拳以外を使う

 徒手格闘の場合、使用されるのは拳、そしていくらかの蹴りである。


 しかしながら、武術たるものその全身を武器とする。

 では具体的にどの部位が使えるか、思いつくままに列挙してみよう。


額(頭突き)

槌(拳の側面)

甲(裏拳)

手首

猿臂えんぴ(前腕から肘の辺り)

背面(いわゆる鉄山靠てつざんこう

爪先

足刀(足の側面)


 細かい用法まで加えればさらに幾多の形が現れる。

 これらを様々に組み合わせれば、戦闘の多様性はぐっと増すだろう。


 余談であるが、私が人に「なにか護身に使えそうな手軽な技はないか」と訊かれて答える技はいつも「掌+猿臂」だ。

 やや振り下ろすように側面から掌で顎を打ち(可能なら捻りも加える)、そのまま腕を折り畳むようにして肘側面をこめかみ、あるいは鎖骨へ振り落とす。これを体重を乗せるようにして行うのだ。

 掌や肘は特に鍛えずとも大きなダメージを与えられる部位であるが、それがためにスポーツ格闘技ではまず教えない危険な技である。


 ――そんなものを人に教えるなと。

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