第163話 貴族会議Ⅰ
銀河たちの召喚が終わって翌日。
彼女に何かしら隠された力があるのか期待したのだが、今のところそれらしい発見は出来ない。
一緒にすごせば過ごすほど、あいつの隙だらけの生活しか目に入ってこないのだ。
「どうしたもんか……」
俺が頭を悩ませているとディーが執務室へと入って来る。
「王様、銀河の件ですが」
「なんかわかった?」
「いろいろテストをやらせてみましたが、身体能力は非常に優秀です。また忍術という魔法に近い能力を発現させることもでき、本人は遁術と言っていましたが、魔力の操作自体も優秀です」
「ならなんであんな弱いんだ。裏山のゴブリンにレイプされかけてたぞ。フレイアが二人に増えたのかと思って度肝抜かれた」
「それは……まだこちらの世界に慣れていない……のかもしれません。世界がかわると魔力だけでなく構成する空気もかわりますので、彼女にそれがあっていない……のかもしれません」
「そうかぁ? そんな慣れてないとか空気があわないとか感覚的なものじゃなさそうだけどな」
ディーも同じことを思っていたのか黙ったままだ。
二人で首を傾げていると、カチャノフがブラウン管テレビみたいな機械をもってやってくる。
「姉さん言われた通り調べやした。その結果恐らくでやすが原因がわかりやした」
「本当か?」
「ええ、エーリカの姉さんに協力してもらって作った
「なに? それはおかしい。いくつか彼女の術は見たがそれなりの威力だったぞ」
「一応測定器を見やすと外からの魔力は取り込めるみたいなんでやすが、自身の内側の魔力を上手く外に出せないみたいでやす。しかもこの忍術とやらのほとんどが己の体内に魔力を取り込んで、魔力を練るとでも言いますか、魔力の性質を一旦変換して術として打ち出す技がほとんどでやして」
「つまり結構いいエンジンなのに、うまくガソリン取り込めてないから回転数が上がらなくてスピード出てない感じか……それなおるのか?」
「わかりやせん」
カチャノフは肩をすくめる。
「まぁ……いっか」
ウチが変な奴抱えるのは今に始まったことではない。
俺たちが話していると、なぜかメイド服に着替えた銀河が上機嫌で城の窓を拭いている。
どういう原理なのか、彼女の手のひらから水が流れており窓はピカピカに磨き上げられていた。
「この城……窓つけたんだな」
「驚くのはそこですか?」
「いや、今更頭おかしい奴がメイド服着て窓枠拭いてても、あぁそうくらいにしか思わないよ?」
「慣れとは恐ろしいものですね」
「あぁ兄貴、報告するほどのことでもないんでやすが、彼女家事スキルが超高いですよ。なんでもスパイとして敵陣に潜り込むには必須スキルだとか」
「あぁそう? 俺も無駄にスキルガチャで家事スキルでたから、女子力高いよ?」
掃除とかめっちゃ早いし、ルンバくらいになら勝てる。
くだらない話をしていると、窓の上の方を拭くために銀河が背伸びをすると窓に彼女の胸が押し付けられ目のやり場に困る態勢になっていた。
俺はガン見するけど。
「あれも敵を油断させる技か?」
「いえ、恐らく天然でしょう」
「そっか天然か」
「おい、貴様ら、いやらしい目で西園寺を見るなである!!」
コケ―っとやかましい鳴き声をあげ、一体どこから入って来たのかドンフライが乱入してくる。
「お前、生きてたのか」
「やかましいわ。尻の羽むしられたところで命からがら脱出してきたである!」
確かにドンフライの毛は少しむしられている。
昨日唐揚げ食ったから、あれだと思ってた。
「オリオンが楽しみにしてたのに」
「ふざけるな、この高貴な我輩を食おうなどとする奴はこうだこうだこうであーる!」
ドンフライはバッサバッサと羽ばたきながら嘴で突っついてくる。
