第44話 明日も明後日も、その次の日も
朝の風が頬を撫でる。土と草木の匂いが鼻腔をくすぐり、校舎の三階にまで届く事を何となく意外に思った。窓際から見下ろすグラウンドには、白線で二百メートルトラックが描かれていた。いまは走る生徒の姿も見受けられない。
それもそうか、となずなは思う。チャイムの横の壁掛け時計に視線を転ずると、始業五分前。そんな時間に走っている者がいるはずもない。
ほとんどの生徒が登校し、教室には談笑が満ちていた。
カーテンがそよぐのを手で払いながら、なずなは自分の机に戻った。窓際の一番前。一昨日の席替えで割り当てられた席はまだ愛着が湧くほどには慣れておらず、前回その座席についていた生徒の落書きがいくつか土産のように残されていた。
パンダがハートを抱いている落書きがお気に入りのようで、ぐりぐりと何度もなぞった跡があって、そう簡単には消せそうにない。
愛おしそうにハートを抱くパンダは吹き出しつきで、丸っこい文字でコメントが書かれていた。
しあわせ――と。
「……っ!」
がたっ、と椅子が音を立てた。衝動的に、なずなは立ち上がっていた。
唐突に湧き上がってきた違和感。額に汗が浮かび、全身が総毛立っている。呆然と見下ろした両手には手汗がじわりと浮かんでいた。
幸せ? いったい何が。
何だこれは、と周囲を見回す。
突然立ち上がったなずなを怪訝そうに見るクラスメイト達。馴染みの顔だ。女生徒のうち半分以上は放課後に遊びに行ったこともある。映画を見て、アパレルショップを冷かして、クレープやアイスクリームを食べ歩いた。
違う。何を言っている。
なずなは強く頭を振る。それでも思考にかかった靄は晴れない。その靄を払拭しようとすると、頭が痛んだ。手で押さえても痛みは引かず、むしろ増すばかりだった。
「違う、違う……私はアビス・タンクで魔女を倒して――」
そうだ。魔女を討ち取った。四愚会に名を連ねる彼女の猛攻をかいくぐり、最後には剣で彼女を斬り伏せたのだ。そこまでは覚えている。
それからどうした。
「それから――それから……私は、そうだ」
新手の魔女が現れたのだ。老齢の。そして――
「なずな、どうしたの?」
「え?」
背後から遠慮がちに放たれた声。聞き覚えのある声に振り返ると、歌誉が心配そうな表情を浮かべていた。様子を伺うように伏し目がちで、黒瞳が揺れている。
生徒会のメンバーに出会えた事に安堵して、なずなは歌誉に詰め寄った。
「良かった、歌誉。ねえこの状況って」
「あ、ごめん。授業始まっちゃう」
「何言って――」
と、言葉を遮るようにチャイムが鳴った。
皆、そこそこに談笑を切り上げて各々の席へ戻っていく。歌誉もまた例外ではない。制服を翻して、なずなに背中を向けてしまう。
だが彼女は背中越しに、友人を憂える表情を見せた。
「ホームルーム終わったら話聞くから、ごめんね。あ、自粛期間で部活休みだしさ、カルモでパンケーキ食べて帰ろうよ。虹子も誘ってさ。そしたら元気出るよ」
我ながら良い案だとばかりに柔和な笑みを浮かべる。
じゃあまたあとで、と言葉を残して、歌誉は自分の席に戻っていった。
自分が席についてからも、なずなを気遣わしげな視線で見ている。まだ彼女が立ったままなのを見ると、慌てた手振りで席に着くようにと促してきた。
なずなはひとまず勧告に従い、席に着いた。
歌誉の事は、良い友人だと思う。親友、と呼ぶのかもしれない。自己主張は控えめだが、そのくせこちらの表情を察するのは抜群に長けている。
歌誉と初めて言葉を交わしたのは半年前。始業式を終えて、教室へ移動して、初めてのホームルームを控えた業間時間だった。
