162期 ホットパンツ

朝ごはんを食べ終えて、洗い物をしているキミを見て、気がついた。

まただ。それ、気に入ったの?

暑いのはわかる。だけど、人目につかないところだけで穿いてくれないかな……。

今まで歯磨きをしていたんだけど、とにかく何か言わないと、と思って急いで洗顔までを終わらせる。

「ユーコ」

洗い物をするキミの後ろから抱きしめて、キミの耳元にキスをする。

「だ~、もう、何?」

作業中に邪魔されるのを嫌がるキミは、とことん嫌そうな顔でボクを睨む。

「これ」と言いならが、ボクはホットパンツから伸びるキミの太ももをさする。

「ちょ、何するの?!」

キミが慌てて身をよじる。

「これ、もうボクの前では穿かないで、って言ったじゃない」

もう、とうんざりした顔でキミを見たら、「だって、暑いんだもん」とキミが言った。

それは、わかるんだけど。ほら、ボクのほうも熱くなっちゃうから……。

「ゆっくりしていたら、アッ君遅刻しちゃうよ」

キミがそう言い放って、洗い物にもどった。


ほんの数分だけだったのに、ボクのほうは完全に熱くなっていた。どうしてくれる?

スーツに着替えて、とにかくキミに会わないようにと思って、急いで家を出ようとする。だって、次キミのあんな姿見たら、ただじゃすまない気がするんだ。

「じゃ、行ってくるから」

キミの見送りがないように急いで靴を履いていると、後ろから「アッ君、お弁当」と言ってキミがお弁当を持ってきた。お弁当のこと、すっかり忘れてた。

「ありがとう」と言ってキミを見たら、やっぱりキミの足が見えて……。思わず差し出されたお弁当じゃなくて、キミの体を引き寄せてた。

「アッ君?」

土間と上がり框の分だけ、いつもよりキミの瞳が近くて、キミの大きな瞳にドキリとする。

「今日、休んじゃおうかな」

ボクがそう言って笑うと、キミが「え?」って驚いたような顔でボクを見上げる。

「だって」ボクはキミの唇に自分の唇を重ねた。

今日は、もう我慢の限界だからって、キミの耳元で囁いたら「はぁ~?」ってキミが顔をしかめた。

「わけわかんないこと言ってないで、行ってらっしゃい!!」

と、キミはボクの腕の中から力づくで出て行く。

「早く行かないと、遅刻するよ」キミがブッスとした顔で言う。

仕方がない。ボクは「いってきます」とキミにキスをして家を出る。

「会社に着くまで、ちゃんと熱が冷めてくれるといいけど……」

今日も1日暑い日になりそうだ。

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