「うわ、やめろドンフライ!」
「誰がドンフライだ。さんをつけろであーる!」
「めんどくせぇな。ドンフライさんは銀河と繋がりあるのか? 確か召喚したとき西園寺はどこだとか言ってたよな」
「左様、我輩は西園寺と共に闇将軍頼朝と戦っていたである」
「その話本当だったんだな」
「幼いころから銀河を育ててきた親同然の存在。我輩に許可なく、いやらしい目でみることは許さんであーる!」
銀河が変な奴な理由ってまさかお前なんじゃね? と思わずにはいられない。
とうの銀河は別の窓をせっせと拭いている。これだけ見ると普通のメイドに見えなくもないんだがな。
「それ、水遁の術です!」
笑顔で水洗いしようとするが、彼女が移動した窓にはまだガラスがはまっておらず、丁度射線上にいた俺とディーとカチャノフ、ドンフライは水浸しにされてしまう。
「はわっ!? す、すみません!」
「…………いや、慣れって怖いわ。多分あいつに水びたしにされるのわかっててそのまま見てたもんな」
「こう、やるかな? って思う人の失敗をつい見てしまうやつでやすね」
「それな」
「銀河は人より多少おちゃめなところがあるである」
「抜けてるだけだろ」
「黙れであーーる!」
さすが親のような存在、娘のやることは全肯定らしい。
銀河はその後ディーに普通に怒られた。
チャリオット追加メンバー
サイモン×30
レアリティ:N 職業:戦士 種族:コボルト
G-13
レアリティ:HR 職業:ガーディアン 種族:戦術支援機
ドンフライ
レアリティ:HR 職業:??? 種族:ニワト……コカトリス
西園寺銀河
レアリティ:UK 推定レアリティR~HR 職業:超忍 種族:人間
数日後
最近あのアホメイド忍者の使い方がわかってきたようで、今日も俺は執務室で事務仕事をしながら銀河に天井の掃除をさせていた。
わざと少し小さめの脚立を用意し、銀河が一番上に立たなければ天井に届かないように調整する。
するとどうだろうか、やたら短いメイド服のスカート下からガーター付きのパンツが丸見えの態勢となるのだ。
まさしく策士、いや天才としか言いようがない。
パンツガン見しながら仕事するのってすさまじく捗る。
「お館様、天井全部掃除終わりました!」
「ん~、本当か~?」
俺は銀河と脚立をいれかわり天井を指でなぞる。すると微量のほこりが手に付着する。
このくらいはいくらやったところでとれないし、誤差の範疇である。
だが、俺はそのほこりを小姑の如く銀河に見せつける。
「なんだこのホコリは! お前はこれで掃除ができたと抜かすのか!」
「はわっ!? す、すみませんお館様! すぐにやり直します!」
「いーやダメだ、お仕置きだ」
「ま、またですか……」
「ほら机に手をついて腰をつきだせ」
銀河はしぶしぶ机に手をついてお尻を突き出す。
俺はメイド服のスカートをペローンとめくる。すると白く美しい桃尻が、ガーター付きのストッキングに包まれている。
「ほんとにアホのくせにエロい体をしている」
「ひーん、お館様が完全にエロい悪代官みたいになってます!」
銀河は半泣きだが、俺は尻をピシャンと手のひらで叩いた。
「ひん、ひん、ひん」
ピシャンピシャンと小刻み良い尻を叩く音が響き渡る。
涙目になっているが、そんなに強くは叩いてはいない。どっちかというと恥ずかしくて泣きそうという感じである。
俺が最後の一発を繰り出そうとすると、突如ガシャンと音を響かせてドンフライが強襲してくる。
「貴様また性懲りもなく銀河をいじめているのか!」
「いじめとかやめて、言葉悪いから。折檻だよ」
「おんなじことじゃろがいぃぃぃ!!」
ドンフライは鋭い嘴でめちゃくちゃ突いてくる、超いてぇ!