クラス替えというイベントを経ても同じクラスに進級する者は、当然、何人かいるものだ。慣れないクラス構成の中で、そういった者同士が騒ぐ中、なずなは何となく一人でいた。一年生の頃に仲の良かった友人は須らく違うクラスへと采配されてしまっていた。元クラスメイトの姿もいくつかあったが、積極的に話すグループではなかった。
頬杖をついて何となくクラスを見渡していると、女生徒の一人がぽつんと棒立ちになっていたのが目に入った。それが歌誉だった。
どうしたのだろうと何となく見ているうちに、彼女は肩を震わせて泣き出してしまった。ぎょっとして慌てて肩を抱いて、どうしたのかと尋ねた。
それが、交友のきっかけだった。
事情を聞けば、自分の席がどこか分からなかったらしい。番号を間違えた男子生徒が歌誉の靴箱に自分の靴を入れてしまい、そんなことがあったものだから自分の出席番号が分からず、進級に当たって親しい友人とも離れてしまい、途方に暮れていたと。
だからって泣くだろうか。
最初は呆れたものだった。まさかそんな弩級の泣き虫と馬が合う等と、その時は考えもしなかった。
「ああ危なかった、間に合ったー」
安堵の声に思考が引き戻される。気づくと、空席だった隣席に男子生徒が座っていた。肩で息をしながら、ほとんど突っ伏すように机にもたれかかっている。
随分急いで来たらしい。
桐吾君、となずなは胸中で彼の名前を呟く。
彼とは今年からクラスメイトだ。外見的には特筆すべき点もなく、 変わっている点と言えば、廃部寸前の工学部に所属している事くらいだろうか。
部を盛り立てようと奮闘する彼から、なずなは何度か勧誘を受けていた。一緒にロボットを作ってロボコンで優勝しようというのが勧誘文句だったが、ちょっと興味を惹かれたのは秘密だ。所属部員が男子生徒一名の部活に加わるのは、流石のなずなでも勇気が出せそうになかった。
一途に地道な勧誘活動を続ける彼に、最近感心し始めていた。入部は無理でも、勧誘方法を一緒に考えるくらいならいいかもしれない。
そんな事を隣席の美少女が考えているなど知る由もなく、桐吾は後ろの席の田路彦につつかれていた。彼とは馬が合うようだったが、残念ながら田路彦はPC研に所属しており、兼部の予定はないらしい。
「こう毎朝理科室を占拠していては、そのうち顧問から睨まれるぞ」
「うーん……でも放課後は半分調理研究会が使うし、全部使えるのは朝だけなんだよ」
「調理研究会はなぜ家庭科室を使わないのだ?」
「そっちは料理部が使ってるんだ」
「それこそ統合するべきだと思うのだが……」
「色々あるらしいよ、方向性の違いってやつが」
「非合理的だな。そもそも高天原殿も――」
「え?」
違和感を覚えて、思わず疑問がなずなの口をついて出ていた。
目をぱちくりする先、桐吾と田路彦もまた、怪訝な表情でなずなを見返していた。
「どうしたのさ急に変な声出して」
「網代殿はさっきから変なのだ。急に立ち上がったり奇声を上げたり」
「何だそれ。調子でも悪いとか?」
「まあ秋も深まってきたし、そう言う事もあるのだろう」
「し、」
なずなは言葉に詰まりながらも、口を尖らせた。
「失礼ね……っ。ちょっと何か、変な気がしただけよ」
「変とは?」
「――よく分かんない」
苦虫を噛み潰したような顔で、そう言うしかない。
「? 網代殿の方が余程変だぞ」
「うっさい仕方ないでしょッ。私が、一番もやもやしてるんだから……」
違和感の正体を掴めないまま、なずなはそっぽを向いた。窓越しに抜けるような青空を見ていると、その違和感はどんどん薄れていった。
朝焼けを迎えた潮騒のように、ざわついていた心が穏やかになっていく。
