大リーグ

@yuremarchan

第1話

ナッツアンとトオムはおしどり夫婦で二人とも今年95歳になる。今日は大リーグの°ドジャースの前田健太投手のパドレス戦を、朝のゴルフの打ちっぱなしの後の休憩所の衛星放送でソファに腰掛けながら仲良くみている。ナッツアンは着替えが少し遅れたので、すでに試合前のいつもの国歌斉唱ははじまっていた。




ナッツアン「ほう、みんな胸に手をあててマエケンの初登板をお祝いしているのか?大リーグはやっぱりすごい。」


トオム「!??・・・いつも試合前に歌っているだけじゃ。」


ナッツアンは大リーグを最初からみたことがなかったのだった。確かにマエケンも胸に手をあてており、全員で祈りをささげている。




観客席では日本人のファンの1人が、広島時代のマエケンのユニフォームを着て応援していた。


解説者「レッドソックスと間違われそうですね。そういえば前田健太投手のブルーは全然違和感がありませんね。最初は広島のユニフォームが赤だったので心配でしたが。」




ナッツアン・トオム「ギャハハハハ」


確かにドジャースの青一色のファンの中での紅一点は目だっていた。




試合がはじまる。




ナッツアン「パドレスのユニフォームは模様入りで粋じゃのう。」


トオム「アメリカやからアーミー服じゃ。」




解説によると、サンディエゴ海が街のすぐそばにあり、海運が発達しておりその由来から港をイメージさせるユニフォームなのだそう。黒地にアーミー調のキラキラ感も少しあるお洒落なユニフォームだ。キャッチャーミットはなぜか宇宙戦艦ヤマトを連想させる。




副審がアップでうつる。どうやらチューイングガムをかんでいるらしい。日本の阪神巨人戦ではありえない光景だ。




ストライク!




主審がストライクのポーズをとったその時だった。主審はストライクと言うと同時にチューイングガムをプゥと膨らました。結構大きな風船だった。




ナッツアン・トオム「アハハハハハ!何やの今の!」


確かにタイミング良すぎた。




あるバッターの打ったボールは飛距離を伸ばし、ライトライナーに。ライトは瞬時に帽子をとり蒙ダッシュでボールに追いつき、瞬時にセカンドベースに投げたその時だった。




ボールを投げると同時にチューイングガムをプゥと膨らましたのだった!




ナッツアン・トオム「・・・・ワオ・・・」


2人とも妙な興奮を覚えた。完璧な守備をしながら、タイミングよくガム風船を膨らます。まるで予測していたかのようだった。これが大リーグなのか、カメラを意識したポージングなのか。大リーガーはすごいと2人は思った。




マエケンのプレイは素晴らしかった。1回の打者を3人でおさえ、9番バッターであるにもかかわらず、まだ誰もその試合で打っていないホームランを最初になしとげたのだから。




しかし、2人の視線は大リーグの選手のちょっとした小ネタをみつけることに必死だった。箸が転んでも笑うというのはこのことか。日本のプロ野球の真剣さを見守る楽しさとはまたちがう、各選手の個性あふれるプレイに目を輝かせながら大笑いする2人。



ナッツアンはマエケンがホームランを打ったとき、突然席をたって、マツケンサンバを踊りだしたのだった!

トオム「それ、マツケン!」少々呆れながらも席でステップをふむ。


完全に周囲から浮いていたが、他の人ももらい笑するのが不思議だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大リーグ @yuremarchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る