「悪かった、悪かった! パンツ眺めるので我慢しとくから」
「どこの世界に娘さんのパンツ見るくらいで我慢しといてやるって言われてキレない親がいるであるか!!」
「あぁもう、暴れるな鳥くせぇし」
それから数日、俺の執務机の上にはいやがらせで虫の死骸が並べられていた。
あのニワトリいつかフライドチキンにしてやる。
更に数日後、俺はロメロ侯爵の屋敷にディーとともに馬車で向かっていた。
先日言われていた
しかしながらディーが言うには偉い人にもランクがあり、いきなり超偉い人にため口なんかきいたらぶっ殺されるから注意しろと怖い注意を受ける。
招致されたのはラインハルト城を少し西に行った、聖十字騎士団領にある貴族ロメロ侯爵の屋敷だ。
地方貴族が集まる小さな会議なのかと思っていたが、この大陸東側の有力貴族が集まって来るらしく、実はそこそこ大きい会議であった。
ロメロ侯爵の屋敷は、歴史のある古風な城で、成金が造った金ぴか仕様を想像していたが以外にもまともで驚いた。
「それではお気をつけて」
「あれ? 一緒に来ないの?」
ディーは乗って来た馬車から降りようとしなかった。
「原則我々王の守護は屋敷へ入ることを許可されていません」
「あっ、そうなの?」
まぁ凄く強い兵が暴れ出したら大変だろうし、仕方ないかと思う。
しょうがないと黒鉄だけ持って降りる。
「王よ、何かあっても絶対に先に抜いてはいけませんよ。あなたはただ席について置物のように話を聞いていればいいだけですから」
「それ俺の意味あるのか?」
「本来の王とはそういった公務ばかりです。今までやってきたことの方がおかしいと思って下さい。私は所用でラインハルトに向かいますので、帰りは別のものが迎えに来ます」
「わかった」
そんなもんかと頬をかきながらディーと別れて、ロメロ侯爵の屋敷の中へと入る。
メイドさんに連れられて美しいシャンデリアが飾られた会議室の円卓につくと、既に十数人の貴族が席についてこちらの様子を伺っていた。
「あいつが例の……」
「ふん、品のなさそうな田舎者の顔をしている」
「野蛮そうね。山賊じゃないのかしら」
「学のなさそうな顔をしている、控えめに言ってブサイクだ」
「なぜロメロ様はこのようなサルを貴族に」
「オンディーヌ領もどうせ騙しとったのであろう」
素敵な歓迎の言葉を堂々と聞こえるように言ってくれる。とりあえずブサイクって言ったあの鷲鼻オヤジの顔は覚えたからな。
逆に嫌な奴が多くて俺の中の嫌味な貴族のイメージとぴったりで軽く笑ってしまいそうになる。
空席はちらほらあるが、大体そろったかなという状態で待っていると扉が開き、この前会った貴族のボンボン、マンマルコが姿を現す。
そういやあいつロメロ侯爵の息子だとか言ってた。
なんかお礼がしたいから来いって言われてた気がするが、この貴族招致でどうせ行くからいいかと思って放置していたのだった。
「あっ、咲さンじゃないっすか!」
「おぉマンマルコあんなひどい目にあったのにお前はデブっちょいな。ちゃんと野菜とか食った方がいいぞ」
「言わないで下さい。ぼくこれでもちゃンと体にいいポテトフライとか、パンとか食べてますから」
「パンは野菜じゃねぇし、ポテトも揚げるんじゃねぇ」
「小麦も芋も野菜でしょ?」
「そのデブの野菜概念をやめろ」
マンマルコと普通に話していると周りの貴族がざわつく。
「あ、あの田舎者ロメロ侯爵のご子息にあんな無礼なことをして……」
「あいつ始まる前から終わっている。だからブサイクなのだ」
「所詮田舎者、礼儀なんて言葉を知らない下等なサルが我々と肩を並べようとは」
「まさしく片腹痛いですわね」
おーおー言ってる言ってる。
正直ゴブリンみたいに殴りかかってくる奴の方が気楽でいいなと思う。
「マルコダメよ。お父様に恥をかかせるような振る舞いをしては――」
「やぁ、どうも」
「あっ、姉ちゃんこの前お世話になった咲王も来てるよ」
マルコがいるということは当然姉のアリスもいるってことで、彼女は俺と目があった瞬間白目をむいた。ダメだぞ、女の子がそんな面白い顔をしちゃ。
「…………ちょ、ちょっと待って! 聞いてません!」
「ほーら怒らせましたわ」
「ククク、ご子息を怒らせたらどうなるか、楽しみだな」
何を勘違いしているのか、貴族たちはニヤニヤと笑みを浮かべている。
「爺! 服を用意して下さい、こんなのじゃダメですから!」
「なんだ、姉ちゃん帰って行ったぞ」
「姉ちゃん冒険者に凄く憧れてて、アカデミーに通ってまで冒険者になったのに最初の依頼でアランさんが逃げたことに凄くショックを受けてたンだけど、梶さんに助けられてからもう脳みそマシュマロ状態なんだよね」
「なんだそれ」
数分後、THE勝負ドレスという感じでアリスが帰って来る。
「お前の姉ちゃん化粧慣れしてない感半端ないな」
「あれでも頑張ってるンだ。その努力は認めてあげて」
なんの努力をしているのかイマイチ目指している方向がわからんが。
「せ、先日は危ないところを助けていただき……ありがとうございます」
「あぁ、別に気にしなくていい。新人は死亡率が高いらしいから、運でもツテでもそれが回避できりゃ自分の実力だよ」
「あ……ありがとうございます」
アリスは褒められて、カっと頬を染める。
左隣にマルコ、右隣にアリスが着席すると、周りの貴族の動揺が大きくなる。
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