葉っぱのおしゃべり

福蘭縁寿

葉っぱのお話

 今日はある日の葉っぱたちのお話。季節は夏と秋の間で、夏の葉も秋の葉もいるときでした。


「夏のみどりくんは木についているけど、今のところ居心地はどうだい?」


 秋のあかくんがまだ木についているみどりくんに聞きました。あかくんやきーちゃん、だいくん、ちゃーさんはもう木につくことが出来ないからです。


「風が吹くととっても気持ちがいいよ。でもあまりに強い風だとみどり色のまま落ちてしまうんじゃないかって怖くなるんだ。もっと楽しく過ごしたいのに」


 みどりくんはまだ成長中の子供なので元気いっぱいです。他の葉はもう大人で、木から解放されてやっと自由だと思っているみたい。


「それなら落ちてからのほうが自由で楽しいのですよ」


 落ちてからの楽しみとは何でしょうかね。ちゃーさんはこのあとに続けました。


「風に乗って色んなところに行けるんですよ。ステキじゃないですか」

「でも川や海に落ちるかもしれない。そうしたら終わりだよ」


 みどりくんは自分の思うとおりに動けないと嫌みたい。これを聞いてだいくんが言いました。


「川に下りたら山や森はもちろん、人や車、他の生き物を見ることが出来て、そのまま広い海にも出られるんだ。いい人生、いや、いい葉生じゃないか」


 落ちると下りるじゃすごく違う気がしますね。この話に加えるようにきーちゃんが話し始めました。


「旅が出来るんだよ! 木についているときなんてただそこに居るだけだもん。楽しくなかったよー」


 みんなそれぞれ思っていることがあるみたいですね。みどりくんはまだ木の上での生活しか知らないから、その後の良さはまだ分からないかもしれません。


「雨だって嫌だよ。濡れるし水のしずくがあたると痛いし」


 みどりくんはとても雨が嫌いみたいです。あかくんたちもそれについては同じのようです。


「雨が降ると道路にはりつけになるから嫌だなぁ」

「簡単に人に踏まれたりしますからね」


 雨はここにいる葉っぱには悪いことばかりみたいです。


「でも雨って木を育てて僕たち葉を育てるのにはとてもいいものだよね」


 みどりくんがめずらしくいいことを言ったのでみんなは笑い始めました。


「なんで笑うんだよー」


 みどりくんはみんなに言います。


「だってそんなこと言うのは考えてなかったんですもの」


 笑いがおさまらないみんなを見て、みどりくんはいじけてしまいそうです。


「ごめんね、馬鹿にしてたわけじゃないんだよ。ただね、もっともなことを言ったから驚いただけさ」


 あかくんは頑張ってみどりくんを元気にしようとします。


「うーん、それならいっか」


 みどりくんの機嫌は元に戻ったようです。


「雨でいいことか、やっぱり大きくなるには必要だよな。あと日の光とか」

「日の光は暑くて乾くからなー。僕は苦手」


 みどりくんはいったい何がいいんでしょうか。


「どれも嫌なんじゃないか。それじゃあ駄目だぞー」


 だいくんがみどりくんに言います。本当に何なら好きなのでしょう。


「好きなのかー。うーん、今のままだとあまりないなー」


 みどりくんには好きなものは無いみたい。こんなことを話しているともう夕方です。

 あかくん、きーちゃん、だいくん、ちゃーさんはそろそろ行ってしまうようです。


「それじゃあ、もうそろそろ行きますね」


 この言葉のあとに吹いた風がみんなを遠くに運んでいきます。


 一人になったみどりくんは寂しそうです。みどりくんの本当に嫌いなことは一人、好きなことはみんなといることだったのです。

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