グリモワール・メサイア

佐倉 憂

*001 Lia

 私は夢を見た。


 大きく、そして恐ろしく深い、吸い込まれそうな夢。


 煮え滾るように頭蓋を圧迫する感覚を覚えながら、唯暗い道をを真っ直ぐに歩くしか術の無い夢。


 進む度に吐き気は増していく。進む度に立ち止まるなと頭に響く声が大きくなる、


 五月蝿い。ちゃんと進んでやるから少し黙っていてくれ。


 そう念じていても、この頭に響く声が口を閉じることはなかった。


 ――――止まれ


 進めと命じていた声は、途端に私の足を止める。逆らおうとは思わなかった。それもそうだ。吐き気で俯いていた頭を上げたら、そこに誰かが立っていたのだから。顔はもう覚えていないけれど。


 目覚めた時には、その人物は男か女かも覚えていなかったのだから、当然と言えば当然なのではないだろうか。


 彼、いや、彼女かもしれないが、そいつはこう言ったのだ。


「魔の者が、千年の封印から解き放たれようとしている。黒き刃を握れ。その身体に流れる血が、お前を導くだろう」


 その時はそいつが何を言っているのか理解できなかった。


 ――――そう、目覚めるまでは。

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