やがて、五分遅れで担任の衣緒が教室に入ってきた。生徒よりも破天荒で知られる彼女が、よく通る声で出席を取っていく。順番に名前が呼ばれ、各々が応答していく。
それから来週に行われる球技大会の諸連絡があり、受験に向けた補習制度の説明会が月末に行われると通達された。
一限目は英語からだった。それから数学、歴史、古文と続き、それぞれの教師がそれぞれの教鞭を振るった。
いつもは一字一句までをノートに書き留める集中さで授業に臨むなずなだったが、今日はどういうわけか、あまり身に入らなかった。集中しようと構えると、胸中で何かが邪魔をする。何かを必死に訴えてくる。でもそれは壁越しに漏れ聞こえる程度の声量でしかなく、耳を澄ませてみても意味を理解する事は出来なかった。
「なずな先輩、今日おかしくないですか?」
後輩の虹子にまで指摘されてしまっては、いよいよ体調不良を疑うしかない。
昼休みの食堂。手製のだし巻き卵を咀嚼しながら、なずなは渋面した。
「やっぱり虹子もそう思う? 一日中うわの空だったの。私も心配で」
歌誉が購買のサンドイッチを頬張りながら、大仰な仕草で同調する。
虹子はミニトマトを刺したピックを持ち上げながら、探るような上目づかいで、
「季節の変わり目ですし、大事を取って早退された方が――」
「違う違う、大丈夫! 全然大丈夫、なんだけど……」
手を振って慌てて否定するも、その手が段々と勢いを失い、言葉は尻すぼみになる。無意識に思考が明後日の方向を向く。
歌誉と虹子は揃って顔を見合わせて、揃って嘆息した。
「何だろうなあこれ――あ」
頭を悩ませる歌誉が、突然閃いたとばかりに目を見開いた。笑みを含んだ目を眇めて、指で作った輪っかを虫眼鏡に代えた探偵がずばり問う。
「――もしかして、恋とか?」
「ふぇっ?」
「マジですか!?」
突然向けられた疑惑になずなは素っ頓狂な声を上げた。虹子は目をきらきらさせて身を乗り出すが、当のなずなには全く覚えがない。
「違う違う! ホントに違う! ってか何てことを言いだすのよこの子は!」
今度こそ声を大にして否定する。怒ったように眉を吊り上げるが、こうなっては歌誉も虹子も疑いの眼差しをそう簡単には引っ込めてはくれない。
デザートのオレンジを食べ終えて、弁当箱をしまいながら、
「えー、でも何か顔赤いですし」
「怒ってるからよ!」
「怪しいですねーにやにや」
「ちっとも怪しくない! 部活一筋で恋愛してる暇ないって、虹子も知ってるでしょ」
歌誉もサンドイッチをたいらげて、なずなへの追及に加わる。
「あ、席隣だし、最近高天原君とか仲良いよね」
「にゃ、何で桐吾君が出てくるのよ!」
やばい噛んだ。失態を指摘されるかと思っていたら、二人の反応は予想と異なっていた。
『桐吾君?』
「――あ」
自分の本当の失態に気づいて、顔面が硬直する。対して、二人は思わぬ釣果に弛緩しきった下衆な笑みを浮かべていた。
「ほほう、桐吾君と来ましたかなずな先輩」
「いや、その……」
「詳しく聞かせてもらおうか、それはもう事細かく委細漏らさず詳細に」
ずずい、とにじり寄るように身を乗り出してくる歌誉と虹子。なずなは口の端をひきつらせながら身を引くが、背もたれがそれを邪魔する。
凄まれても困るのだ。何せ本人にも分からない。彼の前で桐吾君と呼んだ事はないし、特別絆を深めるエピソードがあったわけでもない。確かに比較的話す事は多いが、それが恋心から来るものなのかと言われると良く分からない。
ただ、いつの間にか胸中で彼を想う時に「桐吾君」になっていたのは事実だ。
「歌誉先輩、その桐吾さんってどんな方なんですか?」
