118期 彼女たちの戦い
片思い中の女の子は何故にあんなにパワフルなのか。理由は意中の彼しか見えないからだと思う。彼に気付いて欲しいと思う故に、きれいになりたいと思い、自分を磨き始める。大半は外見を磨くわけだが、それには並はずれた努力をする。
肌のお手入れは、産毛一本でさえも妥協はない。というか、そんなものあってはならない。目指すは、ツルツル、スベスベのきめ細やかな白い肌。入浴剤にローションに、あらゆるツールを用いて彼女達はお肌を磨く。
男の人はみんな大きな胸が好きだから、きっと彼も大きな胸が好きなんだと思って、毎日せっせとバストアップマッサージも行う。彼に、大きくて柔らかいね、って言ってもらえる日を夢見て。
唇のお手入れも欠かしてはならない。カサカサのくすんだ色の唇なんてありえない。プリプリ、ツヤツヤの唇を目指してクリームをつけて、十分に潤す。時には、ローションパックだってする。唇は特に重要なのだ。いつも服の中で誘っている胸なんかより、キスしたいって思わせる妖しい唇のほうが、彼には何倍も効果があることを知っているから。
瞳だって、大きいほうがかわいい。カーラーでまつ毛をしっかりカールさせて、瞼も二重に。それでも足りないようであれば、付けまつ毛をしてボリュームをかせぐ。
服のセンスも、髪型さえも彼の好みに合わせて変える。もちろん、シャンプーもトリートメントもフレグランスも彼の好きな香りのモノを使用する。
そんな彼女達を見ていると、恋は盲目、というのも頷ける。盲目中の彼女達には意中の彼しか見えず、それ以外の何物も何者も視界には入らない。ただひたすら、意中の彼に向かってまっしぐらだ。
そこまで努力して、万が一意中の彼に実は彼女がいたり、好きな人がいたりしたらどうするのだろう? 彼を奪い取るつもりなのか?
もちろん中にはそんな女の子もいるだろう。でも、大半はきっと努力したぶん、時間を費やしたぶんだけ、絶望して、泣いて、泣いて、泣いて、泣いて……。涙が枯れ果てて、もう恋なんて二度としないと心に誓う。
それでも、新しい出会いから再び新しい恋に出会う。一瞬の躊躇いが生じる。しかし、彼女達は再び彼一色の日々に戻っていく。
次こそは、幸せになるんだと心に決めて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます