武装天使 エンジェルスクライド
むるたん
第1話 始まりの日
朝5時、御影家
薄明かりの部屋から目覚ましが鳴る。
しばらくして、布団で寝ている少女が目覚ましを止め目が覚めた。
「んーっ」
少女の名は、御影奈々(みかげ なな)この家の次女である。
目が覚めた奈々は、背伸びをしてパジャマからジャージに着替え髪をリボンで括り、ツインテールにして部屋を出た。
家を出て、庭のはずれにある平屋に入る。そこは、板間の広い道場であった。
奈々は、靴を脱いで道場へあがると長い髪を後ろに括り、ポニーテールの女性が一人中央で木刀を持って素振りをしていた。
「お姉ちゃん、おはよう~」
素振りをしていた女性は、姉の御影佳乃(みかげ かの)であった。
「遅いぞ、奈々」
「お姉ちゃんが、早いんだよ~」
奈々は、そういいながら隅に置いてある木刀を一本もって、同じように素振りをはじめた。
それから数分後、男があくびをしながら道場に上がってきた。
「おはよ~奈々、佳乃」
男の名は、御影征四郎(みかげ せいしろう)奈々と佳乃の父親である。
「お父さん、おはよー」
奈々は、笑顔で挨拶したが佳乃はムッとした顔で
「遅い、一家の主が娘より遅いとは示しがつきませんよ」
「佳乃が、早すぎるんだよ~。それに、お父さん昨日は仕事だったんだよ」
征四郎は、あくびをしながら言い訳をした。
「朝5時に起きてジョギングと、軽く素振りと乱取りをして朝ご飯を食べると決めたのは父さんですよ」
「だってぇ~」
「言い訳無用」
佳乃は、冷たく返した。
「さあ、いきますよ」
そういうと佳乃は、スタスタと外へ出て征四郎と奈々は、その後ろからついていった。
1キロのジョギングを済ませた後、乱取りと技の修練。最後に、ストレッチをして朝食を取る。御影家の一日は、ここから始まるのであった。
朝食は、母の御影涼子(みかげ りょうこ)が作っていた。
「お母さん、おはよー」
奈々は、先にシャワーで汗を流したので一番に食卓に座る。
「おはよー。今日は、鮭を焼きましたー」
涼子は、ニコニコ笑顔で答えた。
「おーいいねー」
征四郎と佳乃も、食卓に座る。
「それじゃあ、みんな揃ったところで」
「いただきまーす」
家族全員揃って朝食を取った。
奈々と佳乃は、朝食後制服に着替え学校に行く。
「んじゃ、いってきまーす」
「行って参ります」
「いってらっしゃい」
涼子は、玄関まで二人を見送りに来た。
しばらく二人一緒に歩いて、交差点で二人は別々の方向に歩いた。
奈々と佳乃は、別々の高校に通っている為通学路は、別になるのであった。
奈々は、平均的な成績だが佳乃は成績優秀であったので、更に学力の高い学校を選んだ為である。
そして、奈々は歩いて家から歩いて20分の所にある「私立東郷学園」へ向かうのであった。
通学途中で、ショートカットとロングヘアーの二人組に声をかける。
「晶ちゃん、楓ちゃんおはよー」
「おはよう、奈々」
「おはようございます、奈々さん」
ショートカットの陣内晶(じんない あきら)は、奈々と同じく元気に手を上げた。
ロングヘアーの神崎楓(かんざき かえで)は、丁寧口調で奈々に一礼した。
「楓さん今日のパンツは、何色ですか?」
奈々は、おっさん口調で答えた。
「朝から、何を聞いとるんじゃおのれは」
晶は、呆れ顔で言ったが。
「今日は、白です」
楓は、普通に答えた。
「あんたも、素で答えちゃダメ」
「ふふっ、冗談です」
「それはそれで、困るんですが・・・」
そんなボケ突込み会話が弾みながら、校内へ入っていく3人であった。
そして、放課後
晶と楓の二人は、部活がありいつもは屋上で練習しながら待っているのであったが、今日は奈々一人で下校することにした。
その帰り道、軽く運動する為近くの運動公園へ向かった。
