさいよ、

＊馬みたいに」＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＊＊＊と頭から水をかける。＊＊＊＊＊＊＊

　記号は（F・I）（F・O）（O・L）（WIPE）（DIS)とありますが、いずれも時の経過を表す撮影技術用語なので、なくっても成立します。