悪夢城までいらっしゃい

ぜろ

第1話

 幸せな夢なら気持ちいい?

 幸せな夢なら嬉しい?

 それならいいよ、それならやるよ。

 みんなが幸せになるんでしょう?



「あ…ン! まぁた失敗しちゃったぁ!」

「おやおや、あまり先を急くからですよ? ヴァニラ」

「だって…もー、あたしにはこういう小手先の事は向かないって知ってるでしょ!? なのにこんなの勧めるんだからァっ…ビズ、あたしに意地悪してなァい?」

「してませんよ。良い暇つぶしが欲しいと言ったのはあなたでしょうに…責任転嫁は感心できかねます」

「あーんっ、なぁんでそう苛めるのォ? タロットもなんか言ってよ! あたしを庇え!」

「あ? 俺はおおいに楽しんでるぞ。お前と違って完璧なる髪先のアーティストである俺様は、この程度の事はお茶の子さいさいなのだ」

「た、たかが髪切り妖怪の分際で、このあたしをバカにするつもり!? 絶対神さんは人選をミスったんだわっ、あたしは下僕が欲しいってねだってたって言うのにぃっ…」

「下僕って…少なくとも今は、レース編みが出来ないお前が悪い」

「はんっ、レース編みなんか出来なくたって死ぬわけじゃないもん」

「『退屈で死んじゃうから、いい暇つぶし教えなさいよ!』と言ったのはヴァニラですよ? ですから、レース編みをお教えしたと言うのに…」

「落ちこむなビズ。ヴァニラの我侭に付き合ってる暇があったら、そのこんがらがってる糸をほどけ」

「そうですね」

「うっ…だ、大体どーして男のあんた達のほうが小手先器用なのよ? それに、ビズの趣味がレース編みなんて知らなかったわ! 乙女趣味! お嬢様!」

「ええ、旅の途中で暇を見つけてはこうして……。これを売って、日々の生計を立てていたモノで」

「お前と違って、真面目に生きてたんだよ、ビズは」

「あたしが不真面目だって言いたいワケ? 失礼ね、あたしだって苦労してんだからっ……まぁそれはともかく……さぁ……? なーんか面白いこと、ないもんなのかなァ……?」

「不変な日常はつまらない、不死者の提言か?」

「ざっつらいと!」




……リン……




「ドアベル……来客?」

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