近代的彼氏彼女
松本まつすけ
序章
近代的考察
この世の中はいつだって大概、狂っている。
最近の何某が昔と違って駄目だ、昔が良かった、今は駄目だ、などと言い訳じみた前置きがよくよく好まれるが、それに限ったことはない。歴史のいつを遡ったところで、誰しも似たようなことを口走っているはずだ。最近のあれこれは乱れている、おかしいと。
考えてみれば至極当然なことで、世の中を作っている人間たる生きものは、当然のように進歩を続けている。
それこそ石斧を振り回していた時代からずっと、だ。
弓矢であれ銅剣であれ、果てや大砲、ピストルと新しいものができる度に、それらは異質なものとして扱われているが、古くなった途端に常識と化し、また新しいものが異質になり替わる。
とどのつまり、今は、現在は、この瞬間は、異質であり、狂った世界なのだ。そしてそれらと比較され続けている近代こそが、現代への礎であり、諸悪の根源といえる。
過去の非常識は現代の常識であり、現代の常識は過去の非常識なわけだ。
そういうものを積み上げて、組み上げてきたのは当然のことながら、そこに至るまでには文化の一つにしても幾つもの人間関係があった。
言うに事欠いて、近代の人間関係に至っては、それこそ狂気の沙汰にしかなりえない。
関係を敷くということ、互いが関わるということは、どのような場合であっても何かしらが干渉し合うことと同義だ。
獰猛な獣が敵として対峙したとき、無傷ではいられない争いが起こるように、関係が生まれると互いに干渉し合い、物事が、事象が、変化、変動していく。
牙や爪を持つ獣が数匹ばかし一つの土地で争えば、木々が折られ、川が血に染まり、そこに大きな痕を残してしまうだろう。
では知恵、知識、文化を持つ人間ならば。
牙や爪など重火器や爆発物などに置き換わり、一つの土地と言わず一国も、世界そのものさえも破壊されかねないだろう。近代の人間関係はそういったものに匹敵する。
狂った世界、狂った世の中、それらが紡ぎだす狂った現代、そして未来。全ては近代の連中による影響であり、爪痕であり、元凶なのだ。
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