あの角を右に曲がると!

理無塚尊

第1話 ねこ

みなさんこんにちは。私の名前は天宿あまやどり美智華みちか。駅前とかにいる女子高生の中のひとり。今年の四月に家から一回角を曲がれば着く高校に入学したのだけれど、ほとんど毎日と言ってもいいくらいになぜか遅刻しちゃう。自分でもなぜかって言うのはこんな理由がある。


この日は朝の7:50に家を出て、あ、授業が始まるのは8:30からね。普通に行けば10分くらいで着く。んで、その角を右に曲がったの。そこからが問題点。なんと、そこにいたのが、道路を埋め尽くす程の、ねこ。そう、よく道端にいるようなのが、集まって。これはヤバイと。目を合わせたら動けなくなってしまう。上を向いて歩こう、と思ったりしたけど、ねこの尻尾を踏むのが嫌だから下を向く。ねこが足元をうろついてる。「えさは持ってないよ」って言ってもうろついてる。かわいい。いや、目を合わせたらいけない。絶対、動けない。あ、こいつもふもふしてる。遅刻したくない。肉球めっちゃ柔らかい。誰だ、こんな天国…いや、罠を配置してくれたの。明日もお願いします。


ふと気づき、時計を見るともう8:26だった。泣く泣く私はねこたちを放し、ねこを踏まないように回り道をして学校に行った。8:32だった。こっそりと門を通って教室に入る。朝学習の時間なのでとても入りにくかった。しかし、かわいかったなと考えながら準備していると、いた。かばんのなかに、ねこが。さすがに時間がないのでそのまま授業をやったけど、授業の終わった時にかばんのなかを見たらもういなかった。少し残念。


帰り道、まだいるかな、と同じ道を通った。しかし、そこにはもう一匹もいなかった。もう、その日は一匹も会えなかった。


次の日、こっそりと家の食パンを持ってきた。ねこにあげるため。そして、いつもの角を右に曲がった。そこにいたのはねこではなかった。鹿だった。

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