「ん、そうだなあ……あんまり目立つタイプではないかな。どっちかっていうと地味なんだけど、気さくで誠実そうではあるよ。あとオタク」
「アニメとかですか?」
「ああそっちじゃなくて、メカオタクなの。学内唯一の工学部員で、しょっちゅう色んな人を勧誘してるんだよ。私も誘われたなあロボット作ろうって」
「あーあの人ですか! オリエンテーションの部活紹介で見た事あります、一人っきりでラジコン紹介してました!」
「それラジコンじゃなくてロボットだったんじゃないかなあ」
「え、そうなんですか? ロボットって言うからてっきり人型のでっかいのかと」
「作れるわけないでしょうに」
残念そうに眉を伏せる虹子に、歌誉は苦笑する。
赤い顔のまま沈黙を保つ同級生に、改めて水を向けた。
「ほらなずな、黙ってないで釈明をだね?」
「だから私は――!」
と、否定を重ねようとしたところで予鈴が鳴った。あと五分で午後の授業が始まる。気づけば周囲の生徒達の姿はまばらで、もうとっくに戻っているようだった。
「ああもう、変な事言うから時間になっちゃったじゃないの!」
文句を言いつつも、予鈴に助けられた事に安堵している。急いで弁当の残りをかきこんで席を立った。
「ほら歌誉行くわよ、虹子も遅れないようにね! そっちの教室の方が遠いんだから」
「むー、予鈴に助けられたね」
歌誉と虹子も手元を片付けながら席を立って、なずなを追う。歌誉は食堂を出る手前で、後ろをついてくる虹子を振り返った。
「この続きは放課後カルモでじっくり聞くつもりなんだけど、虹子空いてる?」
「あぅ、ごめんなさい今日は予定が……」
「あら、そうなんだ?」
「中間考査に向けた勉強会やろうって、クラスの友達に誘われまして」
「じゃあ仕方ないね、残念」
申し訳なさそうに肩を落とす虹子へ、歌誉は悪戯っぽい笑みを向けた。
「じゃあ明日、戦果を報告するから楽しみにしててね」
「あ、えへへ、期待してます歌誉先輩。ご武運を」
親指をグッと立てて頷き合う悪友二人を横目に、なずなは小さく嘆息した。気晴らしのはずのパンケーキなのに、どんどん気が滅入ってくる。
食堂を後にして別れ際、自分の教室へ戻ろうとする虹子が憂いの声を投げてきた。
「あの、なずな先輩――ホントに大丈夫なんですよね?」
「貴女達が変な事言うせいで、そんなの吹っ飛んじゃったわよ」
気遣い屋の後輩へ、なずなは腰に手を当て苦笑した。
破顔して手を大きく振りながら、虹子は今度こそ教室へと戻っていった。
「さ、私達も急がなきゃ。授業始まっちゃう」
本鈴の一分前に教室へ戻ったなずなは、午後の授業をそれなりに集中して過ごした。歌誉と虹子が馬鹿話をしてくれたおかげで、胸のつかえは取れつつある。
それよりも、あれから隣席につく桐吾を変に意識してしまい、集中を乱される新たな原因になりつつあった。そわそわとした気配が伝わったのか、午後だけで三回も目が合ってしまった。回数を数えている自分に気づいて乙女か自分はと思ったが、花も恥じらう女子高生なのだから乙女かと思い直し、これも歌誉の術中かと小さく溜息をついた。
放課後に憮然としながら食べるパンケーキは、嫌味なほどに甘かった。
歌誉はいじり過ぎた事を謝罪してきたが、それでも心の片隅では「もしかして」という思いを払拭しきれていないようで、隙を見ては鎌をかけてきた。
焦ったり怒ったり笑ったり、忙しい時間を過ごしていると、あっという間に夕刻を迎えた。沈みゆく夕陽と夜の気配が混じり合う頃、二人は店を出た。
りん、と扉に備え付けられたベルが涼しげな音を立てて二人を見送る。
カルモを起点にすると、二人の帰路は反対方向だ。なずなは別れを告げようとして、ふとかけるべき言葉を失った。
