Memories 6

 部活か。

 俺もかつては剣道部に所属していたけれど、唯の死をきっかけに剣道を辞めることにした。剣道ができなくなった唯に申し訳ない気がして。

 それと、剣道をすることが怖くなってしまったからだ。

 唯が亡くなった事件があってもずっと続けている笠間の影響や、高校入学という一つの節目で剣道をもう一度始めようかと思った。だから、高校を入学して剣道部の見学をしてみたんだ。

 月原高校の剣道部は男女では別れていないため、もちろんそこに竹刀を握る女子生徒の姿があった。素振りをする女子生徒もいれば、防具を付けて実戦形式で練習する生徒もいた。当たり前だけれど、全員が一生懸命練習していた。その風景を見て、剣道はやはりいいものだと思う瞬間が何度もあったな。

 しかし、練習後に汗を流しながら、爽やかな笑みを浮かべる女子生徒達が、唯のように見えてしまったのだ。唯もいつも練習後は汗を流し、頬を少し赤らめながら笑っていたから。


 ――唯から剣道を奪ってしまった。


 そんな罪悪感を抱き、再び剣道をすることが怖くなってしまい、勇気が出なかった。それはその日以来、見学もしなければ入部することもなかった。



 そういえば、俺が見学に行ったとき、もう既に入部していた同級生がいたな。女子生徒であることだけは覚えている。あと、その子は妙に気合いが入っていたような気がする。返事をするときなどの声が大きかった。面を被っていたから顔は覚えていないけれど。

 その女子生徒は今も剣道をしているのだろうか。きっと、していることだろう。当時のやる気が続いているのなら。

 俺は、彼女ほど剣道にそこまでやる気があって熱くなっていたのだろうか。いや、それはないだろう。それならきっと、唯が死んでも普通に続けていただろうから。

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