運動公園には、陸上競技場と野球場と体育館があり周囲には、ジョギングやウォーキングする人たちが幾人もいた。
御影家の稽古は、自主練習が主で道場に集まる以外は基本個々で修練していた。
奈々は、カバンを置いて準備運動を始めようとしたその時、後ろから妙な気配を感じた。
人の気配ではない、いつもと違う違和感を奈々は感じた。
奈々は、違和感の感じる方向へ歩いて向かった。
林の中へ、進み少し進んだ先に赤く光る石が落ちていた。
「なんだろこれ?」
奈々が、石を手に取った瞬間
「おい、おまえ」
後ろから声が聞こえ奈々が振り返ると、見慣れない服装の少女が立っていた。
歳は、奈々と同じぐらいで制服っぽいが、見覚えのない服装であった。
「その石を、こっちに渡せ」
少女は、唐突に奈々の持っている石を指差した。
奈々は、少女を見ながら石を持ってゆっくり立ち上がった。
「これが、欲しいんだ?」
「そうだ、さっさと渡せ」
そして奈々は、石を上にあげて
「あーげた」
奈々は、にやけ顔で答えた。
「おまえ、バカにしてるだろ」
「それ以外に見える?」
「てめぇ」
少女は、イライラ顔しながら右手を握りしめた。
次の瞬間、光とともに右手には刀が握られていた。
「げっ」
奈々は、驚いたがその瞬間に少女は斬りかかってきた。
「あぶなっ」
奈々は、斬撃をかわし間合いを取った。
「そんなもんで斬ったら、大怪我するでしょうが」
「大丈夫、斬っても死にはしないから」
「うそつけ!」
「斬られたくなかったら、さっさと石をよこせ!」
少女は、再び奈々に斬りかかった。
「おっ、よっ、はっ」
右に左に縦に女は剣を振るうが、奈々はすべてかわした。
御影流の修練において、無手の状態になったときの剣撃や打撃回避を修練していた為、奈々は相手の目を見て回避していた。
「くそう、ちょこまかと」
暫く攻撃して、少女は動きを止め息を荒げていた。
(うーん、どうしたものか)
奈々は、息を切らしておらず間合いを取りながら考えていたその時、突然持っていた石が光り始めた。
「なんだと!?」
少女が、驚きながらたじろいだ。
「え?なに???」
奈々も驚いていたが、次の瞬間奈々の頭の中になにかが入ってきた。
それは、この石に関すること使い方などが頭の中に読み込まれていくようなそんな感覚が、無意識に伝わってきた。
そして、光が消えて元の静けさに戻った。
「まさか、お前にシード所有資格があるのか!?」
少女は、焦りはじめていた。
「なーるほど、そういうことか」
奈々は、にやりと笑い次の瞬間、石を手前にかざし叫んだ。
「変身!」
次の瞬間、石が輝き奈々の全身を光が覆う。
そして、光が消えたとき奈々の服装が制服から赤い服装に変化していた。
「おー、一応成功したでいいのかな?」
奈々は、自分の格好を見ながら成否を確認していた。
「くそっ、こいつは予想外だ」
少女は、予想外の出来事に戸惑いながらも刀を構えながら、戸惑っていた。
「んで、武器をイメージして・・・・・・こうかな?」
奈々は、右手を横にかざした。
そして、右手が光り剣が現れそれを掴んだ。
「日本刀でもいいんだろうけど、まいっか」
奈々が、出した剣は長さ5尺ほどの片刃であった。
軽く素振りをした後、奈々は少女の方を向き
「んじゃま、2ラウンド目といきますか」
にやっと笑い、剣を構えた。
二人は少し対峙した後、先に奈々が仕掛けた。
奈々は、つま先に力を入れて前へ踏込みそして一踏みで、相手の目の前まで一気に詰め寄った。
「んなっ」
少女は、踏込の速さに驚き離れようとしたが
「はあっ」
奈々は、剣を振り上げた。
スパッ
少女は、かろうじて躱したが服に剣先がかすった。
「そ、そんな・・・」
奈々の順応力に驚愕し、よろけながら少女は構えを取ろうとしたが
「そらそらー」
奈々は、更に詰め寄り片手で素早く連撃を放った。
ガギン!ガギン!ギィン!