歌誉が、あまりにも真っ直ぐな目でこちらを見ているから。穏やかでいて真剣な眼差し。夕陽を背に影になっているにもかかわらず、彼女の表情ははっきりと見て取れた。
風が歌誉の髪をくすぐる。制服の襟を優しく撫でる。煉瓦敷きの歩道やガードレール、信号に従って往来する車さえもが、彼女を引き立てるための小道具となっていた。
この日常が愛おしい――どうしてそんな事を思うのだろう。
特別でも何でもないはずの、この日に。
「なずな、今日は楽しかったね」
「う、うん……」
歌誉が優しく語りかける。なずなは、ぎこちなくも反射的に頷いていた。
「明日も明後日も、その次の日も。ずっとこんな日が続くからね」
慈しみに満ちた柔和な笑みに、なずなは少し戸惑い、気圧されてしまう。
「何よそんな、当たり前でしょ……」
「そう、当たり前な事。そしてとても大事な事。とても平和で退屈で、命のやり取りなんてテレビの向こう側の世界の話で、部活や進路で頑張ったり笑ったり悩んだり、放課後や休日にはこうして遊んで、そのうち誰かが誰かを好きになったり、嫌いになってまた仲直りしたり。とっても狭くて、でも私達が幸せになるには十分すぎるくらいに広大なこの愛おしい日常の世界。それが、貴女の求めていたものだよね」
「そう、なのかな……」
「そうだよ。戦いもない。支配も抑圧もない。何でもない日常を謳歌して目いっぱい楽しむの。誰も争わない、誰も殺さない殺されない――理想と平和に満ちた清らかで穏やかなこの素晴らしい世界で、貴女は小さくも掛け替えのない幸せを見つけていくの」
「そう、だね……」
強張っていた全身から力が抜けていく。何を怖がっていたというのだろう。ここには怖いものなんて何もないというのに。歌誉の笑顔を見ていると、一切の心配や憂慮が麻痺していく。
私は良い友人を持った。
ありがとうと親友へ告げなければならない。だが胸がいっぱいだからか、その言葉はどうしても口に出来なかった。
もどかしさを感じていると、歌誉の方から口を開いた。
「なずな、大好きだよ。だから、また明日ね」
「うん……また、明日」
お互いに手を振りあって帰路につく。夕陽に溶けるように、歌誉は穏やかな足取りで去っていった。
明日を約束された笑顔での別れ。自然と顔が綻んでくる。
思考そのものが火照ったように上手く考えがまとまらなかったが、充足感だけが満ちていた。今日もいい日だった。
網代なずなは、幸せだ。
歩くうちに背にしていた夕陽が沈み、夜の気配が濃くなってきた。街路灯が一斉に灯る。残暑もなりをひそめて、吹き抜ける風に肌寒さを感じるようになる。
カルモが歌誉の家寄りにあるため、帰るにも自然と学校まで戻ってくる事になる。緑のフェンス越しに視線を投げるが、ほとんどの生徒が下校した後だった。
誰もいないグラウンド、誰もいない教室――否、一つだけ明かりが灯っていた。
「あそこ、理科室……」
心当たりは一人しかいない。
今日は何かと話題に上がる彼の顔を思い浮かべると、サッと頬に朱が差した。
時刻は八時前。完全下校時刻をとっくに過ぎているにもかかわらず、彼はいったいどういう芸当で居残る権利を勝ち取っているのだろう。
「いやでも、もしかしたらもう帰ってて、電気消し忘れかもしれないわよね。そんな事先生にばれたらヤバいんじゃないかしら。うん、そうよね」
わざわざ口に出すのは、一体誰に言い訳しているのか。
なずな自身、そんな考察を本気にしているわけではない。それが証拠に、しっかりと差し入れをコンビニで買ってから校舎へ忍び込んだのだ。
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