金属のぶつかり合う音が、交錯する。
「ぐうっ」
少女は、必死に防御に徹して間合いを取ろうとするが
「うりゃりゃりゃりゃー」
ガキン!ガキン!ガキン!
奈々は、息を着く暇を与えず更に素早く縦へ右左へと剣撃を放っていた。
そして、少し防御が緩んだ一瞬の隙を奈々は見逃さず
「はあっ!」
バキンッ!
剣を払い上げその瞬間、少女の防御が外れ正面ががら空きになった。
「しまっ・・」
少女が、言いかけた瞬間
「そこだっ!」
奈々の目が光り、足を広げ剣を両手に持ち替え下段に構え、そのまま腰から全身で一気に振り上げた。
「御影流!円月斬!」
ズバァッ!!
少女は、斜めに斬られ服が斜めに裂けた。
「あああっ」
奈々は、振り上げたまま軽く飛び、そのまま前に飛びながら腕を一回転して背後に着地し、少女は斬られたその場で、膝を崩し力なく前のめりに倒れた。
「ふうっ」
奈々は、一呼吸おいて変身を解き、倒れた少女の元へ向かった
少女は、斬られて服は破れていたが胴体真っ二つにはなっておらず、軽く切り傷はあって気絶してるだけであった。
「ほんとに、この服バリアの役目をしてるんだ」
石からの無意識情報で、戦闘しながら奈々は確認していた。
「しかし、誰だろこいつ・・・」
奈々が、考えていたとき周辺に複数の気配がした。
やばいと思い奈々は、素早くカバンを持ちゴミ箱に隠れた。
しばらくして、倒れた少女と同じ服の少女たちが3人集まってきた。
「異常を感じて来たが、一足遅かったか」
「まさか、理恵(りえ)がやられるとは」
どうやら、倒れた少女の名前は理恵というようだ。
奈々は、会話を聞きながら
(そういや、名前聞くの忘れてたなぁ)
と、心の中でつぶやいた。
「他に、所有者がいたのか?」
「とりあえず、理恵を運んで報告だ」
少女たちは、倒れた理恵を担ぎその場から消えた。
「????」
走っていくのでなく、その場からシュッと消えた。
奈々は、驚き目をゴシゴシして見直したが、その場には誰もいなかった。
「とりあえず、誰もいなさそうだけど見つかったら厄介だし、このまま隠れながら帰るとしますか。」
そう言って奈々は、隠れながら帰ろうとしたが、ゴミ箱に隠れた状態でそのまま足先を出して動いていた。
周りから見ると、ゴミ箱がちょこちょこ進みながら止まる。この状況を、ジョギングしている人たちには丸見えだった。
通り過ぎる人は、ほとんど見て見ぬふりをしたり、なんだこれ?と不思議がって走りながら見ていた。
「ママーゴミ箱が歩いてるー」
その中で子供が一人、指を指して言った
「しっ、見ちゃいけません」
一緒にいた母親は、そう言って子供を抱えてその場から離れて行った。
奈々自身は、蓋を閉じたまま進み止まっては確認の為、頭を少しを出してして見ているが目の前しか見えていないので、周囲のことには全く気付いていなかった。
そして、その格好のまま家路に向かっていった。
後に、石を持つ者達に狙われ学園全体に及ぶ戦いが待っているなどこのとき奈々は、知る由もなかった。
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